18歳選挙権 「主権者教育」を許すな 教組先頭に戦争・改憲阻止へ

週刊『前進』04頁(2719号02面06)(2016/02/01)


18歳選挙権
 「主権者教育」を許すな
 教組先頭に戦争・改憲阻止へ


 7月参議院選から選挙権年齢が18歳に引き下げられる。これに伴い全国の高校で「主権者教育」が始まっている。これは教組解体と国家による戦争教育を狙う改憲・戦争攻撃だ。教育労働者は「主権者教育」拒否で闘い、職場からストライキで闘う教組をつくろう。戦争絶対阻止の歴史的決戦へ、今こそ教育労働者が先頭に立とう。

「政治的中立」で教組を破壊

 「主権者教育」は「政治的中立」を強調して教組解体を狙う攻撃だ。
 昨年9月、文科省は総務省と連携して「主権者教育」のための高校生向けの副教材「私たちが拓(ひら)く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために」と教員用指導資料を発表し、全高校生と教員に配布した。
 全編96㌻からなる教員用指導資料は「中立」という言葉を約50回も登場させ、「教員の政治的中立」の名で教育労働者の政治活動と平和教育を全面的に禁止している。その上、23㌻にわたって教育公務員特例法、国家公務員法、人事院規則の政治的行為の制限や、選挙活動における禁止事項を事細かに列挙し、罰則も明記している。
 昨年7月、自民党政務調査会文部科学部会は「学校における政治的中立性の徹底的な確保」として教員の政治的行為に「罰則を科す」ための教育公務員特例法改悪や、日教組の「偏向を防ぐ」として組合の収支報告を義務づける地方公務員法改悪を安倍に提言した。
 これは大恐慌が深まり世界戦争が切迫する中、朝鮮侵略戦争にのめり込む安倍政権による、闘う教育労働者の首切りと教組解体攻撃であることをはっきりさせよう。1925年に普通選挙法と同時に成立した治安維持法による共産主義者・社会主義者の弾圧や、朝鮮戦争時のレッドパージに匹敵する攻撃だ。教育労働者が勤評闘争を上回るような改憲・戦争絶対阻止の闘いに立つ時が来た。

改憲・戦争動員のための教育

 では罰則で脅した上での「主権者教育」とは何か。それは、「国旗・国歌を尊重し、我が国の将来を担う主権者を育成」(2010年自民党政策集)とあるように、生徒・学生・青年に〝国を守るために戦う〟意識を刷り込む戦争教育であり、小中学校での道徳の「特別の教科」への格上げと連動した、高校の新科目「公共」の必修化の先取りだ。青年の戦争動員を許してはならない。
 そもそも「18歳選挙権」は国民投票年齢を18歳以上と定めた「憲法改正国民投票法」制定(07年)に端を発しているように、改憲への突破口だ。副教材「私たちが拓く日本の未来」では丸々1章を使って「憲法改正国民投票」を主張し、改憲を扇動している。
 さらに「18歳選挙権」は徴兵制の布石でもある。ベトナム戦争時のアメリカでは18歳で徴兵されていたが、〝選挙権がないのに徴兵されるのはおかしい〟と徴兵制とセットで選挙権が21歳から18歳に引き下げられた。
 だが「18歳選挙権」は改憲・戦争反対の階級的闘いを加速させる。それに恐怖する安倍政権は昨年10月、高校生の政治活動を禁止した1969年の文部省通達を廃止し校長、教員や家庭を動員して高校生を管理・統制する新たな通達を出した。

「主権者教育」推進の共産党

 7月選挙戦に向かって改憲阻止決戦は重大な攻防に入っている。
 ところが副教材配布について、日教組はなんの声明も談話も出せず身を縮めている。全教は「18歳を市民にして有権者を育てる教育」と評価するのみならず、日本共産党系の教員が副教材の作成協力者になっている。
 日本共産党は、安倍政権の教組破壊と戦争教育攻撃に対して「民主的な主権者教育」「シティズンシップ教育(市民教育)」を推進する。「市民教育」とは1980年代後半のイギリスで、新自由主義によって若者が失業と非正規職化で社会から排除され、社会的矛盾が激化する中で始まった。それは新自由主義社会の現実を容認した上で「社会参画」を促している。文科省も推進するこの「市民教育」は、労働者民衆を選挙の一票に縛り体制を補完する階級協調攻撃であり、改憲・戦争絶対反対どころか安倍政権を支えるものだ。
 韓国では、全教組がゼネストに立ち上がり歴史教科書の国定化を阻んでいる。日本でも教組がゼネストに立ち、朝鮮侵略戦争を阻止しよう。

職場で団結し副教材拒否を

 安保国会決戦では日教組の動員指令をはるかに超えて教育労働者が国会前に駆け付けた。教育労働者はいざとなったら必ず立ち上がる。そして新自由主義による非正規職化と教育破壊の上の戦争教育攻撃は、「教え子を再び戦場に送るな」と闘ってきた教育労働者の誇りをかけた根底からの決起を呼び覚ます。
 東京都教育委員会の教員用指導資料には「個人的な主義主張を述べることは避け(る)」「授業で使用する教材等を事前に校長等の管理職に確認した上で指導」と書かれているが、現場では「自由にものも言えない授業が『主権者教育』なのか。やっていられるか!」と罰則に尻込みするどころか怒りが噴き出し、闘いを求めている。
 改憲・戦争阻止の攻防点は職場だ。職場の団結で「副教材使用拒否」を闘いとろう。組合として闘えば阻止できる。この中からストで闘う教組をつくろう。
(藤村路子)
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