焦点 保育基準下げ安全を破壊 民営化推進の「待機児童対策」

週刊『前進』02頁(2738号02面04)(2016/04/07)


焦点
 保育基準下げ安全を破壊
 民営化推進の「待機児童対策」


 女性労働者の「保育園落ちた日本死ね!」のブログを機に根底的な怒りが噴き出し追い詰められた安倍政権は、「待機児童解消の緊急対策」を打ち出した。広範な怒りを逆手に取って保育基準の解体と総非正規職化、民営化・営利事業化、労組破壊を一気に進めようとしている。その全矛盾は現場に押しつけられ、一層の労働強化と安全崩壊をもたらす。絶対反対のストライキで闘う労働組合を職場につくり出そう。
●怒りを逆手に規制撤廃狙う
 3月28日に発表された緊急対策は、野党が言う「新たな予算措置ゼロ、保育士の給与改善もゼロ」どころではない、新自由主義攻撃のオンパレードだ。
 主な柱は、①規制の弾力化―国の基準を上回る保育士配置や部屋面積の基準緩和、②定員超過の柔軟な実施、③小規模保育所の定員枠拡大と対象年齢の緩和、④一時預かりの活用、⑤幼稚園の長時間預かりの強化、⑥市区町村を越えた広域的保育所の促進、⑦保育補助者、短時間正社員の活用、⑧企業主導型保育事業の積極的展開などだ。
 厚生労働省は同日、昨年10月時点の待機児童は4万5315人、加えて希望した認可施設に入れなかった児童などが同年4月時点で4万9千人いたと公表し、それ以外の多数の潜在待機児童も認めた。都心部では2人に1人が保育所に入れない。そうした親たちの怒りの矛先をそらし、「緊急だから」と強弁することは本当に許しがたい。
 厚労省は待機児童が多い市区町村をやり玉に挙げて、1人でも多く子どもを受け入れるよう規制を撤廃しろと求めている。国の新自由主義政策の責任を自治体に押し付けて圧力をかけ、これまで職場労働者や地域の力でなんとか確保してきた基準すら撤廃させようとしている。
 国の基準で1歳児6人につき保育士1人という配置を「5人に1人」としている自治体に対し、これを国並みに引き下げるよう求め、定員超過への対応も柔軟にさせる。小規模保育所は6~19人の定員を22人まで広げる。対象は0~2歳児に限っていたが、3歳児以降の利用も促す。あくまで一時的に子どもを預ける「一時保育」(一時預かり)を定期的に利用できるようにする。保育基準など完全に無視され、しかも現状でも利用者が殺到し、パンク状態だ。
●企業主導で介護施設と統合
 厚労省は4月から保育所と介護施設の統合を進める。社会福祉法人やNPO、株式会社が運営し、「人材や設備を効率よく使えるように」管理者、医師、調理師などの兼務で待機児童と待機高齢者の解消を目指す。それが何をもたらすのか。
 3月31日、5万人の入所枠の従業員向け保育施設を増やす改悪子ども・子育て支援法が自民、公明、民進などの賛成で成立し、「企業主導型保育所」が創設された。定員20人以上の認可施設には保育職員全員に保育士資格が必要だが、企業主導型では職員の半数以上に資格があれば補助対象となる。夜間や休日、パート労働者など働き方に応じた多様な保育を認める。
 ともに全面民営化・営利事業化と総非正規職化の大攻撃だ。
 これらが労働破壊と保育事故多発に直結することは必至だ。
 すでに園庭のない保育所が増え続けている。マンションの1室で多人数の子どもたちを預かり無資格の職員が半数未満なら認められる少人数保育所の拡大で、どれほどの労働強化と事故が起こることになるのか。
 昨年度、食物アレルギーの乳幼児の誤食・誤配事故が全国の保育所の3割で起きていた。死亡事故にならずとも、11%の保育所で子どもが発症している。現場からは人手不足ゆえの悲鳴が上がっている。
●ストで闘う労組拠点つくろう
 これまでも「待機児童解消」を口実に規制が次々とはぎ取られてきた。目の前の子どもだけでも大変なのに、一時保育、病児保育、深夜保育、休日保育、さらに在宅の育児支援などが加わった。底なしに増える仕事と非正規化による分断で、多くの労働者が退職を余儀なくされてきた。体制内労組幹部は民営化攻撃にすくみ上り、「公立を守るためニーズに応える」などと言って闘いを放棄し、労働強化と団結破壊に協力してきた。
 保育への攻撃は全労働者に対する攻撃だ。現場の闘いが決定的だ。子どもたちのことを思い懸命に仕事を続けてきた誇り高い職場の全労働者の怒りを結集して闘おう。ストで闘う労組拠点を建設しよう。戦争と労働法制大改悪の安倍打倒へ、国鉄決戦と7月選挙決戦に立とう。

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