広島 中3自殺 闘いの放棄が命を奪う 労組の力で教育労働の奪還を

週刊『前進』04頁(2739号02面03)(2016/04/11)


広島 中3自殺
 闘いの放棄が命を奪う
 労組の力で教育労働の奪還を

(写真 日教組臨時大会で情宣を行う全国労組交流センター教育労働者部会【3月18日 東京・教育会館】)

新自由主義が引き起こした

 広島県府中町の中学3年生が昨年12月に自殺した問題で、1年生の時に万引きした記録があるから志望校の推薦を出せないと生徒に告げていたことが3月に明らかになった。学校側の調査によると万引きは別の生徒で、記録が間違っていたことが判明。「どうせ言っても先生は聞いてくれない」とその生徒は語っていたという。パソコンによる情報管理や進路指導が廊下の立ち話で行われていたことなど、いくつも「問題点」が指摘されている。
 当該中学校では、高校の「推薦・専願基準」についての「内規」を昨年11月に変更し、1年生時の万引きなどの「触法行為」があれば推薦を認めないと決めていた。教育労働者なら誰でも「1年生で1回万引きしたら推薦できない」などという内規に疑問や違和感を持つ。そんな内規など「教育の否定だ」とわかっている。それなのに「おかしい」という議論を職場で起こせなかったのはどうしてなのか。
 当該中学校は、事件当時の学校長が2013年4月に着任すると同時に、国立教育政策研究所「教育課程研究指定校事業(外国語)」、さらに広島県「学力向上総合対策事業」を適用された。現場は際限のない残業とストレスを強制されていたのだろう。「教育委員会が決めたことに反対するなんて無理」というあきらめが覆っていたことは容易に想像できる。そうでなければ、およそ「教え育む」こととは相いれない内規などは生まれなかっただろうし、たとえ上から押しつけられても猛然と抵抗の声が上がったはずだ。
 安倍は「グローバル人材の育成」(一握りのエリート)と多数の非正規労働者を輩出するための「教育改革」を労働力政策と一体で進めてきた。安倍は子どもたちを「資源」「商品」におとしめ、民営化・非正規化と戦争動員を狙っている。当該中学校はその先頭を走っていた。それが今回の事件の根本原因だ。

「是正指導」への屈服が原因

 安倍は小中一貫校、中高一貫校などの新たな学年段階の区切りの導入、高校の「多様化」などを進めてきた。それが学校間格差を拡大し、序列化を進め、競争に拍車をかけた。子どもたちも、全国学力テストの復活で小学校段階から能力主義・成績主義で追い立てられる一方、自己責任と規範意識をすり込まれるようになっていった。
 学校はマネジメント(経営管理)組織に変質させられ、校長権限の強化=労働組合の職場支配権の解体攻撃が激化した。評価制度の導入などで教育労働者は協働性を破壊され、上意下達で管理されるようになった。その結果、極限的な「多忙化」=過重労働が進み、子どもたちと向き合う時間が奪われた。それが、あってはならない事件を引き起こしてしまったもう一方の原因だ。
 1998年に始まった文部省(現文部科学省)による「是正指導」に屈服してきた広教組指導部・全教指導部が、労働組合としての闘いを抑圧してきた結果である。また日教組本部が95年に文部省とのパートナー路線に転換し、職場闘争を圧殺してきた結果だ。

分断うち破り職場に団結を

 教育委員会や文科省が乗り出して「校長を中心として学校が組織的に動いていたのか」「学校がチームとして教職員一人ひとりが自主的・自立的に動いていたのか」などと批判しているが、ふざけるなと言いたい。当局が校長の権限を強めて職場の協働性を破壊してきたからではないか。
 子どもたちを死に追いやる教育を変革できるのは、教育労働を担っている現場の教育労働者だ。過重労働と職場の協働性の破壊を生み出している諸攻撃に絶対反対で立ち向かい、「事件や事故」を個々の教員の指導力の問題や個人の責任にすりかえる分断攻撃を打ち破って、職場に団結をよみがえらせよう。そうしてこそ、子どもたち・保護者との信頼関係=団結も生み出される。
 新自由主義「教育改革」は破綻している。動労総連合の反合理化・運転保安闘争に学び、教育労働者の労働条件は子どもの教育環境と一体であることを肝に銘じ、「命よりも金もうけ」の新自由主義「教育改革」を打ち砕こう。今こそ、教育労働を労働者の団結した力のもとに取り戻すために労働組合をよみがえらせよう。

------------------------------------------------------------
是正指導 「日の丸・君が代」強制に不起立で闘う広島の教職員組合をつぶすことを目的に文部省が1998年5月、「不適正な実態の是正を図る」と称して広島県教育委員会に指導を行い、「是正」状況の報告を求めた。県教委は国旗掲揚・国歌斉唱の完全実施、平和教育の解体、職員会議の校長権限の強化、主任制度の徹底と主幹教諭・指導教諭導入などを強行した。

このエントリーをはてなブックマークに追加