マイナンバー制廃止へ 通知カードとカード申請拒否し労働組合の力で番号提供反対を

週刊『前進』06頁(2708号03面01)(2015/11/30)


マイナンバー制廃止へ
 通知カードとカード申請拒否し労働組合の力で番号提供反対を

(写真 通知カード【上部】と個人番号カード申請書【下部】。個人番号カードは絶対に申請しない)


 マイナンバー制は廃止に追い込める! 通知カード配達の現場で怒りが噴き出している。郵便労働者は大変な超過勤務や休日出勤を強いられている。住民の抗議の「受け取り拒否」も広がっている。自治体職場は返送物の山で押しつぶされそうだ。これから番号の提供をめぐって会社や役所の窓口で問題はさらに爆発していく。マイナンバー制は戦争のための「国民総背番号制」であり、社会丸ごと民営化・総非正規職化を一気に進める。労働組合が先頭で闘い、粉砕しよう。

郵政や自治体は業務破綻

 マイナンバーの通知カード(個人番号と氏名、住所、生年月日、性別が記載されている)をめぐり矛盾が爆発している。
 11月18日時点で郵便局に留め置かれている通知カードが223万通、自治体に返されたのは84万通に上る。その後さらに桁違いに膨れ上がっているのは間違いない。19日時点で配達完了・交付はやっと全体の28・2%。日本郵便は、全世帯に行き渡るのは「お歳暮の配達や年賀状の受け付けなどで忙しくなる12月にずれ込む」とし、高市早苗総務相は12月20日ごろまでかかると言い出したが単なる希望でしかない。
 郵便局では通常業務や年賀営業に加えて5672万7千通(!)もの簡易書留を押し付けられ、残業や休日出勤を強いられている。夕方ラッシュ時の配達で事故の危険が増すとともに、誤配の大変な重圧がかかっている。配達先では膨大な数の不在とともに、マイナンバー制に反対の意思を明確にした「受け取り拒否」も多数出ている。
 自治体には通知カードが続々返送されて積み上がっている。北海道では11月16日時点で10万9千通。函館市は想定の5倍の8200通に上り、戸籍住民課の職員約30人が返送分の仕分けをする。週末は休日出勤。それでも追いつかず、年内に全住民に行き渡らなければ児童手当や雇用保険など各種手続きで番号提示を求める来年1月の運用開始に間に合わない。
 そもそも不達が最初から全世帯の1~2割(=1千万通とも言われる)とされていること自体が破綻的だ。9月読売新聞の調査では、全国99の政令市、特別区、中核市、県庁所在地のうち、不達を10%程度と見ているのが22、東京都港区や大阪市など5自治体は15%、仙台市や新宿区など6自治体は20%、文京区は25%以上と答えている。
 邪悪な意図を隠して「便利になる」と宣伝されている個人番号カード(顔写真付きICカード)の発行手続きが1月から始まる。だが申請はあくまで任意だ。窓口で番号提示を求める業務も始まる。問い合わせや抗議の殺到が予想される。税の確定申告や住所変更、福祉や子育てなどの業務が集中する最大の繁忙期に、まったく新しい複雑な業務が加わる。まともなマニュアルもなく研修も追いつかない。通常業務がしわ寄せを受けることは必至だ。
 当局はこれまで以上の超勤と膨大な非正規職増員でのりきろうとしている。現場の怒りが噴き出し闘いが始まっている。

治安弾圧や徴税徹底狙う

 これほど現場に負担を強いるマイナンバー制はいったい何のためか。
 それは国家権力が全住民・法人を監視し管理する「国民総背番号制」の具体化だ。個人と法人に番号を付け、コンピューターで全情報を管理して治安弾圧や戦争動員、徴税の徹底と福祉の取り上げを狙う。国家が「不正受給や犯罪を取り締まる」などと称して1%の資本家階級の独裁支配のために使う道具だ。
 同時に、自治体を丸ごと民営化・外注化し総非正規職化する攻撃だ。現に安倍の骨太方針は、マイナンバー制で「電子政府化」を一気に進めるとしている。〝個人番号カードを普及させコンビニで用が足りれば役所の窓口はいらなくなる〟〝余った職員は徴税に回す〟と言われている。9割外注化・総非正規職化であり、自治体と自治体業務そのものの根本的な変質が狙われている。
 国家にとってはどれだけ個人情報が流出しようと構わない。マイナンバー法の「番号漏洩(ろうえい)には重罰を科す」とは漏洩自体は防ぎようがないということだ。マイナンバー詐欺も多発しすでに摘発されただけで数百件に上っている。

拒否しても処罰できない

 郵政労働者、自治体労働者を先頭に全職場で議論を巻き起こし、労働組合の絶対反対の闘いにしよう。番号提供拒否をめぐる資本との職場攻防も始まった。裁判員制度と同様、マイナンバー制を廃止に追い込むことはまったく可能だ。
 08年3月、住民基本台帳ネットワークシステム訴訟の最高裁判決は、住基ネットに対する違憲の訴えは退けたが「国家による個人情報の一元管理は違憲」とした。
 そのこともあり、マイナンバー法は「(行政機関などは)個人番号の提供を求めることができる」とするだけで事業者と個人に強制してはいない。提供を拒否したからといって罰せられない。
 役所は雇用保険、健康保険や国民年金・厚生年金などの手続きで、個人番号を記載しない理由が書かれていれば書類を受理せざるをえない。不利益取り扱いは許されない。だから事業所でも当然、雇用主が個人番号の提供を求めても労働者は拒否することができる。

民主党・自治労も推進勢力だ

 むしろ職場で「マイナンバー制とは何か」、時代認識と闘いの路線をめぐる議論を巻き起こし、労働組合として反対して闘うことで団結を強め、職場支配権を取り戻す契機とすることができる。
 安倍政権とともに民主党や自治労本部は、「税と社会保障の一体改革」の切り札としてマイナンバー制を推進し、体制内労組幹部は「悪法も法」だとして「国民総背番号制」と丸ごと民営化に手を貸そうとしている。マイナンバー制に絶対反対し、労働組合を現場労働者の手に取り戻して闘いぬこう。
(大迫達志)

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