「緊急事態条項」新設を突破口に9条改憲を企む安倍と極右勢力

週刊『前進』06頁(2707号04面01)(2015/11/23)


「緊急事態条項」新設を突破口に9条改憲を企む安倍と極右勢力


 日本帝国主義・安倍政権と「日本会議」などの極右勢力は、来年参院選に向けて憲法改悪の攻撃を強めている。その突破口として憲法への「緊急事態条項」の新設が狙われている。フランス・パリでの同時テロ襲撃事件をもって帝国主義の中東侵略戦争が激化・泥沼化し、世界戦争の危機が切迫する中で、改憲攻撃との闘いが焦点化している。

安倍政権はシリア空爆の共犯者である

 11月13日にパリで発生したIS(イスラム国)による連続テロ襲撃事件を受けて、オランド仏大統領はただちに国家非常事態宣言を発令し、米帝やロシアと連携して15日からシリア北部への大規模空爆を開始した。米帝と並ぶ「有志連合」の主力として、イラク・シリアへの無差別空爆で無数の人民を虐殺してきた仏帝は、今や後戻りのない中東侵略戦争の泥沼へと突き進んでいる。
 11・13事件が引き起こされた原因は、何よりも米帝・仏帝を始めとした帝国主義による一連の中東侵略戦争にある。イラク、シリア、アフガニスタン、パレスチナなどでは無数の人民が命と生活を奪われている。シリア難民はすでに400万人を超えた。国連難民高等弁務官事務所は、2014年の統計で難民の数が世界全体で6千万人に達し、第2次大戦後で最悪となったことを受けて、「世界は戦争状態も同然。多くの地域は完全な混乱状態にある」と声明した。また昨年夏のイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への大空爆では、NGOの調査で死者2200人以上(うち4割が女性と子ども)、負傷者は1万人を超え、50万人以上が住む場所を失い避難民となった。
 日帝・安倍政権は、こうした残虐な侵略戦争の明白な共犯者だ。安倍はすでにイラク・シリア攻撃の「有志連合」の一員に日本も加わったと公然と宣言しており、さらに戦争法で本格的な参戦をも狙っている。またイスラエル・ネタニヤフ政権との連携を強め、新型戦闘機F35を始め大量の兵器を輸出しようと狙っているのだ。
 他方で、ISによる無差別テロ襲撃は、この戦争を止める唯一の力である労働者階級の国際連帯を破壊し、労働者自己解放の闘いに敵対する反革命であり、断じて許すことはできない。
 11・1集会の感動的な成功と11・14韓国民衆総決起闘争の地平を全世界に拡大し、労働組合の闘いを軸に命脈の尽きた帝国主義を打倒しよう。戦争・改憲に突き進む安倍を打倒する闘いは、この世界史的大激動の時代における最先端の階級攻防であり、日本革命―世界革命の突破口だ。

憲法を停止しデモもストも暴力的に弾圧

 11・13事件を受け、自民党は「テロ対策」を口実とした治安弾圧の強化へ乗り出している。17日、自民党の高村正彦副総裁や谷垣禎一幹事長らは、「テロ撲滅」のための国際条約批准に向けて「共謀罪」新設に本格的に着手すると明言した。
 これに先立ち、安倍は10、11日の衆参両院予算委員会で改憲の必要性を強調し、特に「緊急事態条項」の新設から改憲に着手する考えを示した。自民党憲法改正推進本部は今年2月の時点で、緊急事態条項など3項目から改憲する案を出しており、同事務局長の礒崎陽輔は「改憲を国民に1回味わってもらう。『怖いものではない』となったら2回目以降は(9条など)難しいことをやりたい」とその狙いをあけすけに語った。
 だが、ここで重要なことは、緊急事態条項をめぐる攻防は単なる9条改憲への「前哨戦」ではなく、これ自体が改憲阻止決戦の本番だということだ。戦争法阻止の1千万人決起を発展させる巨大な階級決戦として、労働組合を先頭に改憲=緊急事態条項新設阻止の壮大な闘いを切り開こう。
 では、安倍が新設を狙う緊急事態条項とはどういうものか。自民党改憲草案はその第98条で、いわゆる「緊急事態」を「わが国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態」と定義する。そして政府が閣議決定で「緊急事態」を宣言すれば、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」(99条)とされ、「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、……国その他の公の機関の指示に従わなければならない」(同)とされる。
 すなわち、戦争や国内階級闘争の内乱的激化といった事態に対し、ただちに憲法を停止し、むき出しの国家暴力をもって対処するということだ。99条では、「この場合にも……基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」などと欺瞞(ぎまん)的なただし書きを付けているが、これはむしろ緊急事態宣言のもとでは基本的人権すら破壊されるということを示している。デモ、集会、ストライキなども国家暴力で鎮圧する。まさに戦前の戒厳令の復活である。

16年参院選決戦の勝利で改憲阻止を!

 「日帝の帝国主義としての最大の破綻点は、戦後憲法体制下の労働者支配の危機性と、安保・沖縄問題、すなわち日米安保同盟関係の矛盾と危機にある。世界大恐慌下でその矛盾と危機はいよいよ爆発点に達していく」(革共同綱領草案)
 ここで言う「戦後憲法体制下の労働者支配の危機性」とは、憲法9条の存在と並んで、非常事態令または戒厳令に相当する規定が憲法に存在しないという点に最も集中的に表れている。これは日帝にとって「国家の基本法に戦争と内乱に対処する規定が存在しない(その十分な体制もつくれない)という、帝国主義としての存立の根本にかかわる致命的な弱点」(綱領草案解説)だ。この弱点を抱え込んだままでは本格的な戦争もできない。9条改憲と非常事態条項の新設は、まさに表裏一体なのだ。
 去る11月10日、安倍政権を支える日本最大の極右団体・日本会議が日本武道館で「今こそ憲法改正を! 1万人集会」を開き、その基調講演で桜井よしこは「来年7月参院選を目標に力の結集を」と叫んだ。この日帝の危機に駆られた改憲攻撃を迎え撃ち、16年決戦の巨大な高揚を切り開こう。
(水樹豊)
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