8・5学生集会 斎藤郁真委員長の基調提起 大会に結集し資本主義打ち倒す全学連運動を
週刊『前進』04頁(2773号03面04)(2016/08/22)
8・5学生集会 斎藤郁真委員長の基調提起
大会に結集し資本主義打ち倒す全学連運動を
「被爆71周年8・6ヒロシマ大行動」の企画として行われた、8月5日の全国学生交流集会における全学連の斎藤郁真委員長の基調提起を紹介します。(編集局)
戦争に向かう時代の優生思想
今の時代をどう見据え、それにどう立ち向かっていくか考える象徴として、7月26日の相模原「津久井やまゆり園」での障害者19人虐殺事件について全学連の見解と立場をはっきりさせます。事件の犯人がどういう人物だったかということから、社会の状況が見えてきます。この青年は、やまゆり園の元非正規職員で、もともとは教員志望でした。今年2月に衆院議長に手紙を送り、そこで「自分は障害者総勢470人を抹殺できる。理由は世界経済の活性化。第三次世界大戦を未然に防ぐことができるかもしれない。安倍晋三首相にご相談ください」と訴えていました。
この問題の背景にあるのは、新自由主義が戦争に向かう時代の論理としての「優生思想」です。それが正当化されるような社会の状況が明白につくられていることを問題にしたい。津久井やまゆり園は2004年に民営化され、神奈川県が管理者を指定しました。労働条件は神奈川県の最低賃金(時給905円)で夜間割増もなし。午後6時から翌朝8時半までの14時間半の勤務を担う夜勤専門パートを多用し、夜間は160人の入居者を8人の職員で見るという状態でした。
やまゆり園には、重度重複障害者、強度高度障害者、つまり障害者のランク分けで「6」の人たちがいました。本来ならば、万全の体制でしっかり社会が支えなければなりません。しかし、160人に対してたった8人しか職員がいなかった。歴代政府の介護規制緩和や障害者切り捨て政策、社会保障切り捨て政策の結果です。犯人は「この人たちに国家の予算=税金が使われているのはおかしい、世界経済活性化のために殺すべきだ」と言っていたし、「政府は本当は支持してくれるし、自分の計画に暗に協力してくれる」と思っていました。
まったく同じ論理がヒトラーのナチス政権の時にも使われていました。戦前の大日本帝国にも「国民優生法」があり、ハンセン病患者を始め多くの人たちへの「隔離政策」が行われました。
労働者の団結と共同性の復権を
しかし、ここで問題なのは、それは昔の話ではなく、今突然復活したものでもなく、ずっと地続きで100年間続いてきたということです。「優生学」「優生思想」の論理、それに基づく行動・制度。これは「ファシズムの論理」ではありません。人間存在を「価値の優劣」で判断する、まさに資本主義社会そのものが生み出すイデオロギーです。「生産性のない者に生きる価値はない」という思想の物質化、それを正当化する論理が「優生学」です。この資本主義―新自由主義社会に、それを正当化させる現実があります。この状況をひっくり返すためには、社会を根本から変革する、つまり労働者の団結=共同性の復権が問題になっています。人間が他の動物と区別される最大の根拠は、社会性にあります。自然に存在しないものを自然からつくり出し、それを新しい自然の前提(自分たちの生きる環境の前提)として共有し、新しい常識をつくり出す。これは人間だけができることです。存在が意識を規定し、意識性から生まれる物質的精神的実践を通し、人間が生きる環境とその常識を背景としながら、それを変革し、実践する人間自身も変革される。そうやって人間社会は発展してきました。人間は「個人の力」ではなく「類的な力」で発展してきた生物です。人類は団結して継承し、「できる」ことを増やしながら発展してきました。
「優生思想」への多くの人たちの拒否感——これは人間の本質に依拠するものです。障害者を支え、ともに生き、新たな社会をつくる実践の最先端が障害者施設の役割です。にもかかわらず、そこで働く労働者が低賃金・長時間労働にさらされ、人格を破壊され、自らの労働の対象者に憎悪を募らせる社会の構造の問題です。私たちはこの事件の背景を捉え、資本主義社会を終わりにする視点を持たなくてはなりません。
京大処分は改憲めぐる先端攻防
今回の京大4学生処分は、この時代における問題です。この処分は、戦争・改憲に反対し、決断して行動した学生への見せしめ処分であり、すべての人びとに〝おとなしく競争しろ。分断にさらされて生きろ〟と迫る処分です。戦争・改憲をめぐる最先端攻防がここにあります。京大には「自由の学風」がありますが、「大学の自由」とは、処分を恐れず人生をかけて闘った学生の決起で歴史に刻まれたものです。戦後憲法が戦後憲法たりえたのは、戦後革命以来の闘い、とりわけ労働運動が存在してきたからです。
処分撤回署名に協力してくれたある京大教授は「去年の安保法案強行採決時に国会に突入すべきだった」と言っています。処分撤回署名を取り組む過程は、この社会の正体、つまり「『リベラル』や『野党共闘』がなぜ腐ったのか。そもそも腐っていたんだ」ということを全社会に知らしめ、幻想をはぎ取り、多くの労働者・学生が力強い一歩を踏み出すきっかけとなります。
安保法採決の悔しさ、立ち上がった人たちの思いに応えて私たちが昨年の秋にストライキを決断しなかったら、「野党共闘はダメだが、やっぱり野党共闘しかない」という関係が続いていたと思います。4学生に処分が出るまで、京大生の中にも「山極総長は本当はいい人なんじゃないか」という声があったと聞いています。しかし、今回の処分で幻想は完全に吹き飛んだ。ストライキで京大のペテンをはぎ取ったからです。「京大の秩序」そのものを問題にして踏み込んだから、初めてその関係が壊れた。私たちが決意を固め、社会を変えるチャンスを自らの手でつかみ取った。処分撤回署名を徹底的に生かし、第2波スト―全国大学ストをやれる力をつけていこう。中途半端な「リベラル」や「人権」で人びとをだます連中を大学から吹き飛ばして、社会の変革をかちとりましょう。
全学連大会への大結集で、そうした団結をつくろう。「京大処分を撤回させたい」「社会を変えたい」と思うすべての学生に集まってほしい。団結して全学連運動を発展させ、社会を変える闘いに加わってほしいと訴えます。