『非正規が闘って、勝った!』 「一人の首切りも許さない」 鈴コンの同志愛に感激した 鈴コン闘争支援・連帯共闘会議呼びかけ人代表 花輪不二男さん
『非正規が闘って、勝った!』
「一人の首切りも許さない」 鈴コンの同志愛に感激した
鈴コン闘争支援・連帯共闘会議呼びかけ人代表 花輪不二男さん
鈴コン闘争支援・連帯共闘会議呼びかけ人代表の花輪不二男さんから、『非正規が闘って、勝った!』(発行・出版最前線)の推薦文が寄せられた。東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会の闘いを生き生きと描いた本書を活用し、職場闘争を闘おう!(編集局)
鈴コン分会7年の闘いはある時は怒り、次いで涙や笑いが散りばめられた楽しい記録です。また、中小零細企業で働く労働者にとって参考になる職場の問題が多く、3カ月更新のアルバイト労働者でも闘い方があることを示したのが鈴コン闘争本『非正規が闘って、勝った!』の特徴です。
〈その1〉人の出会いは不思議です。この闘争に入る以前、私と鈴コンの皆さんとのお付き合いはごく一般的なものでした。私は、過去に臨時職員の正規化を闘いましたが、鈴コンのように10年、20年働いても3カ月更新のアルバイトという例は聞いたこともありませんでした。
また「バイトに有給休暇などないわよ」「嫌なら辞めたら」と言う女社長に出会ったのも初めてでした。徹底的な労組敵視の彼女は「私、以前に組合をつぶしたことあるのよ」とうそぶいていました。昼休みもなし、社会保険料も払いません。すべて社長のサジ加減で運営されていたのです。
私の第一印象は「ひどい」でした。典型的なブラック企業の実態だと思いました。その厳しい職場で闘う鈴コン分会をなんとしても勝たせたいとエールを送ったのです。
〈その2〉「一人の首切りも許さない」。このスローガンは素晴らしい。しかし現実の闘争では容易ではありません。
当時、社長は非正規バイト労働者に定年の協約はないと認めていました。しかし、会社は組合結成を準備していた田口さんに対し、「辞めるか、賃金(日給1万円)の25%ダウンで働くか」と、定年を口実とする解雇攻撃を仕掛けてきました。明らかに組合つぶしの攻撃でした。
組合は田口解雇を機に公然化し、会社に強く抗議をしました。やがて田口さんは持病が悪化し他界するのですが、組合は壊滅的な危機を迎えることになります。田口解雇の強行におびえた一部組合役員らが会社の御用親睦会に走ったのです。
しかし、鈴コン分会に残った5名は初心を守り、田口組合員の名誉回復と会社の謝罪、生存した期間の賃金の支払い、強行された手当ての削減に反対してストライキを打ったのです。
私は鈴コン分会があくまでも田口さんを守り、彼の無念を晴らすために闘った仲間に対する同志愛に感激しました。鈴コン分会が本物の闘う労働組合に成長している姿を見て、私も一緒に闘おうと決意しました。
〈その3〉会社は鈴コン分会を根絶やしにする狙いで分会3役への処分を乱発し、組合の反撃に解雇処分で応えました。
私は、この鈴コンの闘いを孤立させてはならないと考え、鈴コン闘争支援・連帯共闘会議の呼びかけ人代表を引き受けるとともに支援要請行動に取り組みました。
80歳を超えている私にとって人生最後の争議支援行動になるとは思いますが、今は鈴コンの皆さんから元気と勇気をもらって頑張っています。
当面は会社の支配介入によって分裂させられた分会組織を再建することが課せられた任務です。
〈その4〉裁判闘争は地裁、高裁を通して全面勝利と言って良いでしょう。
法廷では社長を証人として呼び出し、不当労働行為や職場の実態について厳しい追及を行いました。追いつめられた社長が証人席で組合3役に対し「うそつき」と罵倒する一幕もありました。社長は社内の常識は世間では非常識だということを知るべきだと思います。
この裁判闘争には全国規模で裁判所への要請書にご協力をいただきました。集会等には大阪から関西生コンの仲間、千葉や水戸から動労の仲間など多くの仲間が駆け付けてくださいました。鈴コン分会は幸せな組合です。これからは鈴コン分会が支援に出かける番だと自覚しています。
〈その5〉私は「国鉄分割・民営化に反対し、1047名解雇撤回闘争を支援する全国運動」の呼びかけ人でもあります。現在の労働法制は新自由主義路線の攻撃のもとで瀕死(ひんし)の状態と言っても過言ではありません。
かつて中曽根が「お座敷をきれいにして、新憲法を」と語って以来、労働運動や政治情勢は大きく右旋回をしました。
問題はこれらの変化と現在の労働現場の無権利状態、非正規職化が無関係ではないことです。
この不条理な状態を正し、泥沼から脱する方法は労働者自身が立ち上がる以外に道がありません。ましてや資本家や現政府が本気で考えてくれるはずはなく、幻想を抱いてはなりません。
先輩労働者が大きな犠牲をのりこえて築いてきた「労働3権」が危機に瀕している時、再び労働者が闘ってこそ人間らしい生活と権利を取り戻す道が開かれます。
鈴コン分会の勝利は中小零細企業の小さな結果です。しかし、同じような無権利の職場で働く労働者に波紋となって共感を呼び覚ます効果はあると思います。やがて世の中を変えるような力に育つことを夢見て「鈴コン本」を送ります。ともに闘う労働組合をつくりましょう。そして、闘う労働運動を築きましょう。