イラク開戦の口実ねつ造 7・6 英調査委報告で明らかに
週刊『前進』02頁(2766号02面04)(2016/07/21)
イラク開戦の口実ねつ造
7・6 英調査委報告で明らかに
(写真 「うそつきブレア」「ブレアがうそついた。数千数万が死んだ」調査委員会前で【2010年】)
証拠公開させた労働者階級の力
7月6日、イギリスのイラク戦争調査委員会が重大な資料を公開した。新たに示された証拠文書により、イラク戦争の開戦が意図的なうそによって強引に正当化されたことが、政府自身さえ認めざるを得ない形で最終的に確定した。これはイギリス労働者階級の闘いが政府に強制したものだ。そもそも開戦前から巨大な反戦闘争が組織されていた。2002年9月には35万人、03年2月15日には200万人というイギリス史上最大のデモが行われた。イギリス反戦連合の指導部を鉄道労組を始めとした多くの労働組合が担った。新自由主義の先兵となった労働党政権に対し、国家・地方公務員、鉄道、病院、消防、郵便、学校など多くの職場でストが闘われた。RMT(鉄道・海運・運輸労組)やFBU(消防士労組)は労働党から脱退した。
その当時から、イラクが「大量破壊兵器を保有している」というのは、戦争を仕掛けるための意図的なうそであることが数々の証拠によって明らかにされていた。「アフリカからイラクがウランを購入した」というブッシュの主張も、アメリカのCIA職員自身がうそであることを明らかにしており、その職員への報復をめぐって大裁判にもなっている。
こうした圧力の中で、イラク戦争調査委員会が09年にゴードン・ブラウン首相によってつくられた。ブラウンはイラク戦争開戦当時の労働党ブレア内閣の財務相であり、委員会の任命は開戦責任を最大限回避することが狙いだった。だから報告書の公表を7年間も引き延ばし、説明文には「フセイン政権の脅威を過大評価」とか「(開戦の前に)戦争以外の手段を尽くさず」とか、あたかも調査不足や能力不足・過失が問題だったかのように書かれている。日本のマスコミも日本共産党も、すべてこの部分のみを引用している。
だが、02年7月に「貴殿と行動をともにする。何があっても、サダムを取り除くことが正しい」とブレア首相がブッシュ大統領に宛てた「メモ」を今回公開せざるをえなかった。このメモは、ブッシュ政権とブレア政権があらかじめ戦争突入を密約し、その目的に合わせて「証拠」をつくり上げたことを、あらためて確証した。
開戦前から労働者人民が掲げていたスローガン「ブレアのうそ、何万人もの死」を圧殺することはできない。
ブレアと小泉が開戦を支持した
03年当時、全世界で1千万人という空前の反戦デモがあった。91年にはアメリカと一緒にイラク侵略戦争をしたフランスやドイツ、さらにはNAFTA(北アメリカ自由貿易協定)でアメリカ帝国主義に組み込まれているメキシコさえイラク開戦に反対した。こうしたアメリカの孤立の中で、イギリスのブレア政権と日本の小泉政権が賛成し、イラク開戦を促進したのだ。責任は重大だ。英報告書が出された後も安倍政権は「イラクは当時、大量破壊兵器を保有していない事実を証明しようとしなかった」から小泉の戦争支持表明は正しかったと居直っている。
安倍がこんな逆転論法を押し通しているのは、「日本を攻める意思と能力がないことを証明しない」という口実で北朝鮮を攻撃したいからだ。また「無実の証拠を示せない者が悪い」として、黙秘権を認めない警察国家をつくりたいからだ。
安倍の改憲は、単なる憲法の一部の変更ではない。原理的転換だ。だから、このような逆転論法を使っているのだ。
百万人もの死者を出した大犯罪
イラク戦争により500万人が国内・国外難民になることを余儀なくされた。爆弾などによる直接の死者は25万人と言われるが、難民化や栄養状態・衛生状態の悪化などによる死者を含めれば百万人を超えるという。開戦以降、アメリカ帝国主義やサウジアラビアなどの反動王政諸国による育成策により、アルカイダやISなどのイスラム右派勢力が強化され、イラク一円がさらに荒廃させられている。
イギリスにも179人の戦死した兵士の家族がいる。調査委員会報告書の発表後、「イギリス政府こそ最悪のテロリストだ」と弾劾している。
新自由主義、イラク戦争こそ、日本の労働法全面改悪、改憲・戦争を含めて、現代世界のすべての政治の源流だ。
イラク戦争犯罪への怒りをさらに組織し、EU離脱に象徴される新自由主義への怒りの爆発と合わせ、イギリス革命・日本革命・世界革命へ進撃しよう。