福島第一原発事故 汚染水対策は完全破産 「凍土壁」凍らず「すだれ」状態 五輪招致発言の安倍が元凶だ
福島第一原発事故
汚染水対策は完全破産
「凍土壁」凍らず「すだれ」状態
五輪招致発言の安倍が元凶だ
東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年半あまりが経ったが、いまだに9万人近くの人びとが避難生活を余儀なくされている。しかも、福島第一原発事故の最大の課題である「汚染水対策」が完全に破綻状態に陥った。2013年オリンピック招致の際の安倍による「アンダーコントロール」発言のうそが満天下に暴かれた。
最初から穴の開いた凍土壁
安倍内閣がオリンピック招致のため350億円の国費を投入し、汚染水対策の決定版と言われてきた凍土遮水壁が3月31日に海側の凍結を開始し半年近くが経った。凍土遮水壁とは1号機から4号機の建屋の周りに凍結管を打ち込んで地中を凍らせることで、原子炉建屋への地下水の流入を遮断しようとするものだ。
ところが、図1を見れば分かるように、1〜4号機建屋の海側には原子炉冷却のために大量の海水を行き来させるトレンチと呼ばれる巨大なトンネルなどが多数埋設されている。だからその埋設物の下側には凍結管を通すことができず、凍土壁は壁と言いながら、最初から地下水流入の完全阻止を放棄している穴だらけの代物なのだ。
しかも、半年たっても凍らないところが多数あることが判明し、補助工法と呼ばれるセメントなどを投入する追加工事を多数実施することを余儀なくされた。これは、建設に際して砕いた石を埋め戻した箇所の隙間を通る地下水の量が多く、凍らせることが困難なためだ。寒冷地の川を見ても分かるように、流れている水を凍結させるのは至難の業なのだ。
図2を見てほしい。東電発表の資料をもとに、昨年12月から今年8月中旬までの地下水の流入量やくみ上げ量を棒グラフにしたものだ。一番上が建屋への地下水流入量、2番目がサブドレンの地下水くみ上げ量、一番下が海側の地下水ドレンのくみ上げ量だ。真ん中あたりの4月以降、凍土壁の凍結を開始している。しかし、このグラフを見れば一目瞭然だが、地下水の量はまったくと言っていいほど変わっていない。
まさに凍土壁は、原子力規制委員会の更田豊志委員が批判するように、壁ではなくて「すだれ」状態なのだ。
破産しても東電開き直り
9月1日の東京電力の発表によれば、7月以降追加工事を実施してきたにもかかわらず、いまだに2カ所の未凍結箇所がある(図3)。その上、7月17日に福島県に接近した台風7号の大雨以降、凍土壁の2カ所で摂氏0度以下だった温度が0度以上に上昇した。要するに凍土壁が溶け出したのだ。
原子力規制庁で汚染水問題を扱っている特定原子力施設監視・評価検討会では、凍土壁の破綻が大問題になっている。7月19日の会議では東電自身が「百パーセントの閉合は考えていない」と破産を自白したが、それでは遮水壁とは言えないではないか。
8月19日の会議では、首都大学東京の橘高義典教授が「凍土遮水壁を採用した第一の理由は遮水性が高いということだったのに、それが破綻している」と指摘、東電に対して怒りを爆発させた。
さらに会議では「完全に遮水することが難しいなら、今後数十年のことを考えて在来工法の確実性のある遮水壁を建設する方向に転換すべき」という当然の提言が出たが、東電は開き直って凍土壁に固執している。
安倍を打倒し全原発廃炉へ
もはや凍土壁の破産は確定したにもかかわらず、東電はこれに代わる対策を取ろうとしない。
それは、凍土遮水壁が東京オリンピック招致のために安倍のメンツをかけた方針だったからだ。
13年9月の東京オリンピック招致直前の8月に、汚染水タンクから高濃度汚染水が300㌧も漏れ出してレベル3の大事故となり、オリンピック招致が危機に陥った。これを挽回(ばんかい)するために安倍の指示で急に決定されたのが凍土遮水壁の方針だったのだ。そしてこの凍土壁方針を念頭に、安倍の悪名高い「アンダーコントロール」発言が出てきた。凍土壁方針の最大の元凶は安倍だということだ。凍土壁方針が破産した以上、安倍は責任を取って全原発を廃炉にしろ!
戦争と改憲に突き進む安倍政権打倒の闘いと一体でなければ、汚染水対策も前進しない。日々事故対策に当たる7千人の原発労働者と連帯し、原発事故の真の収束をかちとろう。
(城之崎進)
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