労働法改悪・2大政府指針とゼネストで闘う韓国民主労総 派遣法粉砕は日韓労働者の共通課題 韓国「労働改悪」の正体暴く

週刊『前進』02頁(2722号02面01)(2016/02/11)


労働法改悪・2大政府指針とゼネストで闘う韓国民主労総
 派遣法粉砕は日韓労働者の共通課題
 韓国「労働改悪」の正体暴く

(写真 民主労総首都圏ゼネスト大会で「行こう!ゼネスト」のボードを掲げる金属労組組合員【1月27日 ソウル】)

 韓国・民主労総は、パククネ政権による「労働市場構造改革」という名の攻撃と激しく闘いぬいている。民主労総はこれを「労働改悪」と呼び、一握りの財閥・大資本のために全労働者を非正規職化と貧困にたたき込む攻撃であるとして、絶対反対のゼネストで立ち向かってきた。その闘いは昨年1年間にわたって労働法の大改悪を完全に阻むとともに、今日、追いつめられたパククネ政権を、行政権力の強権的発動に頼る以外ないところにたたき込んでいる。
 だがそれは、民主労総だけでなく、労使協調を基本路線としてきた韓国労総をも闘いに立ち上がらせ、パククネ打倒の情勢を一層促進している。最大の怒りの的となっているのが、1月22日に発表され、即日施行された「公正人事指針」と「就業規則の解釈および運営指針」という、二つの政府指針(ガイドライン)である。

「能力・成果」で自由に解雇

 「公正人事指針」には「職能と成果中心の人材運営のためのガイドブック」という副題が付いている。労働者を「業務能力の不足」や「勤務成績不振」を理由に解雇できるとすることが、その核心だ。パククネ政権と韓国の財界はこの間、最低評価が2期連続した労働者を解雇できる制度の導入を求めてきたが、今回の指針はさらにエスカレートしている。「成果」「能力」を口実にしさえすれば、労働者をいつでも好き勝手に解雇する自由を資本に与えるものである。まさに「簡単な解雇」を可能にし、解雇の完全自由化に直結する大攻撃だ。
 しかも許せないことにパククネは、これによって「公正な解雇」が可能になるなどと言い放っている。民主労総が怒りを込めて弾劾するように、労働者にとって解雇は殺人と同じだ。生きる手立ても誇りも奪い、自分と家族の全生活と人生を踏みにじるものだ。「公正な解雇」などありえず、そもそも資本が行う評価に「公正」など断じてありえない。
 この指針の発動は実際には、労働組合の活動家を真っ先に狙い打ちするものとなる。サムスン電子の現場ではすでに、労組の中心的活動家が集中的に「低成果者」の烙印(らくいん)を押されて停職や解雇の攻撃を受け、これとの激突が始まっている。

就業規則使い労組を無力化

 「就業規則の解釈および運営指針」は、直接には昨年貫徹できなかった賃金ピーク制の導入を、就業規則の一方的変更によって現場に強制しようとするのが狙いだ。
 賃金ピーク制とは、今年4月から定年が60歳に引き上げられるのを前に、定年までの雇用約束と引き換えに一定の年齢(55〜57歳)から賃金を一挙に2〜3割も大幅に引き下げるものだ。民主労総のゼネスト闘争は昨年、その導入を多くの職場で実力阻止した。これに対し、資本の意思をあくまで暴力的に押し通そうと出してきたのがこの指針である。
 賃金などの労働条件を改悪する場合、労働者側の同意なしに使用者が勝手に就業規則を労働者に不利に書き換えることは許されていない。
 今回の指針はしかし、「社会通念上の合理性があると認められる場合には」就業規則の一方的な不利益変更ができると宣言し、それを一般的な「原則」にまで高めている。こんなことを認めるならば、賃金ピーク制導入にとどまらず、今後、資本は就業規則を武器にすることで労働条件の改悪をそれこそ、思うがままにやれることになる。労働組合との交渉や協議も必要がなくなり、労働組合はその存在自体が完全に無力化される。
 まさに究極の労働組合圧殺攻撃だ。絶対に許してはならない。

派遣への規制全面撤廃狙う

 この二つの政府指針に加え、国会ではさらに労働法制の一連の大改悪が策動されている。それが、①勤労基準法、②期間制雇用法、③派遣法、④雇用保険法、⑤産業災害保険法の5大労働法改悪案である。
 そこには、非正規職労働者を4年で雇い止めにする攻撃や、労働時間規制の撤廃につながる攻撃、失業手当や労災保険の受給資格を制限する攻撃などが含まれている。文字通り、現行労働法制の全面的な大改悪だ。
 中でも最も重大なのは③の派遣法の大改悪である。現在は2年・32業務に限定されている派遣期間と派遣対象業務の制限を、55歳以上の高齢者にはすべて取り払う。規制全面撤廃への突破口だ。
 決定的なのは、製造業への派遣の解禁である。「根っこ技術」と呼ばれる鋳造・金型・塑性(そせい)加工・熱処理・メッキ・溶接などの作業について、派遣労働者の使用を全面的に認める。
 これは、現代自動車などで何年も前から問題となってきた、社内下請け業者を使った不法派遣をすべて合法化しようということだ。自動車の組み立て・生産工程全体が「偽装請負」であり「不法派遣」との裁判所の判決が相次いできたにもかかわらず、現代自動車資本は社内下請け労働者の正規職への転換を拒否し続けてきた。この大資本の不当労働行為に法改悪でお墨付きを与えようとたくらんでいるのだ。
 日本では昨年9月、戦争法と一体で派遣法が大改悪され、3年ごとに労働者を入れ替えれば派遣労働者を使い続けられるという、85年派遣法成立以来の大転換が強行された。パククネはこれに続こうとしている。派遣法粉砕は日韓労働者の最重要の共通課題だ。

韓国労働者と連帯し闘おう

 パククネ政権の労働法大改悪と2大政府指針は完全に一体である。最大の狙いは、労働組合と労働運動の完全な破壊、解体だ。それは、日本で今、安倍政権が戦争攻撃と一体で策動している労働法の大改悪とも完全に共通するものだ。
 大恐慌の激化、とりわけ中国バブルの崩壊は韓国を支配する巨大財閥を直撃し、「このままでは破滅だ」との悲鳴を上げさせている。朝鮮半島での新たな戦争・核戦争危機の切迫と米日韓の臨戦態勢構築は、すでに政権末期の状態にあるパククネをますます絶望的に追いつめている。今やパククネ政権と支配階級にとって、民主労総の圧殺・解体にすべてをかける以外にどんな延命の道もない。逆に労働者階級人民にとっては、労働組合のゼネストと全民衆総決起でパククネを打倒し、労働者権力を樹立する革命をやりぬくことこそが唯一の生きる道である。
 闘いは今や第2段階に入った。不屈の民主労総と連帯し、ともに勝利をめざして突き進もう。
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