南スーダン 戦争法発動する安倍と稲田 「駆けつけ警護」狙う
南スーダン 戦争法発動する安倍と稲田
「駆けつけ警護」狙う
安倍政権による戦争法の本格的発動=自衛隊の参戦が、この秋にも強行されようとしている。
防衛相・稲田朋美は24日、3月に施行された安保関連法に基づく自衛隊の新たな任務に向け、必要な訓練を全面的に開始すると発表した。集団的自衛権の行使も含め、同法が規定するすべての任務が対象となる。
翌25日には、南スーダンでの国連PKO(平和維持活動)に11月から交代部隊として派遣される予定の陸上自衛隊第5普通科連隊(青森駐屯地)に、新任務として「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防衛」を付与するための訓練が始まった。従来は自衛隊とその管理下にある者の「正当防衛」と「緊急避難」の場合のみ武器使用を認めていたが、今後は「任務遂行のための武器使用」が解禁され、離れたところにいる他国のPKO部隊や民間人を「防護する」という名目で、自衛隊の戦闘参加が可能となる。
自衛隊が結成以来初めて本格的な戦闘部隊として戦地に投入され、他国の人びとと交戦し、互いに殺し合うことを強いられるのだ。絶対に許してはならない。
インフラ輸出狙う侵略派兵
しかも南スーダンは現在、激しい内戦状態にある。7月に発生した大統領率いる政府軍と副大統領派軍隊の大規模衝突により、多数の民間人を含む300人以上が死亡、約7万人が隣国ウガンダなどに避難した。現在も激烈な戦闘が頻発し、両派の「和平合意」は事実上崩壊している。
事態の悪化を受け、国連安保理は12日、南スーダンのPKOに新たに4千人の「地域防護部隊」を増派することを決定、政府軍も含むあらゆる武装勢力に対して、状況しだいで「より積極的な武力行使に踏み切る」と決議した。だが南スーダン政府はこれに「紛争当事者の同意というPKO原則に反している」と猛反対しており、増派は新たな戦争の火種となりかねない。国連はすでに事態をコントロールできなくなっているのだ。
自衛隊のPKO参加の条件には、「紛争当事者間での停戦合意の成立」や「当事者がPKOおよび日本の参加に同意していること」などが規定されているが、今やこれらが完全に崩壊していることは明白だ。ただちに自衛隊を撤退させよ!
そもそも本紙2766号2面でも明らかにしたように、この凄惨(せいさん)な戦争の背景にはスーダンの石油資源をめぐる米英帝国主義と中国スターリン主義との争闘戦=アフリカ再分割戦がある。そして日帝・安倍政権は、自衛隊を戦闘可能な部隊として投入することを通じて、この争闘戦に軍事力をもって介入し、アフリカ・中東地域の資源獲得とインフラ輸出戦略への突破口を切り開こうとしているのだ。
実際、南スーダンが米英などの工作によって分離・独立した2011年時点で、日帝は自衛隊のPKO派兵とともに国連開発計画(UNDP)を通じて巨額の資金を同国に提供し、企業関係者約60人が参加する官民合同代表団をただちに派遣した。以後、自衛隊の活動支援を名目に丸紅や日本通運などが次々と現地に乗り込んでいる。
さらに安倍は経団連会長・榊原定征とともに、今月27、28日にケニアで開催される「アフリカ開発会議(TICAD)」に約150社の企業の関係者を引き連れて参加する予定だ。「最後のフロンティア」などと呼ばれるアフリカ地域へのインフラ輸出をめぐり、すでに同地域に猛然と進出している中国に対抗して、巻き返しをはかろうと躍起になっているのだ。
11月国際行動で戦争阻止を
南スーダンへのPKO派兵と一体で、日帝のアフリカ・中東戦略の軍事的要衝をなすのが、「ソマリア沖の海賊対策」を名目に建設されたジブチの自衛隊基地である。
防衛相就任直後から世界中のマスメディアに「極右」「核武装論者」と報じられて危機に陥った稲田は、これまで毎年続けてきた8月15日の靖国参拝を見送り、急きょジブチの自衛隊基地を訪問した(写真)。稲田はそこで行った「訓示」で、「海上交通の安全のため、今後も海賊対処を確実に実施することが必要不可欠」と述べ、海賊事件がゼロ化しているにもかかわらず派兵を継続することを表明した。
同基地は、すでに「海賊対処」の範囲を超えた「中東有事での哨戒機派遣や邦人救出など」(15年1月19日付朝日新聞)といった多目的使用に向けた設備強化が進められており、「中東・アフリカの活動拠点として新たに位置付ける」(同)ことが狙われている。
他方、朝鮮半島では22日から米韓合同軍事演習が始まり、これに先立って米空軍はグアム・アンダーセン基地に戦略爆撃機B52、B1、B2の3機種を初めて同時展開させた。さらに22日には、米軍岩国基地に最新鋭ステルス戦闘機F35を来年1〜8月にかけて計16機配備する計画が発表された。同機の米国外への配備は初となる。
安倍・稲田らの戦争政治と朝鮮戦争の危機に対し、11月の国際共同行動を戦争反対の労働者大集会としてかちとり、国境を越えた労働者の団結の力で戦争を阻止しよう。