バングラデシュ ダッカ事件の本質は何か 日帝・新自由主義の侵略と極限的搾取への怒りが背景 安倍の戦争政策に最大の責任がある
バングラデシュ ダッカ事件の本質は何か
日帝・新自由主義の侵略と極限的搾取への怒りが背景
安倍の戦争政策に最大の責任がある
7月1日、バングラデシュの首都ダッカのレストランが武装集団に襲撃され、JICA(国際協力機構)関係の日本人7人を含む20人が殺された。同国へのインフラ輸出を成長戦略の重要な柱と位置づける安倍政権は、事件を受けて「国際協力事業安全対策会議」なる新たな諮問機関の設置を決めた。「在外邦人の安全確保」を口実とした安保戦争法の発動=自衛隊派兵を狙っていることは明らかだ。
だが今回の事態の最大の責任は日帝と安倍にある。安倍の侵略と戦争策動を許さず、全世界の労働者の国際連帯とゼネスト―革命で一切の元凶=帝国主義を打倒しよう。
超低賃金の労働力を求め大資本が殺到
近年、米欧日の繊維産業をはじめとする巨大資本は、「安価で豊富な労働力」を求めてバングラデシュに殺到し、他国に見られないほど過酷で非人間的な超低賃金・無権利状態のもとで現地の労働者を徹底的に搾取してきた。こうした新自由主義的帝国主義のあくどい侵略が貧困を蔓延(まんえん)させ、社会そのものを破壊し荒廃させてきたことが、今回の事件の背景にある根本問題だ。
バングラデシュは、日本の4割ほどの土地面積におよそ1億6千万人もの人びとが暮らす世界一の人口密集国である。2000年頃から主に欧米のアパレル資本が工場を移転し、日本企業も賃金などが急上昇する中国から移転する対象国(チャイナプラスワン)として、ユニクロなどを先頭に08年頃から同国へと流れ込んだ。現在、5千近くの衣料品関係の工場で働く労働者約400万人のうち、85%が10代〜20代の女性である。月60〜70㌦程の超低賃金(最低賃金は月37㌦)で、1日に14〜16時間もの長時間労働が常態化している。
13年4月、ダッカ近郊で、五つの縫製工場が入った8階建てのビルが崩壊し、労働者1130人が死亡、2500人以上が負傷する大惨事となった。亀裂の入ったビルに入るのを拒否した労働者を解雇で脅し、こん棒で追い立てて就業させた結果であり、資本による虐殺そのものだ。以後、バングラデシュではストや大規模デモが激発し、政府は警察ばかりか麻薬ギャングも使って、労働者や労組活動家への弾圧・虐殺を激化させている。
なお政府はこの間、イスラム政党「イスラム協会」の幹部などを相次いで逮捕・処刑し、また「過激派取り締まり」と称して先月だけで1万1千人以上を拘束するという常軌を逸した弾圧に手を染めてきた。外国資本と結託した政府による階級戦争そのものだ。
「JICA」は中国にらんだ侵略の最先兵
「日本の貿易・投資を拡大していく重要な国としてすぐ目についた」----14年9月、安倍はゼネコンやインフラ関連業者など35社を同行させてバングラデシュを訪問した際、現地のフォーラムでそう語った。これに先立ち、安倍は同国に対し今後4〜5年で最大6千億㌦の円借款を供与すると宣言した。
安倍の狙いは特にベンガル湾沿海部の工業地帯建設で、まずはそこに日系企業向け経済特区を整備し、主に工業用の発電所、鉄道、橋梁(きょうりょう)などを整備する計画だ。こうした日帝資本の侵略の水先案内人として、インフラ輸出の調査や事業管理を担う外務省所管の機関がJICAである。この間、これと連動して日系企業の進出が急増し(現在約240社が生産拠点を置く)、現地ではすでに労働争議や暴動、ゼネストが爆発している。
また安倍は、昨年10月に日米印の3国がベンガル湾などで大規模な海上軍事演習を行った際、明らかに中国の海洋進出を念頭に置いて、「(バングラデシュは)東南アジアからインドに抜ける要衝にあり、地政学的に重要な役割を果たす国だ」とコメントした。
この間、JICAはバングラデシュ南東部のマタバリに深さ18㍍の深海港を建設するプロジェクトを進めており、完成すれば大型の軍艦なども寄港できる軍事拠点となる。インド洋は中国の海洋進出戦略(「真珠の首飾り」戦略)の最重要点であり、日帝・安倍はこれに対抗する軍事的要衝を構築しようと必死だ。
そもそもJICAの理事長は、14年7・1集団的自衛権行使の閣議決定に際して、政府の諮問機関=安保法制懇の座長を務めた北岡伸一である。安倍の成長戦略はまさに安保戦争法と一体の侵略戦争政策であり、これこそ今回の事件を引き起こした大本の元凶である。
マルクス主義と労働者自己解放に展望が
今回の事件の直後、反革命武装集団「イスラム国(IS)」がただちに「犯行声明」を出しているが、バングラデシュ政府は事件とISとの関連を否定し、「地元過激派による犯行」との見方を示している。犯行グループの詳細な実態やISとの関わりなどについては不明な点が多い。
ただ、爆弾や銃乱射などで無差別に殺戮(さつりく)するISの手口と異なり、今回のテロはあえて外国人を選別して殺害していることから、バングラデシュを我が物顔で蹂躙(じゅうりん)する外国資本への憎悪が事件の背景にあることは明らかだ。また日帝がイラク・シリア侵略戦争の「有志連合」の一角に名を連ね、イスラエルとの密接な軍事協力をも推進してきたことが、武装勢力に限らず多くの人民の怒りをかき立ててきたことも明白だ。
だが、今日の新自由主義が世界中で労働者人民の生活を破壊し、とりわけ新興諸国の膨大な人民に塗炭(とたん)の苦しみを負わせていることに対して、ISや他の武装勢力が行う絶望的で排外主義的なテロ活動は何ら現実を変革する力にならない。それは労働者の国境を越えた団結と闘争を阻害し、分断し、破壊する反革命的な敵対物でしかない。
今、求められているのはマルクス主義であり、労働者自己解放の立場を貫く新しい労働者の党であり、新自由主義と闘う階級的労働運動である。そしてそのもとに世界の労働者と全人民が民族・国籍・国境を越えて団結し、国際連帯とゼネスト―プロレタリア革命で帝国主義とスターリン主義を打倒することこそ、世界から戦争と貧困を根絶する唯一の道である。
すでに韓国・民主労総やフランスの労働者の闘いを先頭に、全世界でゼネストが拡大している。この闘いに応え、参院選決戦の地平を武器に拠点建設を推し進めよう。今こそ国際連帯の大発展をかちとり、日本のゼネスト情勢を切り開こう。
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共産党は侵略の先兵「テロから邦人守れ」と叫ぶ
7月1日のバングラデシュの首都ダッカでの人質殺害事件を受け、日本共産党や民進党は、菅義偉官房長官が参議院選挙の遊説を優先して首相官邸を離れたことを批判しつつ、〝海外で経済活動をしている日本人を守れ〟と叫んでいる。
だがこの主張は労働者階級の立場とはまったく相容れない。日帝資本が行っている侵略を擁護し、その帝国主義的権益を守るための安倍政権の侵略戦争政策を支持する立場にほかならない。
とりわけ、日本共産党は7月4日付『赤旗』で、「市民巻き込む蛮行」「経済活動を行っていた日本人が、突然、野蛮な事件で犠牲になるところに、テロの恐怖があります」などと主張している。だが、今回の事件の大本には日帝資本のバングラデシュへのすさまじい帝国主義的・新自由主義的侵略がある。日本共産党はこのことを否定し、安倍政権やマスコミと一体となって「テロを許すな」と唱和している。そして、「危機管理体制の検証が必要」「日本政府と国際社会は......テロ根絶に全力をあげるべきです」として、日帝の侵略戦争と改憲攻撃を尻押ししているのだ。
まさに今、日帝・安倍政権が「海外で活動する日本人の安全を守る」として、日帝資本の権益を擁護するための集団的自衛権行使、戦争法制定、改憲攻撃に突進している中で、共産党の言動は労働者階級の闘いを解体し、戦争翼賛へ導く決定的な裏切りだ。
帝国主義資本の権益のために労働者人民が他国の労働者人民と殺し殺される関係に立たされるのが戦争だ。今回の事件は、その過程が現実に始まっていることを示した。まさにその瞬間に、日本共産党などすべての体制内野党はその先兵として登場している。これは、日本共産党が参議院選挙に際して、安保も自衛隊も天皇制も容認し、防衛予算を「人を殺すための予算」と発言した政策委員長を直ちに解任したこととも一体だ。
ゼネストと国際連帯で帝国主義を打倒しよう。日帝・新自由主義の侵略戦争を絶対に阻もう。