福島の怒りで安倍を倒そう 3・11反原発福島行動'16へ―5― 丸川環境大臣の暴言許すな 労働者・住民を被曝させない 被曝限度の引き上げ阻もう

週刊『前進』04頁(2725号03面01)(2016/02/22)


福島の怒りで安倍を倒そう
 3・11反原発福島行動'16へ―5―
 丸川環境大臣の暴言許すな
 労働者・住民を被曝させない
 被曝限度の引き上げ阻もう

(写真 スクリーニング検査の様子)


 3・11福島原発事故から5年、安倍政権は高線量放射能汚染区域への帰還攻撃を激化させている。環境相・丸川珠代の「(年間1㍉シーベルトの除染目標に)何の科学的根拠もない」という発言にも明らかなように、政府は一般公衆被曝線量限度の大幅引き上げを狙っている。3・11反原発福島行動16の大成功をかちとり、被曝強制と原発再稼働、核武装化を狙う安倍を倒そう。

1㍉基準引き上げ狙う

 チェルノブイリ原発事故後の被害を見ても明らかなように、放射線はどんなに少なくても人体を傷つけ、がんなどの疾病のリスクをもたらす。特に内部被曝が大問題だ。
 ところが丸川環境相は、殺人的な帰還基準年20㍉シーベルトを絶対視する立場から、除染長期目標とされている年間被曝線量限度1㍉シーベルトを「何の根拠もない」などと吐き捨て、発言撤回に追い込まれた。引き下げが切実に求められている一般公衆の現行線量限度1㍉シーベルトを逆に大幅に引き上げ、人が住んではいけない放射能汚染地帯への帰還を促進しようとする、とんでもない暴言だ。
 同時に、原発事故時のオフサイト(原発敷地外)作業に労働者を動員する際の被曝線量限度の引き上げを狙うものだ。安倍・丸川の1㍉シーベルト引き上げ攻撃を徹底的に弾劾する。
 国は、緊急時にオフサイトで「防災業務」という名の被曝労働に従事する自治体労働者や民間労働者には、これまで一般公衆と同じ1㍉シーベルト被曝線量基準が適用されると説明してきた。
 だが、福島原発事故時にオフサイト緊急作業に従事した労働者の被曝実態の詳細は明らかにされていない。1㍉シーベルトを超えた労働者が多数いたことは確実だ。現地でのバスやトラックを使った輸送、そして保健医療などは被曝労働そのものとなる。これに抵抗し拒否する労働者が相次いだ。
 動労水戸は被曝労働拒否をストライキで闘い抜いてきた。舞鶴や愛媛など原発の地元の労働組合、住民の再稼働絶対反対の決起も広がっている。そうした中で1㍉シーベルト以上の引き上げはフクシマの怒りを激しく燃え上がらせ、広範な労働者・労働組合の反原発闘争への決起をさらに広げずにはおかない。これに支配階級は恐怖を募らせている。丸川発言は怒りの炎に油を注いだ。
 「オフサイトの防災業務者の安全確保に関する検討会」(座長・山下俊一)の報告書(2016年1月5日)は、原発事故時の動員労働者の被曝線量について、あらかじめ国や県がバスなどの民間業者との間で取り決める「被曝線量の管理の目安」以内に収まることを確認すると述べている。国家機関と企業が共謀して被曝線量限度を引き上げることを得手勝手に決めようというのだ。しかも、その目安は「健康影響の観点からは定めない」とわざわざ注記し、労働者の健康問題を無視している。 
 被曝線量基準の引き上げは、放射線をより多く浴びさせることを意味する。このような労働者住民への〝被曝拡大計画〟は、悪質な意図的大量殺傷行為にほかならない。

3・11直後は10万cpmに

 5年前の3・11事故で何が起きたのか? 翌12日の避難誘導中、1号機の水素爆発の音を聞き、「数分して雪のように破片が降ってきた」ことを300人ほどの双葉町職員や医師、看護師らが目撃し、服についた「チリ」を払い落とすだけだったと証言している。周辺住民は高線量の放射線にさらされた。その夜、町職員4人が福島県立医大で検査を受け、放射性ヨウ素が検出された。
 原発周辺から避難した住民には、身体に付着した放射性物質を検査し除染するスクリーニングが行われた。自治体労働者、保健医療関連労働者などが地元を始め全国からも動員され、その業務に従事した。
 「かなりの割合で1万3千cpmを超えている」「10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れた」──これまでの除染基準値だった1万3千cpm以上の続出は、初期被曝のすさまじさを示していた。厳しい寒さの中で検査を待つ人びとの行列、除染に不可欠の水と着替えの不足、被曝患者の病院への搬送・受け入れ拒否......。現行水準での除染体制は完全にパンクした。着の身着のままでふるさとを追われ、さらに命を脅かす被曝に直面した地元住民の怒りが急速に広がり始めた。
 ブルジョア秩序の根幹を揺さぶりかねない危機に驚愕(きょうがく)した日帝行政権力は、スクリーニング基準を1万3千cpmから一挙に10万cpmに引き上げた。福島県の11年3月14日付「緊急被ばくスクリーニング体制について」の通達は、「住民に対する安心・安全の確保」を「基本的な考え方」とすると明記した。被曝を防ぐのではなく、除染を手抜きして被曝の実害対策を「心のケア」にすり替える。これがその後の一連の放射線量基準値変更、被曝隠ぺい・過小評価、避難妨害の始まりだった。
 基準値超えは、引き上げ後の基準で見れば102人(これを日帝はことさら強調する)だが、変更前基準では1千人以上だ(表参照)。また、1万3千cpm以下の値でも放射性物質は体表面に付着しているのだから、できるだけ取り除かなければならない。それが遊離して呼吸などで体内に入り、危険な内部被曝を起こす原因となるからだ。

全データを開示せよ!

 10万cpm基準は、その後1万3千に引き下げられた。だが緊急時のスクリーニング基準は、原子力規制委員会「原子力災害対策指針」によって放射性物質放出から1カ月以内では従来の3倍の4万cpmとされた(2013年3月から)。原発事故が大量の被曝を不可避とすることを日帝自ら認めているのだ。
 スクリーニングの全資料は、核犯罪の下手人である国と福島県が握り、今も隠し持っている。実に許しがたい。すべてのデータをただちに開示せよ!
 安倍政権の原発再稼働、戦争と労働法大改悪の攻撃に対し、労働者人民は怒りをますます強め、この社会の根底的変革を求め決起し始めている。
 フクシマの怒りをともにし、ふくしま共同診療所をよりどころとした避難・保養・医療の運動を強めよう。3・11反原発福島行動16に総結集しよう。
(河東耕二)
(連載おわり)

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cpm カウント・パー・ミニット。1分間あたりの放射線計測回数で体や着衣の表面の汚染を示す単位。表面汚染が1平方㌢当たり40ベクレルで、1歳児甲状腺等価線量の100㍉シーベルトとなる。標準的な測定器の大口径GMサーベイメータで1万3千cpmに相当する。2011年3・11まではこの値を除染の基準とした。

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