マイナンバー 公務員への強制を導水路に制度拡大・カード義務化狙う 労働組合が絶対反対で闘おう

週刊『前進』04頁(2715号02面02)(2016/01/18)


マイナンバー
 公務員への強制を導水路に制度拡大・カード義務化狙う
 労働組合が絶対反対で闘おう

(写真 マイナンバー制を暴き団交を報じる「日刊動労千葉」15年12月3日号)


 マイナンバー制に反対し労働者の番号収集や個人番号カード取得の強制を許さない労働組合の闘いが広がっている。マイナンバー制は戦争法と完全に一体だ。1億3千万人の未来にかかわる。生まれたばかりの乳児を含め全員に番号を付けて国家の管理下に置き、労組破壊と治安強化、徴税・取り立ての徹底と社会保障解体、そして国家総動員と徴兵制まで狙う攻撃だ。戦争・改憲への怒りを国鉄決戦と7月選挙決戦で爆発させ、マイナンバー制廃止まで闘いぬこう。

返送・受け取り拒否が1割に達し窓口大混乱

 マイナンバー制は1月時点でボロボロだ。
 番号通知カードは全国の1割、558万世帯に渡らず返送された。単純計算で1250万人分。長時間・変則勤務が社会全体を覆い、夜間や休日でも受け取る人がいないすさまじい現実ゆえだ。
 受け取り拒否も膨大に出た。沖縄では12月19日集計だけで738世帯に上る。それは安倍政権の戦争と辺野古新基地建設への怒りとひとつだ。全国の世論調査でも積極的賛成はほとんどない。
 統治の危機だ。国は全国の自治体に「書類に番号記入がなくとも今まで通りの柔軟な対応」を指示。1月8日、財務省は保険料控除や配偶者特別控除の申請書など番号記載をあらかじめ省略する書類の一覧を公表した。
 それでもマスコミが「番号が必要」とあおっているため、全国の自治体は年末の超超勤に加え4日から大混乱に陥っている。千葉県のある市役所では通知カードをもらいに来た住民に「仕分けが済んでいないから2~3週間待ってくれ」と対応。混雑で3時間半待ちとなった区役所もある。
 さらに個人番号カードの発行が加わる。転出入や税、子育て・福祉など最大の繁忙期業務が破綻することは明らかだ。怒りが職場に満ちている。

番号不記載でも不利益なし

 昨年10月、中小企業団体の申し入れに、各省庁は「書類に個人番号記載がなくても受け取るし罰則も不利益もない」と回答した。企業が労働者の番号を集めたら管理義務が発生し、違反したら重罰が科せられるため「何もしないのが最善」という声が広がっている。
 当然だ。そもそも08年3月の住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)訴訟の最高裁判決で「国家による個人情報の一元管理は違憲(憲法13条違反)」と確定。それをすりぬけるためにマイナンバー法は「番号提供を求めることができる」とするだけで、番号提供を強制することはできないし、どんな申請書類への記入も強制することができない。不利益取り扱いは違法行為だ。

非正規職始め番号集まらず

 企業での労働者の番号収集が進んでいない。
 「マイナンバーを提出しないアルバイトがどれだけ出るか読めない」。年賀状業務で短期バイト13万人を雇う日本郵政が悲鳴を上げている。アルバイト10万人の牛丼チェーン「すき家」などのゼンショーも同じだ。12月10日の日経新聞は、セブン・イレブンのグループ企業10万人(大半が非正規職)の番号収集は3割だと報じた。「超低賃金で食っていけずダブルジョブ・トリプルジョブに追い込まれた上に番号で縛り付けられ丸裸にされてたまるか」という労働者の怒りの表明だ。

ナンバー制拡大のため公務員「身分証」義務化

 追いつめられた安倍政権は公務員の「身分証」として個人番号カードの取得と所持を強制することを導水路に、マイナンバー制拡大を必死で進めようとしている。戦争への国家総動員体制づくりのための国民総背番号制の本性がむき出しだ。
 4月から国家公務員がICチップと顔写真入りの個人番号カードを身分証として携帯することが労働組合の屈服のもとで違法・不当にも義務付けられた。さらに総務省から全国の自治体職員に個人番号カードの取得を促す通知が出て、呼応する当局の動きが始まった。
 労働者が事業所で個人番号の収集に応じたらそれで終わりではない。公務員を水路に個人番号カードを普及させることで次は全住民に義務化することまで狙われている。
 健康保険証やキャッシュカード、スイカ、図書館カードまで一体化されたら、全資産と健康状態、日々の行動、思想傾向まで丸裸にされる。昨秋から「オリンピック警備」を口実に都庁入り口ゲートで職員IDカードが必要となった。これが個人番号カードに置き換わるなら、あらゆる施設の出入記録がため込まれる。カード作成で集められた顔写真は15年間保管される。「治安のため」として駅や街頭のビデオカメラによる顔認証システムでの使用も準備されている。改憲攻撃の核心=「緊急事態条項」を先取りし実行する攻撃だ。

番号強制を許さない!労組の闘いが始まった

 労働組合の絶対反対の闘いで、マイナンバー制を廃止に追い込もう。
 12月3日付「日刊動労千葉」は、動労総連合の団交でJRが「ナンバーの登録は強制できない」「登録しないことで不利益はない」と回答したことを報じ、「労働組合としてこんな制度を認めることは絶対にできない。制度廃止まで断固として闘いぬこう」と訴えた。さらに動労西日本は12月18日、番号登録を義務付ける就業規則変更をさせない回答も引き出した。
 全職場で闘いの火の手を上げよう。非正規職も含め労働者の番号収集や番号カード取得の強制を許さない闘いだ。闘おうとしない執行部に連名で申し入れ、労組全体の闘いにしよう。区職ではマイナンバー窓口専門の任期付職員の導入に反対し「ストで闘おう」という声が上がっている。宣伝を強化し職場全体の取り組みとするなら、「悪法も法」「闘っても無駄」と屈服を迫る連合や全労連の体制内幹部の裏切りを暴き、闘う団結を取り戻すことができる。

自治労本部の対応許せない

 自治労本部は「(資本主義の)持続可能な社会のために」と称してマイナンバー制を率先して提唱してきた。1月末自治労中央委員会の議案でも「個人情報保護の厳格な徹底と国民の周知と理解を深め」「(インターネットによる)自己情報へのアクセス権の確立が実効されるよう監視」するとした。現場がマイナンバー業務を押し付けられて超過重労働に苦しみ、短期雇い止めの職員が大量に採用されて全面民営化・外注化・総非正規職化の突破口とされようとしているにもかかわらず、あくまで制度を存続させようとしているのだ。本当に許しがたい。
 戦争・改憲と一体のマイナンバー制攻撃への怒りが全職場に満ちている。誰ひとりとしてマイナンバー制がいいと思っていない。だから労働組合の闘いが決定的だ。現場の怒りを結集し、マイナンバー制廃止まで闘いぬこう。動労総連合建設を進め、ストライキで闘う労働組合を無数につくりだそう。
(大迫達志)

このエントリーをはてなブックマークに追加