焦点 国威発揚と階級闘争の圧殺 東京オリンピックは返上するべきだ
焦点
国威発揚と階級闘争の圧殺
東京オリンピックは返上するべきだ
リオ五輪の強行とその放映が連日、世界と日本のマスコミを席巻した現実は、オリンピックの反人民性をあらためてさらけだした。8月5〜21日のリオデジャネイロ・オリンピックは、経済と社会の崩壊に直面するブラジル労働者人民の激しい怒りに包囲される中での開催となった。「五輪より医療や教育の充実を」と訴えた今年3月の300万人大デモを引き継ぎ、8万5千人もの軍・警察による戒厳態勢を突き破る闘いが、連日全土で爆発したのだ。
●リオ五輪はデモ・ストの嵐
世界的な原油安の痛撃を受け、ブラジルは「過去100年間で最悪の経済危機」にある。2015年のGDP成長率はマイナス3・8%にまで転落し、11%に達する失業率と賃金急落、インフレが労働者の生活を破壊している。また、この間の徹底的な都市「浄化」=スラムの暴力的解体によって、7万7千人にも上る人びとが住む家を奪われたとされる。そうした中でリオデジャネイロ州が今年6月「非常事態」を宣言すると、賃金支払いの遅延に抗議して州立病院の医師や看護師がストライキを行ったほか、7月には100人以上の警察官・消防士が「地獄へようこそ」という横断幕を掲げて国際空港でデモに立った。五輪を口実に制定された「テロ防止法」による恫喝をはね返し、デモやストライキの嵐が五輪を直撃したのだ。
1%の大企業や政治家の利益のために労働者人民の生活・社会を破壊する、国威発揚と戦争の道具―それが五輪の本質だ。開幕2週間前に行われたブラジルの世論調査では50%の人が「開催に反対」と回答し、期間中の調査でも、リオ五輪がブラジルにもたらしたものは「損失」であるという回答が6割に上った。白人富裕層や米帝の思惑も渦巻く中で大統領ルセフは弾劾・罷免(ひめん)されたが、後任テメルの支持率も8月時点で13%止まりとなっている。ブラジル労働者の怒りと闘いが本格的に爆発していくのはこれからだ。
●安倍による政治利用許すな
新自由主義による経済と社会の崩壊、戦争・改憲と労働法制改悪に対する怒りの噴出で、絶体絶命の危機に追いつめられているのが安倍政権にほかならない。安倍は2020年の東京五輪において、今回のリオと同じことをより暴力的に、より破綻した形で行おうとしている。
リオ五輪の閉会式におけるプレゼンテーションでは、安倍本人がゲームのキャラクターに扮(ふん)して登場するという破廉恥な演出を行った。これは「東京五輪も首相として迎える」という意思のアピールであり、自民党総裁任期延長への狙いを露骨に示している。五輪憲章が禁じる五輪の政治利用そのものだ。発案はリオ五輪代表選手壮行会で「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」と発言した東京五輪組織委員会・森喜朗であり、演出につぎ込まれた予算は12億円超だ。また、招致をめぐる金銭授受疑惑、安倍政権と電通との腐りきった癒着などから、大企業が膨大な五輪利権や2兆円もの巨額の五輪マネーに群がり、食い物にしている許しがたい現実が明るみに出ている。
●東京五輪の返上へ闘おう
安倍の狙いは何より、五輪を利用した階級闘争の圧殺と「挙国一致」体制の構築にある。ブルジョア新聞やテレビは今回、連日大々的にリオ五輪報道を垂れ流すことで労働者の階級意識の解体と「国民の一体感」の演出に全力を傾けた。NHKにいたっては、五輪のメリットの第一に「国威発揚」を掲げた。
そもそも東京五輪自体、2013年にブエノスアイレスで行われたIOC総会において安倍が「(福島原発事故について)状況はコントロールされている」などと大うそをついて呼び込んだものだ。政府が昨年閣議決定した「復興五輪」という基本方針は、原発事故を「終わったこと」とし、フクシマの怒りをとことん圧殺するという階級意思をはっきりと示している。
2020年に向け、五輪を口実とした攻撃が激化している。「テロ対策」を掲げて革命党や闘う労働組合の壊滅を狙う「新共謀罪」の新設はとりわけ重大だ。さらには学校での「オリンピック教育」=愛国主義教育の導入や地下鉄の24時間運行化、羽田空港の増便に伴う航空機の都心超低空飛行が狙われ、被災地への帰還強制攻撃や特区の設置による実質上の労働法制解体攻撃はすでに開始されている。これらすべての攻撃を労働組合の闘いではね返そう。
東京五輪は返上以外にない!
今こそこのことを鮮明に訴え、安倍・小池打倒へ闘おう。