焦点 プーチン、習近平も税逃れ 支配層の腐敗暴くパナマ文書
焦点
プーチン、習近平も税逃れ
支配層の腐敗暴くパナマ文書
「パナマ文書」が全世界に激震を走らせている。中米パナマ共和国に本拠を置く法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出したこの文書で、タックスヘイブン(租税回避地=所得・収入に課税されない国や地域)を利用して、世界中の企業・個人が大規模な蓄財と税金逃れの脱法行為を行っていた実態が、一挙に明るみに出たのだ。
●英やアイスランドの首相も
昨年、南ドイツ新聞の記者に匿名の情報源から、モサック・フォンセカの1150万件もの内部文書が提供された。この法律事務所が設立に関与した21万社のペーパーカンパニー(名前のみで、工場も事務所もない)に関連する文書、Eメール、契約書などの膨大な量の資料だ。同新聞社は「国際調査報道ジャーナリスト連合」に呼びかけ、80カ国400人のジャーナリストの協力を得て1年かけて分析・調査し、その内容が4月3日に一斉に報道された。
国家指導者クラスの政治家・官僚とその家族・関係者、さらに有名俳優やスポーツ選手らの名前が、会社役員や株主、金融取引当事者として並んでいることで、世界に衝撃を与えた。
英国のキャメロン首相は、亡父が設立した投資ファンドで利益を上げていた。「財政健全化」を掲げて厳しい緊縮財政で人民の生活を圧迫してきた張本人の財テク活動が暴かれ、ロンドンではキャメロン退陣を要求するデモが起きた。
アイスランドのグンロイグソン首相は、妻と共同名義のダミー会社を通じて自国の銀行への巨額の投資を行っていた事実が暴かれ、大規模な糾弾デモが起こり、辞任に追い込まれた。
さらに、ロシア・プーチン大統領の友人の音楽家、中国・習近平国家主席の義兄などの名が挙がっている。日本の約400の個人・企業の名も含まれていた。いずれもタックスヘイブンを使ったあざとい不正蓄財である。この5月に、具体的個人名・企業名すべてが公表されることが予告されている。
●タックスヘイブンで「脱税」
タックスヘイブンは、19世紀後半から20世紀前半にかけて、戦争でダメージを負った欧州各国の富裕層を手助けするビジネスとして拡大してきた。今日の多国籍企業や超富裕層の間では、「合法的節税手段」として大手を振ってまかり通っている。2013年にスターバックス、アマゾン、アップルによる子会社設立を使った「税逃れ」の手口が発覚し、不正への怒りが爆発し、タックスヘイブンへの関心が高まっていた。
今回の発端となったパナマを始め、英領バージン諸島、ケイマン諸島、バハマなどのカリブ海は、タックスヘイブン密集地帯として知られている。ここでは、所得・利益、財産、売り上げ、遺産相続などが非課税かほぼゼロに近く、会社を登記することに何ら規制がなく、しかも法律によって厳格に秘密性が守られている。
企業はここに名ばかりの「会社」を設立した上で、例えば実際の事業で得た利益を、この「会社」への「支払い」(原材料の購買、ブランドなど知的財産権への使用料など)の形で移転する。佐渡島の3分の1の広さのケイマン諸島に、法人6万社が登記されている。
ケイマン諸島への日本からの証券などによる投資残高は、14年末で約65兆円(米に次ぎ世界第2位)。つまりケイマン諸島だけに限っても、国家予算並みの金額に上る日本企業の利益が課税を逃れてつぎ込まれた。法人税率を単純にかければ、約15兆円という年間の消費税収入に匹敵する額が「脱税」されていたことになる。
●戦々恐々の日帝と安倍政権
菅義偉官房長官は4月6日の記者会見で「文書の詳細は承知していない。日本企業への影響も含め、軽はずみなコメントは控えたい」と述べ、パナマ文書を調査する気がまったくないとの姿勢を表した。日帝と安倍政権自身が、パナマ文書に戦々恐々としている当事者なのだ。
「企業が世界一活動しやすい国」を掲げたアベノミクスは、企業の営利活動と不正蓄財を奨励してきたのである。
全世界のタックスヘイブンにどれほど巨額の資産が隠されているのか、今回はその氷山の一角でしかないが、新自由主義によって行き着いた腐敗の極の資本主義の現実がパナマ文書でさらけだされた。国家権力と一体となった巨大企業とひとにぎりの超富裕層が、世界の富を独占支配し、途上国を収奪し、非正規職化・貧困化で労働者に塗炭の苦しみを味わわせている。
世界革命の課題は、労働者階級の国際連帯の力でこの現実を根底から覆すことである。