保育破壊する小池都政 戦略特区で設置基準を解体 公立つぶし・民営化に突進
週刊『前進』04頁(2783号02面04)(2016/09/26)
保育破壊する小池都政
戦略特区で設置基準を解体
公立つぶし・民営化に突進
小池百合子都知事は9月9日、国家戦略特区諮問会議で、待機児童対策、都市公園内の保育所設置などの規制緩和案を示し承認された。小池知事は特区制度を使った保育基準の解体、保育の民営化・営利化、非正規職化の旗振り役を買って出ている。それは公立保育所つぶしと公務員保育士への攻撃、保育破壊に拍車をかけるものだ。
3歳児以上もミニ保育所に押し込む暴論
特区会議で小池知事は保育所の設備基準を緩和する地方自治体の裁量権の拡大を求めた。現状の国の基準(施設の広さ、保育士などの職員数、給食設備、防災管理、衛生管理など)をクリアした認可保育所(公立と社会福祉法人など)でも事故が多発している。それより施設も狭く保育士数も少ない都独自の「認証保育所」(石原知事時代に新設され、民間企業や個人が事業主)を制度化=全国化し、マンションの一室などのミニ保育所の2歳までの年齢制限も撤廃して、運動量が桁違いに増える3歳児以上も可とする。また代々木公園などの敷地を民間保育所に貸与することで1千人分の定員増を図るとした。国鉄分割・民営化型の公有地の民間への払い下げである。狙われているのは民営化・営利化の全面化だ。
それは、従来以上のすさまじい人員削減と非正規職化、労働強化をもたらす。事故の激発も必至だ。子どもはコインロッカーに預ける「物」ではない。保護者からも危ぶむ声が直ちに上がった。
公立保育所と公務員保育士が攻撃の的に
9月12日、安倍政権は一向に成果の出ない産業競争力会議に代えて「成長戦略や規制改革を加速させるため新設した」とする未来投資会議と、規制改革会議に代わる規制改革推進会議の初会合を開いた。8月の内閣改造で規制改革と戦略特区は山本幸三担当相のもとに一本化され、「特区で認めた規制緩和の全国展開を議論し、両組織の連携を深めて岩盤規制の打破を加速する」とした。9月下旬には働き方改革実現会議も発足する。しかし日本帝国主義の危機は、名前の違う会議を乱立させることで打開できるほど甘くない。アベノミクスの大破綻で「打つ手なし」の危機にあえぐ安倍政権は、戦争・改憲と一体の「働き方改革」=労働法制大改悪と社会保障制度解体、労組破壊を柱に、労働者への階級戦争に賭けるしかなくなっている。小池知事は経済破滅に突進する安倍の旗振り役を務めようとしているのだ。
小池は、国家戦略特区ワーキンググループ委員で極悪の新自由主義学者・鈴木亘学習院大教授を都改革本部の特別顧問にした。その主張は『社会保障亡国論』(講談社現代新書2014年)に明らかだ。
同書で鈴木は〝このままでは財政破綻は防げない。社会保障の純債務は1500兆円に上り、社会保障費を消費税で調達するなら2050年の税率は30%超、年金財源安定のためには支給開始を75・5歳にする必要がある〟と脅しつけた。「財政から社会保障を語れ」と叫んで、負担引き上げ(=収奪強化)と岩盤規制撤廃による給付抑制・効率化、医療・介護の公費削減を求めた。〝公費の大量投入で認可保育所の保育料が安すぎるから旺盛すぎる需要が発生して待機児童問題は起きる〟〝公務員保育士や認可保育所の正規職の賃金は高いので、既得権益を守る組合活動も強固になる。人員数を配置基準より増やして1人当たりの労働時間を短くし、休日出勤も残業もしない。福利厚生は手厚いぬるま湯状態だ〟などと、労組攻撃を繰り返した。
そして公費投入削減と保育料自由化、株式会社の完全参入自由化、保育に無資格者を充当する規制緩和を求め、〝認証保育所のように、認可保育所の8~9割の基準にすれば1~2割の定員増が図れる〟と主張した。これを特区で進め全国化しようとしているのだ。
「働き方改革」のお先棒担ぐ小池を倒そう
小池は特区会議で「女性が活躍できる社会の実現」「働きながら子育てしやすい環境づくり」をまくしたてた。保育を水路に安倍「働き方改革」のお先棒を担ぎ、丸ごと民営化・非正規職化、労組破壊を東京都が率先して進めるという宣言だ。豊洲問題を機に「パンドラの箱」が開いた。怒りを解き放つ労働組合の闘いが一切を決する。国鉄闘争が改憲を阻み続け「働き方改革」を直撃している。現場の闘いが大阪市長・橋下徹を倒した。都労連労働者を先頭に安倍・小池打倒に立とう。16秋闘をストで闘い11月国際共同行動に攻め上ろう。
(大迫達志)