16年版「経労委報告」を斬る 労基法大改悪=残業代ゼロと正社員一掃の総非正規化狙う 派遣法粉砕・非正規職撤廃へ闘おう

週刊『前進』02頁(2720号01面03)(2016/02/04)


16年版「経労委報告」を斬る
 労基法大改悪=残業代ゼロと正社員一掃の総非正規化狙う
 派遣法粉砕・非正規職撤廃へ闘おう


 経団連は1月19日、春闘に向けた「2016年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。副題は「人口減少下での経済の好循環と企業の持続的成長の実現」だ。

「人口減少」で女性や高齢者の動員を画策

 経労委報告は第一に、労働人口減による資本蓄積の危機を叫び、女性や高齢者などの「参入と活躍」、労働時間規制見直しを主張した。
 報告は「新興国の経済が減速するなど予断を許さない」とする一方、15歳から64歳の生産年齢人口の減少を深刻な問題とした。1995年をピークに2014年には1千万人減り、60年にはさらに3千万人以上減る(図1)とし、減少が続けば産業の衰退を招く国家的危機だとした。
 その通りだ。最末期帝国主義は大恐慌と労働人口の減少(そして世界戦争の切迫)に行き着いた。世界中で労働人口減少が加速している。新自由主義による「非正規化と貧困」の結果だ。
 しかし彼らは反省などしない。労働力確保へ、労働市場や労働基準法、働き方を改革すれば女性や高齢者など多様な人材の参入と活躍が促進されるとした。そして「企業は健康確保に最大限配慮した対応をとると考えられる」などとうそぶき「現行の労働時間規制に替わる新たな仕組み」として「残業代ゼロ」=「過労死」法成立を求めた。
 8時間労働制を解体し非正規・長時間労働に根こそぎ駆り出して生き残ろうとする社会破滅への道だ。絶対に許せない。

労働者派遣法は国鉄民営化と一体で成立

 報告は第二に、昨年9月に成立・施行された改悪労働者派遣法を賛美し活用のための留意点を挙げた。加えて、専ら派遣(派遣会社を設立しグループ会社のみに派遣)や日雇い派遣(30日以内の短期派遣)などの全面解禁を主張した。
 85年成立の派遣法は国鉄分割・民営化による労組解体と一体で雇用と労働を一変させた。非正規化が進んで「代わりはいくらでもいる」として、労働者分断と競争を強め労働条件を悪化させた。88年に「24時間戦えますか」という栄養ドリンクのCMが始まり、「過労死」という言葉が一気に広まった。労基法無視の労働者酷使が広がり、過重労働で過労死と過労自殺が深刻化していった。
 派遣労働解禁は『女工哀史』(細井和喜蔵1925年刊)や『蟹工船』(小林多喜二29年刊)で描かれたすさまじい「奴隷労働」を復活させた。「戦前の女工身分のようなまともな雇用といえない雇用身分が復活した」(森岡孝二『雇用身分社会』昨年10月刊)。『女工哀史』は紡績工200万人の8割が女性工員という時代の超低賃金と超長時間・深夜労働、過労死と虐待の実態をえぐった。工場は「軍隊のよう」に助役は4ランク、労働者も社員、雇員、職工に細分され「社員と職工との階級的差別は実にひどい」。女工たちは募集人の手で集められた。『蟹工船』で缶詰加工船に送り込まれた労働者も周旋屋によって集められた。今日の派遣会社にあたる労働者供給事業が仲介し、脅迫や監禁を伴った強制労働、奴隷的な人身売買、ピンハネ、暴力団の介入が横行した。
 47年、労基法と職業安定法制定で労働者供給事業は原則禁止された。それを解禁したのが85年派遣法だ(同年男女雇用機会均等法で女性の深夜労働も解禁)。派遣は「間接雇用」だとして派遣先の責任を否定する。労働条件の決定から労働者を排除し、労働安全衛生配慮義務も免れるとした。08年末の数十万人の派遣切りで社会問題化したように派遣先の都合で雇い止めが無慈悲に強行される。団結の場が奪われて労組結成が阻害され、労働法も制限される新自由主義の典型的攻撃だ。
 昨年9月の派遣法改悪で人さえ換えれば期間をいくらでも延長できるようになった。全業種で正社員を派遣労働者に換える留め金が外された。金銭解雇制が解禁されれば解雇の不当性が労働委員会や裁判で争われていても「解決金」と引き換えに首を切って置き換えることがまかり通る。まさに10割非正規職化の階級戦争攻撃だ。未来をかけて派遣法粉砕に立とう。

同一労働同一賃金は非正規化と賃金破壊

 報告は第三に、「非正規職の処遇改善」「同一労働同一賃金」を掲げ、限定正社員制と「仕事と成果で評価する人事・賃金制度」を提唱した。
 安倍も1月22日、施政方針演説で「同一労働同一賃金」「非正規の均衡待遇」を強調した。総非正規化と労働者分断、賃下げと定期昇給廃止、成果主義の人事・賃金制度への大転換の攻撃だ。
 日経連は95年「新時代の『日本的経営』」で労働者9割の有期雇用化を打ち出し、97年から15年間で低賃金化・貧困化が急激に進んだ。(図2)
 そして今や「正社員の消滅」が言われ出した。12年刊『正社員消滅時代の人事改革』を書いた学習院大教授・今野浩一郎は厚労省「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」の座長として限定正社員が中心となると発言。人材派遣パソナグループ会長で産業競争力会議の竹中平蔵は14年末、テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」で「同一労働同一賃金というなら正社員をなくしましょう」と言い放った。
 これに立ち向かってきたのが国鉄闘争だ。今こそ外注化阻止・非正規職撤廃へ総決起しよう。

ストライキで全労働者一律大幅賃上げを

 報告は第四に、賃上げする場合は基本給に限らず一時金など多様な選択肢から選べとした。「人件費の原資は企業が生み出す付加価値である」として労働者の労働が一切の価値を生み出していることを認めず、階級対立の非和解性を否定して企業の業績次第で「おこぼれ」を与える。安倍と経団連、日銀が「経済の好循環」のための「賃上げ」を唱えて労組破壊を狙うまさに官製春闘だ。
 これに対し連合は昨年より要求を低めベースアップ2%とした。全トヨタ労連(33万5千人)は「物価上昇が鈍いうえ景気の不透明感が根強い」「中小を含め取り組める水準」として「月3千円以上」に半減させた。しかし一律大幅賃上げを闘わずに、どうして下請けや非正規職の賃上げがかちとれるというのか。
 報告は「個別労働紛争の増加」と合同労組の闘いにも言及し「適切な初動」を示唆した。抑えがたい怒りがいたるところで火を噴いているのだ。
 かつて春闘は全労働者の「生活できる賃金」を求めゼネストで闘った。官製春闘を粉砕し、まったく同じ攻撃と闘う民主労総ゼネストと団結して戦争・改憲の安倍打倒、派遣法粉砕・非正規職撤廃、外注化阻止、一律大幅賃上げへ動労総連合を先頭に春闘ストに立とう。2・14国鉄集会に総結集しよう。
(大迫達志)

このエントリーをはてなブックマークに追加