高崎線籠原駅 漏電・炎上・635本運休の大事故 外注化・非正規職化が根本原因
高崎線籠原駅
漏電・炎上・635本運休の大事故
外注化・非正規職化が根本原因
3月15日未明、高崎線・籠原(かごはら)駅構内でトロリー線に電力を供給する「き電線」をつるす碍子(がいし)が破損し、漏電し続け、同時に何カ所から発火する大事故が起きた。高崎線に直通する上野東京ラインや新宿湘南ラインも大混乱し、17日午後1時の運転再開までに58時間を要し、635本が運休、51万人に影響が出た。
動労連帯高崎は直後に事故弾劾のビラ(「動労連帯高崎」142号)を出し、JRの外注化・非正規化が原因だと暴いて決起を呼びかけている。反合理化・運転保安闘争を巻き起こし、動労総連合を全国に建設しよう。
ラッシュ時なら大惨事になった
この事故は「き電線」を絶縁しつっていた碍子のボルトが経年劣化で破断し、き電線が垂れ下がって鉄骨の梁(はり)に接触しショートしたものだ。瞬時に送電を遮断する遮断器(緊急遮断装置)が働かず、1500㌾の直流が流れ続けた。
電流は梁からホームに立っているコンクリート電柱(中に鉄筋がある)を伝わり、ホームに流れ、アースなどから逆流し、各種電気ケーブル、信号ケーブル、駅舎、制御装置、配電盤、放送装置、電話機、さらに運輸区や車両センター派出所のリレー(切り替えスイッチ)11カ所などに流れ、発煙・発火・溶損などが各所で同時に発生した。漏電箇所では電気火災特有の火花が散り、あちこちで炎が上がって延々と燃え続けた。ハロゲン化物消火装置が作動した場所には消防職員は立ち入れなくなり、消火までに3時間もかかった。鉄骨の梁やコンクリート電柱は溶損し、配電盤や制御装置はドロドロに溶けて焼けただれた。
大電流によりコンクリートが解けて大きな穴が開いた電柱は、3・4番ホームに立っていた。事故は始発前の午前4時に発生し、ホームには誰もいなかった。だが、もしラッシュ時だったら、感電による死傷者が多数出た可能性は十分にある。鉄道は1500㌾の直流や2万㌾の交流を日常的に扱う事業だ。感電は触車、墜落と並ぶ3大労災事故の一つとされている。絶対に起きてはならない事故が起きたのだ。
寿命が切れた碍子使い続ける
事故の発端となった碍子の19㍉の鉄製部はさびで腐食が進んでいた。この碍子についてJRは、1991年に設置し2015年5月の点検では異常がなく、2017年度に交換予定だったと言う。碍子の寿命は20〜25年で、製造されたのは1968年と言われている。JRは、寿命の尽きた部品を交換せずに使い続けていたのだ。
事故が起きる前に保守する「予防保守」が保守業務の原則だ。だが、2000年の「設備メンテナンスの近代化」以降、この原則は解体され、「事故が起きたら変える」となった。また外注化・非正規職化で技術や経験の蓄積が寸断され、危険箇所は放置されたままになっている。昨年4月の山手線の電化柱倒壊事故も、危険を指摘する現場労働者の指摘を握りつぶした末に起きた。
今回の事故の深刻さは、漏電遮断装置が作動せず、高圧電流が流れ続けた点にある。過電流が流れたら、即座に電流を遮断することが鉄則だ。一般家庭でも、ショートすればブレーカーが直ちに落ちる。なのに1500㌾の直流を扱う鉄道職場で、変電所などの供給元で遮断器が作動せず、対処できる人もそばにいなくて、大電流が長時間、火炎を上げて流れ続けたのだ。
3月17日にはJR九州の日豊線で感電死亡事故が起きた。き電線を夜間に張り替える工事で、停電手配した上り線側での作業を終え、下り線側に移動したところ、通電していて感電した。またも下請け会社のベテラン労働者の尊い命が奪われたのだ。
混乱拡大させた上野東京ライン
昨年3月のダイヤ改定による上野東京ラインの開通が、今回の事故をさらに大きなものにした。
高崎線でのJR内部に原因がある輸送障害事故は、ダイ改前の14年度上半期には5件だったが、15年度上半期には8件に増え、それによる運休本数は10本から32本と3倍増にもなった。
籠原駅構内でレールの継ぎ目ボルトが破損する事故は、今年に入ってから1月6日、3月3日、3月6日と3件も起きた。高崎線で線路が陥没する事故は、15年度上半期に6月17日、7月29日の2件起き、それにより計30本が運休した。
籠原は運輸区(運転と車掌)や車両センターを有する高崎線の中心基地だ。ここに合理化・外注化の矛盾が集中している。首都圏はいつ第2の尼崎事故が起きてもおかしくない状態だ。昨年のダイ改が事故を激増させ混乱を拡大させたのだ。
労働者は団結して闘わなければ殺される。事故の責任の一切は資本にある。反合・運転保安闘争路線を確立した動労総連合の闘いは、労働者の生きる道を示している。動労総連合を全国に建設しよう。東京にこそ動労総連合の旗を立てよう。