生活保護基準の引き下げで奪われる貧困層の命! 団結し「非正規化・貧困」と闘おう

週刊『前進』08頁(2710号04面01)(2015/12/14)


生活保護基準の引き下げで奪われる貧困層の命!
 団結し「非正規化・貧困」と闘おう

(生活保護は「労働者9割非正規職化」を打ち出した95年日経連報告後に急増し、戦後最大を更新し続けている)


 貧困ゆえの痛ましい事件や行政による過酷な取り立てが後を絶ちません。安倍政権による生活保護基準(最低生活費)引き下げが命を奪っています。生活保護を受けていない労働者も賃金や生活の「最低水準」を下げられ一層劣悪な非正規労働に駆り立てられています。貧困の強制と非正規職化は戦争・改憲と一体の階級戦争です。怒りを爆発させ、16春闘ストを闘いましょう。

生活保護申請を断られて心中、父母が亡くなる

 11月22日、埼玉県深谷市内の女性(47)が車に両親を乗せて利根川に飛び込み、母親(81)と父親(74)が亡くなりました。女性は低体温症の状態で病院に搬送され、殺人などの容疑で逮捕されました。父親は10月までアルバイトで家計を支えていましたが仕事ができなくなっていました。生活保護を申請したものの「緊急性なし」とされ、「生活が苦しく認知症の母の介護に疲れた。父が『死にたい』と言うので3人で車に乗り川に入った」と話していると報じられています。
 10月27日、茨城県那珂(なか)市で80代の祖父母と特別支援学校に通う孫娘(15)の3人が住宅火災で亡くなりました。働き手は18歳の孫娘だけで電気料の支払いが滞り、電気を止められて明かりにロウソクを使い、それが火元となったと見られています。
 行政による取り立ても過酷です。広島市は07年から生活保護費の過払い分を毎月の支給額から「天引き」する違法徴収を行っていました。自主返還が原則であるのに、天引きは総額8億円に上るという。天引きされた一人、50代の男性は妻と娘の3人家族で断続的に生活保護を受けており、10年から過去の過払い分として毎月4千円を天引きされていました。当局は「天引きでなければ返還のたびに手続きが必要。事務手続きの簡素化や受給者の利便性も考えて」と説明していますが、月4千円は少ない金額ではありません。
 生活保護世帯は9月に過去最多の162万9598世帯になりました。高齢者世帯が初めて80万世帯を超え、母子世帯も10万4723世帯です。非正規職労働者が全労働者の4割に達し、低賃金化と年金削減が貧困を加速させています。
 生活保護が必要でも申請できなかったり、排除されたりする人が増え続けています。原因の一つが生活保護を担当するケースワーカーの大削減と非正規化です。1人で80世帯が基準とされるのに、大阪市では1人が高齢者380~400世帯以上を担当し、家庭訪問は非正規の嘱託職員が年2~5回だけという状況です。
 さらに実現困難な就労努力を課して「能力を活用していない」と申請を却下したり、女性に「風俗業」への就労を求めたり、200円にも満たない金額で「不正受給」とした例もあります。あらゆる手法で排除しようとしているのです。こんなことが職員の「業績」として評価されることなど絶対に許されません。

「最低限の生活水準」引き下げで進む賃金破壊

 安倍政権は労働者階級全体の「最低限の生活水準」を引き下げ、それをもテコに一層劣悪な非正規・超低賃金労働に駆り立てようとしています。社会保障解体は、20%台への法人税削減や消費税10%化と一体の「1%」の資本家階級の攻撃です。怒りの爆発は不可避であり、絶望的危機にあるのは安倍の側です。
 生活保護基準の引き下げは重大な攻撃です。保護世帯は「最低生活費」として保障される金額が下がり、受け取る金額が減ります。以前なら保護を受けられた世帯が排除されます。衣食・水光熱費など生活扶助の基準額が13年8月、14年4月、15年4月に引き下げられました。多くの世帯が数千円から1万数千円の減額となり、消費税8%化がさらに生活を直撃しています。越年資金の期末一時扶助も削られ、平均7・3%、最大10%という大幅な減額です。
 7月から住宅扶助の限度額が下げられました。低家賃の住居へ引っ越すよう指導され、新たに生活保護を受ける世帯は、より安い物件を探すことになります。10月から灯油代など暖房費の冬季加算も減らされました。寒冷地の旭川市、青森市、秋田市などの単身世帯では、昨冬は11月から3月まで月2万2080円の加算だったのが、今冬は10月から4月まで月1万2540円になり、総額で20%の削減です。
 これらの不足分は、命にかかわる出費にしわ寄せされます。今夏の生活保護受給者や困窮者の熱中症死の多発もけっして偶然ではありません。
 14年7月施行の改悪生活保護法で、福祉事務所の調査権限が強化され、扶養義務者や同居の親族の収入・資産も報告を求めることができることになりました。扶養義務の強化で、保護の必要な人が保護を申請しない、保護を受けられない事態に追い込まれています。さらにマイナンバー制で全情報を掌握し、社会保障の解体を一気に進めようとしているのです。
 影響は労働者全体に及びます。生活保護の収入基準は、住民税の非課税限度額や就学援助などの基準とされ、住民税が非課税か否かは医療、介護、福祉、教育の線引きに使われ、負担減免や給付の対象になっていた世帯が外されます。最低賃金も保護基準が参考とされ制動がかかります。
 15年4月施行の生活困窮者自立支援法は「福祉から就労へ」を掲げて受給者に就労を義務づけ、雇用者責任や最低賃金、労働法が適用されない有償・無償のボランティア労働を強制しようとしています。労働者全体を「工場法以前」の状態に突き落とすテコにしようとしているのです。
 怒りが広がっています。「生活保護の人たちは何もしないでお金をもらえていい」「もっと厳しくしろ」といった分断攻撃などもはや成り立ちません。労働者階級全体に対する総非正規職化と貧困、露骨な大衆収奪の攻撃との決戦の時です。

非正規職撤廃・一律大幅賃上げ掲げ16春闘へ!

 新自由主義が超低賃金の非正規職を大量につくり出しました。人びとの生活を支えるはずの自治体業務が変質し、社会保障費の削減が人を殺しています。大恐慌が一層の貧困を強制し、大増税が労働者階級を直撃しています。「不正受給」キャンペーンまでやって福祉を切り捨て、人びとを死に追いやっています。
 帝国主義の戦争と同じく、1%の資本家階級の利益のために、労働者階級から命を奪う階級戦争の現実です。妥協や政策変更の幻想の余地などありません。労働者の闘いで新自由主義を倒し、すべてを奪い返す時です。
 日々の生産を担い、社会を成り立たせている労働者が主人公となる社会へ、動労総連合建設を進め、ストで闘う階級的労働組合をつくり出しましょう。16春闘はゼネストで安倍を倒す闘いの始まりです。非正規職撤廃・一律大幅賃上げをかけて春闘ストに立ち、国鉄・参院選決戦勝利へ進撃しましょう。(大迫達志)

------------------------------------------------------------
▼生活保護 以下の8種類からなる。①医療扶助、②生活扶助(衣食、水光熱費など)、③教育扶助(義務教育を受けるのに必要な扶助)、④住宅扶助、⑤介護扶助、⑥出産扶助、⑦生業扶助、⑧葬祭扶助。これらの合計が最低生活費であり、ここから収入を引いた額が実際の支給額となる。

このエントリーをはてなブックマークに追加