南スーダン 自衛隊は撤退せよ 戦争法の発動狙う安倍 駆けつけ警護=戦闘参加許すな
週刊『前進』02頁(2766号02面01)(2016/07/21)
南スーダン 自衛隊は撤退せよ
戦争法の発動狙う安倍
駆けつけ警護=戦闘参加許すな
陸上自衛隊がPKO(国連平和維持活動)派遣部隊を展開する南スーダンで内戦が激化している。だが安倍政権は、南スーダンから自衛隊を撤退させないばかりか、11月に派遣される予定の交代部隊に「駆けつけ警護」などの安保戦争法に基づく新任務を与え、武器使用基準も大幅に緩和しようと狙っている。戦争法の発動を許さず、労働者の団結の力で安倍を倒そう。
首都ジュバで大規模衝突
8日、南スーダンの首都ジュバで、キール大統領の指揮下の政府軍とマシャル第一副大統領派の反政府勢力が衝突し、ロイター通信によるとこの日だけで115人が死亡、さらに10日までに民間人33人を含む272人が死亡した(300人以上が死亡したとの報道もある)。双方が銃撃戦や戦車・ヘリなどを使った大規模な作戦を展開し、自衛隊の宿営地が入った国連施設も迫撃砲の直撃を受けた。PKOに参加していた中国軍部隊も銃撃され、隊員2人が死亡した。国連によると、今回の衝突で3万6千人の避難民が発生し、人口の4分の3が人道支援を必要としているという。南スーダンでは、石油利権などをめぐる政府と反政府勢力との内戦が、特に2013年12月以降に本格化した。昨年8月に和平合意が成立し、今年4月には両派が参加する暫定政府が発足したものの、副大統領派の軍隊が首都に入ったのを機に緊張が高まり、今回の衝突に至った。これを受けて副大統領報道官は「内戦に戻った」と発表した。ひとまず休戦が合意されたものの、いつ本格的な戦闘が再開されるかわからない状況だ。
南スーダンへの自衛隊派兵は、11年11月に当時の民主党・野田政権のもとで決定された。「紛争当事者間の停戦合意が成立していること」というPKO参加要件すら無視する形で、12年1月以来10次にわたる戦地派遣が強行されてきた。
安倍政権は今回の衝突に際しても「PKOの参加条件は崩れていない」(菅官房長官)として自衛隊を撤退させず、むしろこの機会に安保戦争法に基づく新たな任務の追加に踏み切ろうとしている。
すなわち、これまで「正当防衛または緊急避難」に限ってきた自衛隊の武器使用基準を大幅に緩和し、「任務遂行のための武器使用」を可能にした上で、自衛隊が自ら戦闘現場に出向いて他国軍や施設などを防護する「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防衛」を行わせる。内戦が激化する中で実施されれば、確実に戦死者が出る任務だ。
石油めぐる争闘戦が背景
南スーダンは、11年7月にスーダンから南部の10州が「分離独立」してできた「世界で最も若い国」だが、その成立の背景には石油資源をめぐる米英帝国主義と中国スターリン主義との争闘戦=アフリカ分割戦がある。もともとスーダンはアフリカ有数の産油国であり、埋蔵量はサウジアラビアを上回るともいわれる。その全産油量の4分の3を占める油田が南部(現・南スーダン)にある。レアメタルの埋蔵も豊富だといわれる。
この資源をめぐり、アラブ・イスラム系のスーダン政府とアフリカ系南部住民を中心とした南スーダン人民解放軍(SPLA)との内戦が、1983年以後、20年以上も続いた。
米英とイスラエルはこの過程で資金・装備・訓練などを提供してSPLAを支援し、政府の転覆を狙った。他方で中国は90年代以降、スーダン政府と関係を深め、石油掘削権を相次いで獲得。同国の原油の8割を中国が買い取り、油田開発も中国の国営企業が主要に担ってきた。
中国の急激なアフリカ進出に危機感を募らせた米英帝国主義は、国連などを通じて巨額の「援助」を投じてスーダン南部の分離・独立工作を展開、2005年に南部10州を自治州とし、11年に南スーダンとして独立させた。中国は当初反対したが、独立が不可避となるや南スーダンを支援する戦略に切り替えた。
だが、その後も南北間の国境紛争や反政府勢力との激しい内戦が続いており、国連PKOは泥沼化した事態を収拾できないまま、今やスーダンは帝国主義・大国が自前の軍隊を派遣して軍事的・政治的覇権を競い合う争闘戦の場と化している。
資本のための侵略派兵だ
日帝・防衛省は南スーダンへの派遣に先立ち、自衛隊の宿営地や上下水道の設置などを商社・丸紅に発注した。また自衛隊は道路整備などのインフラ事業を現地で手掛けており、後にこれを日本企業が引き継ぐことが予想される。現地政府からは「(自衛隊は)日本からの民間資本の呼び水になる」と評されている。すでにJICA(国際協力機構)の職員・関係者が多数現地入りしていることからも明らかなように、安倍の狙いは、PKO派遣を水路に日帝資本のインフラ輸出を南スーダンおよびアフリカ地域へ進めることにある。そのために内戦中だろうと自衛隊を「戦争のできる軍隊」として派遣することを狙っているのだ。
安倍のインフラ輸出戦略と一体の侵略派兵を許さず、国際連帯とゼネストで戦争をとめよう。