年功賃金を解体する「同一労働同一賃金」

週刊『前進』04頁(2777号03面02)(2016/09/05)


年功賃金を解体する「同一労働同一賃金」


 8月8日の経済財政諮問会議で安倍は「最大のチャレンジは働き方改革」と強調し、経団連会長・榊原定征らは年功賃金から成果主義賃金への移行のために「同一労働同一賃金の実現が不可欠」とした。正社員ゼロ・総非正規職化、賃金破壊の意図を公言したのだ。

「長時間労働の是正」の名目で残業代ゼロに

 8月8日、安倍が議長を務め「アベノミクスのエンジン」と位置付ける経済財政諮問会議で榊原ら有識者議員は二つの提言を報告し確認された。
 一つ目の「今後の経済財政運営について」では、人手不足が進んでパート労働者を中心に賃金上昇圧力が高まる中で労働市場改革に取り組むべきであるとして「最低賃金の引き上げ」と「長時間労働の是正」、「働き方改革」を強調した。
 しかしその内実はきれいごとでは済まされない。提言は「仕事・役割・貢献度を重視した賃金制度への移行促進。特に年功序列型賃金カーブを是正し、より生産性を向上させることが重要。そのためにも同一労働同一賃金の実現が不可欠」であると、資本の意図をむき出しにした。同一労働同一賃金とは、毎年一律に昇給する年功賃金制の解体であり、終身雇用制解体・解雇自由化とともに、正社員ゼロ・総非正規職化であることが完全に明らかになった。
 会議の中でサントリー社長の新浪剛史は、最低賃金の引き上げとともに大企業から中小企業への労働者の転籍(=解雇・賃下げ)支援を主張した。「最低賃金千円」とは全労働者の賃金をそこまで下げると本気で考えているということだ。
 「長時間労働の是正」もまた8時間労働制を解体する〝残業代ゼロ=過労死促進〟法の露払いとして宣伝されている。学習院大教授の伊藤元重は「国家公務員の方も同様の取り組みを」と求めたが、同日の人事院勧告の「国家公務員の一般職27万人全員へのフレックスタイム制導入」は、民間に先駆けて残業という概念すらなくす大攻撃だ。

「健康立国」をうたい皆保険制度まで解体

 二つ目の「新内閣の発足にあたっての重点課題」では、「600兆円経済」「財政健全化の推進」「世界経済の安定・持続的な発展への貢献」などおよそ実現不能な課題とともに、「働き方改革と社会保障制度改革の実行」を強調し、「70歳まで(!)働ける健康立国」をうたい、「公的サービスの産業化」「自治体の窓口業務の民間委託」などを主張した。
 安倍は日本資本主義の延命のために、戦後の金融・財政規律もかなぐり捨てて経済破滅に突進している。何が「600兆円経済」「財政健全化」だ。要は「働き方改革」と社会保障制度破壊、公的事業の民営化による階級戦争にかけるしかないということだ。
 新浪は「健康立国に関係して......爆発的な投資の可能性がある」と夢を膨らませ、「健康であればあるほど(健康保険や介護保険の)保険料の支払いを少なくすれば、それゆえに健康意識が強くなり健康に関する消費が増える」と述べた。これは、逆に持病を持つ人については保険料を上げるということだ。〝誰でも医療を受けられる〟皆保険制度の破壊であり、命に関わる公的医療、公的保険、公的事業を資本のもうけ口とする悪魔の所業だ。

「働き方改革」は憲法改悪と一体の大攻撃

 戦後労働法制の大改悪を通した労働者の雇用・労働・賃金・団結を破壊する大攻撃は、「戦後レジームからの脱却」を掲げた戦争と一体の改憲攻撃そのものだ。「働き方改革」は労働者の命の糧を奪い、社会を崩壊させて未来を奪う。資本家の利益のために行われる戦争と変わらない。
 絶望的な危機に立つのは安倍の側だ。プロレタリア革命こそ労働者の未来を開く。全世界でゼネストが闘われている。追求すべきは同一労働同一賃金などではない。「公正な1日の労働に対して公正な1日の賃金を!という保守的な標語の代わりに、その旗に賃金制度の廃止!という革命的な合いことばを書き記す」(エンゲルス著『公正な1日の労働に対する公正な1日の賃金』)時が来た。
 国鉄決戦を先頭に職場から反撃し、ストライキで闘う韓日の労働組合が呼びかける東京・ソウル11月国際共同行動に総決起しよう。
(大迫達志)

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