フランス ゼネストが再び大高揚 労働法制改悪と全面対決 運輸、石油、電力で次々とスト突入

週刊『前進』02頁(2752号02面01)(2016/06/02)


フランス ゼネストが再び大高揚
 労働法制改悪と全面対決
 運輸、石油、電力で次々とスト突入

(写真 エルコムリ法案【労働法改悪案】反対のプラカード【5月19日】)

(写真 パリ共和国広場での〝徹夜行動〟【4月6日】)

(写真 仏北部の原発前のバリケード【5月26日】)


 3月初めの高校生・大学生のバリケードストライキ、街頭デモンストレーションが火ぶたを切ったフランスの労働法制改悪反対闘争は、社会党オランド--バルス政権の非常事態宣言を打ち破るストライキと8回におよぶ全国統一行動として激化し、ゼネラルストライキ情勢に入っている。韓国では何度もゼネストが闘われ、沖縄でもゼネストの機運が高まっている。世界大恐慌の深化と世界戦争の危機を全世界労働者階級のゼネストとプロレタリア革命に転化しよう。

投票ぬきで改悪法案を下院通過させた大暴挙

 労組・学生7団体の共催による統一行動は、3月31日の120万人決起を頂点にパリ--全国で毎回数十万人の規模となり、機動隊との激突で毎回数十人の逮捕者を出しつつ不屈に闘われている。また3月31日以降、パリをはじめ諸都市の中央広場で連日、徹夜集会が開かれている。
 闘いは5月中旬以降エスカレートした。5月19日の鉄道、航空、空港、港湾、長距離トラック輸送の労働者のスト、25日の製油所のストと石油貯蔵所前の道路封鎖、26日の原発所在地19カ所中16カ所での電力労働者のストで、フランス全土の主要幹線道路がストップし、ガソリンスタンド(給油所)の20〜30%が業務を停止、スーパーマーケットが停電した。代表的日刊紙ルモンドが25日に「明日の新聞はストのため印刷できません」という社告を出した。フランス経済の危機が叫ばれている。
 追いつめられたオランド政権は25日、CRS(共和国保安隊=内閣直属の機動隊)を出動させ、製油所・貯蔵所の封鎖解除に乗り出し、労働者と激突、火炎瓶が飛び交った。
 この労働組合の爆発的なストライキを引き出したのは、オランド政権の強権的暴挙だ。バルス首相は10日、労働法改悪案(エルコムリ法案)を国民議会(下院)での投票ぬきで強行通過させ、上院に送った。共和国憲法第49条3項の規定に基づくものだ。12日、野党提出の内閣不信任決議案が否決されたため、上院での審議、再度の下院の審議と続く。49条3項は2008年にサルコジ大統領の右派政権のもとで政府権限を拡大するために憲法に加えられた条項だ。
 昨年11月に宣言された非常事態が延長を重ねる中で、警察権力は令状なしの家宅捜索や大量逮捕など頻繁な権力濫用(らんよう)、デモ隊への催涙弾や大音響を発する手榴弾(しゅりゅうだん)の使用、「危険人物」と指定した人間のデモ参加禁止命令(かろうじて裁判所によって却下された)など、治安弾圧をエスカレートさせてきた。
 それにもかかわらず労働者人民の闘いはやむことを知らない。オランド--バルス政権はこうした情勢のもとで法案が議会で可決される見通しを失い、憲法49条3項の発動に至った。これはフランス帝国主義の体制的危機ゆえの凶暴化であり、階級闘争が決戦局面に入ったことを示している。

労働条件の切り下げが就業規則改悪で可能に

 このゼネスト情勢に先行し、また呼応して〝徹夜行動〟(Nuit Debout=ニュイドゥブー)がパリの共和国広場を中心にフランス各地で行われている。非常事態下で都市の広場を占拠し、政治的な討論が大衆的に交わされ、主張をアピールするパフォーマンスも展開されている。徹夜行動の趣旨は以下のようである。
 「〝徹夜行動〟の目的は闘争の合流の場をつくることである。国際的な地平で共通の課題、非正規職・金融資本の独裁・環境破壊・戦争と軍国主義・生活条件の悪化などに反対することだ。われわれは競争と個人主義に連帯と共同行動を対置する。政治を取り戻そう。一人で怒っている時代ではない。ともに行動する時だ。われわれ99%は1%に反撃する力をもっている。ともに反乱への決起を!」
 労働法制改悪策動が広範な層の労働者人民を奮い立たせていることを示すアピールだ。
 労働法制改悪の核心は、労働組合との労働協約よりも就業規則を法律上優位に置くという点にある。つまり経営者が組合を無視して就業規則の改定・規定によって解雇、労働時間の延長、残業手当の削減、労働強化など、基本的な労働条件を労働者諸個人に強制することができるように労働法制を改悪するのである。労働法制の根本的転覆による労働組合の解体、労働者の階級的団結の破壊が狙いだ。安倍=日帝ブルジョアジーがたくらむ正社員ゼロ=総非正規化、労働者の権利の剥奪(はくだつ)と分断の攻撃と同じ質の新自由主義的階級戦争である。

高失業への青年の怒りが激突情勢を切り開く

 フランスには、2006年、いったん成立した「初期雇用契約」(CPE)という反労働者的な労働法制を、学生を先頭とする巨大な反対闘争の展開で撤回させた歴史がある。CPEとは、青年労働者の雇用にあたり、2年間の試用期間中は雇用者が一方的な理由で労働者を解雇できるというものだった。
 今回の労働法制改悪に対して、まず闘争の先頭に立ったのは高校生・大学生だった。25%を超える青年の失業率に加えて、就職しても会社から一方的に提示される就業規則に異議を申し立てたら即刻解雇されかねないことへの怒りが爆発したのだ。
 10年前の反CPE闘争は、その後の年金改悪反対ゼネスト・300万人デモなどを挟んで受け継がれてきた。高校生・大学生が立ち上がった中で、労働組合も労働協約の空無化、労働組合の形骸(けいがい)化の危機を突きつけられ、ストライキなど実力行動で政府に対抗せざるをえなくなっている。
 労働運動・学生運動の内部で新たな流動と分岐が進行している。従来フランス共産党の影響力が強かったCGT(労働総同盟)は、現場労働者の怒りが噴出しているため、労働法改悪案賛成のCFDT(フランス民主労働組合連盟、社会党とオランド政権を支持)との対決姿勢をとることを迫られている。
 世界大恐慌の深まりと世界戦争危機の切迫、EU分裂・解体の危機の中で労働法制改悪をめぐる階級決戦がフランス―欧州諸国、日本、韓国、全世界で闘われている。この闘いを勝利に導く新しい労働者階級の政党が求められている。その鍵は6〜7月選挙決戦で鈴木たつお弁護士の勝利をかちとることだ。

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