焦点 資本主義の断末魔の姿 マイナス金利でさらに破滅へ
焦点
資本主義の断末魔の姿
マイナス金利でさらに破滅へ
●欧州に続いて日本の金利も
日銀は1月29日の金融政策決定会合で、民間銀行から余剰資金を預かる当座預金の金利をマイナスにすると決定した。当座預金残高は2月現在260兆円あり、金利は年0・1%で2000億円以上の利子が銀行に支払われている。これを直ちに全部マイナスにすると銀行が破綻するので、新たに預ける部分をマイナス0・1%にし(2月16日から開始)、以後10〜30兆円の範囲で継続するという。
これは預金したのに逆に利息分の手数料を取られるという、前代未聞のマイナス金利の導入だ。すでにマイナス金利は14年6月にECB(欧州中央銀行)が先行的に導入し、スイス、スウェーデン、デンマークの中央銀行もこれに追随している。資本の利子がマイナスになる事態は、歴史的に誰も予想しなかったことであり、すでに資本主義・帝国主義はこの点からも歴史的命脈が尽き、打倒される寸前の断末魔の状態にあるのだ。
●黒田「異次元緩和」の崩壊
黒田日銀と安倍政権がマイナス金利導入に訴えるしかなくなったのは、「2年で2%」というインフレ目標を掲げた、「異次元」と称する国債の大量買い入れを軸とした量的・質的金融緩和なるものが、完全に行き詰まり破綻したからである。
年初来、中国経済の大減速、原油価格の急落、米利上げなどを契機に、世界的に株価が暴落と乱高下を繰り返し、日本経済も「円安・株高」から「円高・株安」に完全に逆回転し始めた。「デフレ脱却」と称した2%のインフレ目標も、すでにその達成時期を三度も先送りせざるを得ないという惨状だ。
安倍政権は黒田日銀を使い、国債の大量買い入れを軸に異常な量的金融緩和政策を展開し、人為的な「円安・株高」を生み出すことで、一握りの輸出型大企業や富裕層の収益を上げて、政権を維持してきた。だが世界大恐慌の根底にある歴史的な過剰資本・過剰生産力の岩盤を、中央銀行が垂れ流す緩和マネーに依拠して解消し打開することなど、到底不可能である。
日銀総裁・黒田は、いつもの黒を白と言いくるめるペテン師さながら、マイナス金利導入の理由を「量・質・金利の3次元での緩和措置」などとボードを使ってもっともらしく説明し、「これまでの中央銀行の歴史の中で最も強力な枠組み」などと強弁して虚勢を張った。
だがマイナス金利の衝撃がもたらす「効力」は、わずか1週間も持続せず、2月5日の日経平均株価は4日続けて大きく下げ、1万6819円の安値に沈み、円も1㌦=116円台へ上昇した。マイナス金利決定直後の株高・円安はたちまち帳消しとなってしまった。
それでも黒田は「必要な場合、さらに金利の引き下げを行う」「できることは何でもやる」「人びとのデフレ心理を転換する」とうそぶき、マイナス金利という歴史的に未踏の破滅の道に突き進もうとしている。
マイナス金利は、1929年をも超える現下の大恐慌の重圧にあえぐ資本主義・帝国主義の、断末魔の姿であり、労働者階級人民の生活にもとてつもない影響を与えるものとなる。
●個人預金もマイナスになる
第一に、すでに横浜銀行やりそな銀行などの地方銀行や中堅銀行が、個人の定期預金・普通預金の金利の引き下げを始めた。早晩メガバンクもこれに続く。預貯金の金利は限りなくゼロ化し、マイナス化する(すでにスイスの一部の銀行はマイナスだ)。黒田は個人預金のマイナス金利も「可能性は否定しない」と公言した。さらにATMの預払操作の手数料、振込や口座管理の手数料が引き上げられ、人民への大収奪が進む。
第二に、すでに2年債、5年債といった期間の短い国債金利は日本とヨーロッパでマイナスになっているが、今後は10年債の流通利回りなどもさらに低落し、マイナス化する。日本では長期金利の指標の新発10年物国債の利回りが、2月5日に0・02%と史上最低となり、9年債はついにマイナス化した。
第三に、こうして国債金利が次々とマイナス化する中で、今や日本の債券市場は事実上崩壊した。マイナス金利導入後、すでに社債の発行が次々延期になり、窓口販売の国債関連金融商品も募集が中止され始めた。
前代未聞のマイナス金利政策の破滅的影響は、さらに悪無限的に拡大していくだろう。マイナス金利は資本主義・帝国主義のまさに断末魔の姿だ。これへの労働者人民の唯一の回答はプロレタリア世界革命である。