川内原発を今すぐ止めろ 熊本地震の波及は不可避だ
川内原発を今すぐ止めろ
熊本地震の波及は不可避だ
4月14日と16日に震度7の巨大地震を引き起こした熊本地震から1カ月がたった。だが震度1以上の余震が1000回を超えるなど収束のきざしが見えない。余震への恐怖から屋外の車やテントで避難生活を送る人びとが数万人にものぼる。すべての人びとが不安を抱いているにもかかわらず、安倍政権は川内原発を止めようとしない。なんとしても川内原発を今すぐ止めよう。
民衆が止めてと言っても止めない田中
一昨年11月、カルデラ噴火の危険性があるから川内原発は再稼働すべきではないという意見に対して、〝カルデラ噴火したら終わり〟と許せない発言をした原子力規制委員会の田中俊一委員長が4月18日の記者会見でまたも本性を露呈した。
この日、規制委は熊本地震を受けて臨時会合を開き、九州、中国、四国地方の4原発について協議した。そして唯一稼働している川内原発について停止する必要はないとの判断を行った。
会議後の記者会見で記者から「なぜ止めることで予防しないのか?」と当然の質問をされた田中は「(権限はあるが)根拠がなく、そうすべきだという皆さんのお声があるからそうしますということは、するつもりはありません」と発言した。
要するに〝(田中の理解する)科学的根拠がなければ、労働者・民衆が止めてほしいと言っても止めるつもりはない〟と傲慢(ごうまん)にも言い放ったということだ。いったい何様のつもりなのか。この発言は田中こそ原子力村の利害の体現者であり、日帝の核武装の隠れみのである原発政策の最悪の推進者だということを自己暴露したものだ。
だが、日本地震学会の加藤照之会長は18日の会見で「当初の考え方とは違った推移をしている。100㌔を超える地震活動帯ができた」と熊本地震の特殊性を強調している。今回活動した布田川・日奈久(ひなぐ)断層帯(地図参照)は、再稼働が狙われている伊方原発の直近を通る中央構造線の一部であるという学説もある。しかもこの断層帯は川内原発直近の甑(こしき)断層、甑海峡中央断層、五反田川断層を経由して沖縄トラフにまで続いているという学説すら存在する。
実際、熊本地震が起きる1〜2カ月ほど前には甑断層のある甑島列島付近の海域で地震が多発し、これが今回の地震の前兆ではなかったのかという見方も存在する。
いずれにせよ、今回の地震については分からないことが多い。だから安全のためには川内原発をいったん停止させて様子を見るというのが、自然に謙虚に向き合うという意味で本来の科学的判断なのだ。(もちろん真に科学的な判断をするなら、原発政策から即刻全面撤退すべきなのだが)
スリーマイル事故と同型の加圧水型原発
安倍政権や規制委員会の田中らは、川内原発が福島第一原発事故を起こした沸騰水型(BWR)ではなくて加圧水型(PWR)であるということをもって、安全だと言い張ろうとしている。
事実、規制委が今まで再稼働を許可した川内、高浜、伊方原発はすべて加圧水型だ。
だが、世界で最初に炉心溶融事故を起こしたスリーマイル島原子力発電所で使われていた原子炉こそ加圧水型だ。
福島第一原発事故は、沸騰水型原子炉の弱点を赤裸々に暴き出した。だからいかに規制委員会といっても沸騰水型に対して簡単には再稼働許可を出せない状態だ。
しかしスリーマイル島事故を起こした加圧水型は、沸騰水型よりも過酷事故を起こしやすいと言われてきた。加圧水型の危険性を列挙する。
第一に、加圧水型は原子炉容器が中性子にさらされることでもろくなる脆化(ぜいか)と呼ばれる現象が沸騰水型よりも著しい。脆化が進むと急な冷却でガラスのコップがパリンと割れるように原子炉容器が破裂する。そうなると原子炉容器の全放射性物質が格納容器をも突き破って大気中にまき散らされる。この弱点は玄海原発1号機で大問題となり、それもあって玄海1号機は昨年3月に廃炉が決まった。
第二に、原子炉格納容器の中に蒸気発生器などの機器が多数収納されているため、格納容器が沸騰水型と比較して10倍も巨大であり、そのため地震に対して弱い。また沸騰水型は格納容器に水素爆発を防止するため窒素が封入されているが、加圧水型では酸素を含んだ通常の大気だ。事故時に爆発し、格納容器が破壊される危険性がある。
第三に、通常運転時の冷却システムが複雑なため、蒸気発生器内部の多数の細い管が次々と破断して原子炉冷却が不可能になり、メルトダウンになる危険性がある。
さらに燃料棒の装着方法が複雑で取り出しに4日もかかるとか、ベント設備がないとか、問題点は多々ある。事故は必ず「想定外」の事態として起こる。加圧水型自体の危険性を無視して再稼働させるなど論外だ。
動労水戸が開始した被曝労働拒否の闘いを引き継ぎ、原発労働者の決起をかちとり、全原発廃炉へ闘おう。
(城之崎進)
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【注】
▼沸騰水型と加圧水型 日本の原発には、東電などの沸騰水型と、関電などの加圧水型がある。沸騰水型は、原子炉の冷却水を沸騰させて生じた蒸気で直接発電機を回す。加圧水型は、圧力をかけ沸騰を抑えた熱水を蒸気発生器に通し、別の水を蒸気にして間接的に発電機を回す。