「ストを勝利へ」闘う米国教育労働者 公教育の破壊を許さない!「病欠闘争」で反撃し大勝利 9割で休校かちとり「管理人」を辞任に追い込む

週刊『前進』02頁(2728号02面04)(2016/03/03)


「ストを勝利へ」闘う米国教育労働者
 公教育の破壊を許さない!「病欠闘争」で反撃し大勝利
 9割で休校かちとり「管理人」を辞任に追い込む

(写真 「教師の命も大切だ!」、雪の中をデモするデトロイト教組の組合員【1月20日 デトロイト】)

 1月20日、デトロイトの劣悪な学校環境と労働条件に抗議し、教育労働者が大規模な病欠闘争を行い、市の公立学校97校のうち88校を閉鎖した。
 この病欠闘争は、昨年1月からデトロイト公立学校の「非常事態管理人」に任命されていたダーネル・アーリーを辞任に追い込む大勝利をかちとった。
 デトロイト教組執行部の抑圧をはねのけて現場労働者の有志が「デトロイト・ストライキ闘争を勝利へ」というグループを組織し、数カ月前から病欠闘争を続けた。それが1月15日には公立学校の3分の1、35校を閉鎖する大闘争となり、そして20日には88校にまで広がったのである。
 この20日は、デトロイトで開催中の北米国際自動車ショーにオバマ大統領が来場し、09年のGMとクライスラーの破産という事態からの自動車産業の回復を称える演説を行った日だ。まさにこれに合わせて病欠闘争が組織されたのだ。オバマこそが、金融資本を救済するために徹底的に労働者を犠牲にするGM・クライスラー破産処理計画をつくった張本人だ。「自動車産業の首都」デトロイトの自治体破産攻撃の主犯だ。
 11年6月にミシガン州議会で成立した「非常事態管理法」は、市財政立て直しの名目のもとに、州知事が任命した非常事態管理人に、市議会も市長も指揮下に置く独裁権力を与える。そして自治体の資産売却、公務員解雇、公共部門民営化などを実行させるものだ。市の教育行政当局にも非常事態管理人が任命される。
 ミシガン州知事のリック・シュナイダーは、デトロイト教育行政当局の非常事態管理人にアーリーを任命したのだった。

公立校の建物は崩壊寸前、教員解雇と廃校も

 デトロイトの公立学校の建物は崩壊寸前だ。体育館の屋根からは水漏れし、床は盛り上がり変形して危険極まりない。体育館の入口には「立ち入り禁止」の札が下がり、生徒がスポーツを楽しむ場もない。校内のいたるところにネズミがはびこり、ゴキブリなど虫の死骸が転がっていて、教室や廊下にはクロカビも発生している。
 予算削減のために多くの教員が解雇され、カウンセラーや図書館司書なども大幅に削減された。1学級の人数が40〜50人という学校も多い。不衛生で危険な施設の中で、生徒たちが十分な教育を受けられるはずがない。
 2002年に「落ちこぼれゼロ法」が制定されて以来、教育に市場原理が持ち込まれた。生徒たちはテスト漬けにされ、生徒の点数が上がらなければ、その学校には国からの予算が出なくなった。
 デトロイトの公立学校に通うのは、ほとんどが貧困家庭の子どもたちだ。生徒たちの平均点が上がらず、資金はどんどん減らされて、数多くのデトロイトの公立学校は廃校へと追い込まれていった。
 アーリーはデトロイト公立学校の非常事態管理人になる前、14年4月にフリント市の非常事態管理人に任命された。

ミシガン州では水道水の鉛濃度倍増の重大汚染

 そして「コスト削減のため」として、もともとデトロイト水道局(水源はヒューロン湖、五大湖の一つ)から購入していた水道水を、近郊の汚染のひどいフリント川を水源にするものに切り替えた。
 フリント川の水を供給し始めてからすぐに、住民からは水道水の濁りや悪臭のほかに、吐き気や発疹、抜け毛を訴える声が上がった。鉛濃度が倍増したにもかかわらず、州の保健福祉局は「鉛濃度はまったく問題ない」と否定し、濃度上昇は季節的要素が原因で、水源とは無関係と主張していた。しかし、腐食性の水のために水道管から多量の鉛が家庭の水道水に流れ出ていたのである。
 15年9月、医療機関の調査で子どもたちの血液から鉛が検出され、医師がフリント川の水を使わないよう警告した。10月には市が「緊急事態宣言」を発動し、飲料水の水源を以前のヒューロン湖に戻したが、鉛の濃度は改善されていない。

金融資本による全面的な民営化攻撃と対決して

 フリント市の水道水を汚染させて人びとに重大な健康被害を与えた非常事態管理人アーリーは、子どもたちを鉛中毒にした最大の責任を問われるべき人物である。しかし、現在行われている水道水汚染問題の公聴会に召喚されようとも証言を拒否した。そして今度はデトロイトの公立学校の非常事態管理人として送り込まれ、やりたい放題の緊縮財政を展開し、デトロイトの公立学校を根本的に変えようとしたのである。
 フリント市の水質汚染は、非常事態管理人アーリーがデトロイト水道局を破産させるために仕組んだことだ。水道民営化により金融資本が莫大(ばくだい)な利権を奪い取る過程と一体の動きだった。非常事態管理人のバックには金融資本・巨大独占企業がついており、公教育は格好のターゲットなのだ。彼らは、公教育を乗っ取りチャータースクール(公設民営校)をつくってもうけの道具としようと、公教育システムの破壊を虎視眈々(たんたん)と狙っている。
 金融資本は大恐慌の破局の中で、人為的に自治体破産をつくり出し、破産利権を奪い取るために襲いかかる。これが資本主義の最末期の姿だ。
 今回の病欠闘争の圧倒的勝利は、現場を担う労働者こそが彼らに取って代わる存在であることを示している。
(高村涼子)
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