前進社国賠高裁判決 押収不当を一部認める 違法な捜索にさらに反撃を

週刊『前進』06頁(2708号06面01)(2015/11/30)


前進社国賠高裁判決
 押収不当を一部認める
 違法な捜索にさらに反撃を


 11月26日、東京高裁第2民事部(柴田寛之裁判長)は、09年10月23日の前進社への家宅捜索で押収した押収品のうち、9点の差し押さえを違法とした一審判決(14年10月31日)を支持し、被告東京都(警視庁)の控訴を棄却した。
 これは、警視庁による障害者作業所「オープンスペース街(まち)」に対する「詐欺」デッチあげ弾圧の粉砕と、スパイ摘発を口実とした全学連4学生に対する「監禁致傷」デッチあげ弾圧粉砕に続く勝利であり、11月労働者集会が切り開いた勝利である。また、11・13パリ襲撃事件に衝撃を受けて、「対テロ」で労働者階級に対する階級戦争攻撃を仕掛けてきた日帝・安倍政権の出鼻をくじく勝利でもある。
 しかし他方で高裁判決は、警視庁が違法に押収した千点以上のメディア類(記録媒体)を含む大量の押収については、一審判決を踏襲して適法であると開き直った。
 このときの捜索で警視庁は、革共同に対する違法な情報収集とともに、機関紙『前進』などの発行を妨害するために、証拠になり得ないメディア類を無差別に押収したのである。
 このような違憲・違法な捜索差し押さえを断じて許すことはできない。違法な捜索差し押さえに抗議するのは立会人として当然のことである。それを百八十度転倒させて、一審判決は、「前進社内は騒乱状態だったから、内容を確認しないで差し押さえてよい」と指示した捜索責任者・川島のウソの供述に依拠して適法とした。
 高裁判決は、この一審判決をさらにエスカレートさせて、「(前進社内は)捜索差押開始当初から喧騒(けんそう)状態にあり」と決めつけ、「(立会人が)証拠物の物理的損壊をはじめ、廃棄や隠滅の具体的危険性が認められる」とまで言い切って一審判決を補強した。まったく許せない。しかし、それでも市販の音楽CDやSDカードのアダプタ、アンテナ等の違法とされた9点については一審判決をひっくり返すことはできなかった。
 一見して証拠物たり得ない物まで押収したという事実こそ、違法な捜索・押収であることを物語っている。捜索の口実とした法政大での2学生に対する公安条例違反がデッチあげなのだから、最初から前進社に証拠物などあるはずがないのだ。捜索差し押さえ自体が違法であることは明らかである。
 一審判決では原告6人に対して各5万円、合計30万円の損害賠償を東京都(警視庁)に命じた。ところが高裁判決は、立ち会いの責任者にのみ20万円の損害を認め、それ以外の原告の請求を棄却した。「押収物は前進社で共同管理されているから、原告らは権利を侵害され、精神的苦痛を被っている」と認めつつ、立ち会いの責任者以外の損害賠償を棄却する論理破綻を露呈している。
 しかし、09年に前進社国賠を提訴して以来の闘いが、一部とは言え、警視庁の捜索差し押さえは違法だとする高裁判決をかちとったことは決定的である。今後とも不当捜索は絶対に許さない。徹底的に闘う。
 労働者階級のゼネストと国際連帯の闘いをさらに発展させ、2016年決戦に進もう。

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前進社国賠 2009年10月16日の法大解放闘争に対して、警視庁公安部は東京都公安条例違反をデッチあげて学生を逮捕した。これを口実に23日には前進社に家宅捜索に入り、メディア類(パソコンなどに使う記録媒体)1223点を含む1418点もの大量の物品を中身の確認もせず無差別に押収した。この前代未聞の権力犯罪に対して、国家賠償請求という形で徹底的に追及・弾劾する闘いがこの訴訟だ。

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