ふくしま共同診療所 開院3年の報告会が大盛況 矢ヶ﨑氏(琉球大学名誉教授)が特別講演 命を守るため闘い続けよう

週刊『前進』06頁(2711号05面01)(2015/12/21)


ふくしま共同診療所
 開院3年の報告会が大盛況
 矢ヶ﨑氏(琉球大学名誉教授)が特別講演
 命を守るため闘い続けよう

(写真 ふくしま共同診療所の布施幸彦院長のパワーポイントを使った報告に熱心に聞き入る【12月13日 郡山市】)

(写真 質問に答える矢ケ﨑さん、布施さん)


 12月13日、郡山市のビッグアイ大会議室で、ふくしま共同診療所主催の「福島第一原子力発電所の爆発事故から4年と9カ月/『安全・安心』キャンペーンと『放射能の影響は考えられない』を問う/ふくしま共同診療所報告会in郡山」が開かれた。12年12月の開院から3年。今回も100人を超える参加者の多くが地元住民で、診療所の地道な活動が幅広い共感と支持を生み出していることを示した。
 最初に琉球大学名誉教授の矢ケ﨑克馬さんが講演した。テーマは「内部被ばくの危険を隠し続ける原発利益共同体」だ。

絶対許せない内部被曝隠し

 「国際放射線防護委員会(ICRP)は1950年の発足以来一貫して、被曝を住民に押し付けている民間機関。一民間機関の勧告を各国が法律などに取り込み放射線防護の基準をつくっている。ICRPの『防護の3原則』(正当化、最適化、線量限度の適用)が大問題です。最適化とは『経済的社会的要因を考慮して合理的に達成可能な限り低く防護する』。これがALARA(As Low As Reasonably Achievable=「合理的に達成可能な限り低く」)精神です。電力会社や政府の負担が重くならない範囲で防護するというもので、人の被害を防止するものではありません」
 しかもこれがICRP2007年勧告でさらに改悪された。「07年以前の線量限度は年1㍉シーベルト。しかし07年勧告で、国の法律は1㍉シーベルト以下なのに、年20〜100㍉の被曝が許されるとした。結果、住民は被曝させられっぱなし。例えば野口邦和日本大学准教授は著書『放射線被曝の理科・社会』で、このICRP勧告に沿って〝事故が起こった時には線量限度を適用してはだめだ〟と言っています」と批判した。
 そして福島原発事故が起きた。「20㍉シーベルトで住民を帰還させ、何もなかったように原発を再稼働させるのは、日本政府だけの思惑ではない。国際的なバックアップがある。チェルノブイリ法で移住義務ゾーンだった年5㍉超の地域に福島では約100万人が住み生産活動をしている」
 最後に「汚染地域の中に住む者も外に住む者も『命を大切にしよう』を絶対に揺るがせにできないスローガンとして力を合わせよう。放射線の怖さを学習し、すべての人間の命を守るために闘っていきましょう」と結んだ。被曝と帰還の強制が国際的な原発利益共同体により行われていることを鋭く暴く講演に、参加者は熱心に聞き入った。
 次にふくしま共同診療所の布施幸彦院長が「甲状腺がん多発と健康被害に向き合う医療を!/ほんとうに放射能の影響はないとする診療でいいのか?」と題し報告した。まず14年の受診者数が前年と比べて約千人増えたこと、仮設住宅健康相談会も15回を数えたことなどを報告。「今、福島で問題となっていること」として小児甲状腺がん多発や帰還強制などを挙げ「『年間20㍉シーベルトでも家に帰れ』という方針で、18年3月には避難者への月10万円の精神的賠償も打ち切る。金は一切出さないということです」と弾劾した。

健康被害に向き合う医療

 さらに「小児甲状腺がんおよび疑いが153人になった。2巡目の本格検査で見つかった39人のうち37人は、先行検査で『問題なし』とされたA判定だった。先行検査から2〜3年で、何もなかった人ががんになっている」「しかし県医師会は開業医を対象に、『放射能の心配はいらない』と患者を説得させるための研修会を行った。福島市の研修会では、日本民医連のわたり病院の斉藤紀医師が『100㍉シーベルト以下の放射能の影響は極めて軽微で心配することはない』と述べた」と批判した。
 まとめとして「放射能による小児甲状腺がんは今後も増加していくとみるべき。がんだけでなくさまざまな病気が生じようとしている。『内部被曝・低線量被曝による健康被害は生じる』という立場で今後も診療を行っていきます」と結んだ。
 続いてNAZEN事務局が「保養の取り組み」を特別報告。ふくしま共同診療所とつながり保養に取り組む団体が全国で増えていると報告した。
 質疑応答では、食物について「1㌔あたり100ベクレル以下」とする国の安全基準への不安や、汚染された土地を放置する行政への怒りの声など、日々被曝と向き合い生きる労働者・住民の切実な質問が続いた。動労福島の橋本光一委員長は、JR郡山総合車両センターにおける被曝労働との闘いを報告した。
 最後に診療所の杉井吉彦医師がまとめを行い、「県の甲状腺検査に民間の医療機関もできるようになり、私たちも申し込んだが、いまだに検査に参加できない。県は『甲状腺の被害は出ないという立場に立っていただかないと参加できない』と言う。これが福島の医療の現実です。今後も診療所の考え方を広く訴えていきます」と述べた。
 「命と健康を守る診療所」の活動が住民に切実に求められていることを示す報告会だった。ふくしま共同診療所への支援をさらに広げよう。

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