韓国映画「明日へ」 イーランド闘争モデルに描く 非正規労働者の解雇撤回闘争
週刊『前進』06頁(2706号06面04)(2015/11/16)
韓国映画「明日へ」
イーランド闘争モデルに描く
非正規労働者の解雇撤回闘争
韓国の大手スーパーマーケット「イーランド」の非正規女性労働者が、突然の解雇通告に組合をつくって反撃した510日間の闘い(2007年〜08年)を覚えている人も多いと思う。
映画「明日(あした)へ」は、その闘いをモデルに、非正規の女性労働者たちの闘いを描いた感動作である。それが韓国で大ヒットしたという。韓国の有名女優たち、そして日本でも人気のグループEXO(エクソ)のリードボーカルが本名のドギョンスで出演している。
原題は「カート」。スーパーのカートがこんな使われ方をするのかと驚いてしまった。要所要所で重要な意味を持って出てくるカートが、物語全体を象徴している。
スーパーのレジ係として5年間無欠勤で働いて「正社員」を約束されたソニ(ヨムジョンア)は、サービス残業にも耐えて、高校生の息子と幼い娘を育てるために必死に働いている。
そんなある日、一斉に解雇通告を受ける(イーランドの解雇者は500人に及んだ)。会社が店舗を外注化するためにとった措置だ。そこにはソニの名も。
この映画が素晴らしいのは、団結の力強さを正面から描いていることである。それぞれに苦悩や葛藤があり、動揺も生まれるが、人間扱いされないことへの怒り、労働者としての誇り、そして仲間への信頼と友情があり、激しい闘いの中で団結は揺るぎないものになる。占拠した職場(レジを中心としたスーパーの売り場)が、歓喜と笑顔の祝祭空間に逆転するところは労働者の解放闘争の真骨頂を示している。
正規職の男性労働者の中からも反乱が起こり、それを理由に解雇され、組合に合流してくるという闘いの広がりも描かれている。
映画は仲間と家族を愛するソニを中心に進行する。息子のテヨン(ドギョンス)を守る力強さは、闘争での頑張りによって獲得されたもので、それが息子にも伝わる。その目を見張るようなたくましい変わりようは、労働者階級の自己解放性を絵に描いたように見せてくれる。
筆者は3年ほど前、イーランド闘争を闘った女性労働者の話を聞く機会があった。彼女は、「政権・警察・会社が一体となってつぶしにかかってきたが、次々と拘束されても第4次の執行部までつくって闘った」と語っていた。不屈の闘いが団結を拡大し、新しい指導部を生み出すのは現実にあったことなのである。その人は今、動労千葉が交流を続けている民主労総ソウル本部の常任として働いている。
映画はイーランド闘争を総括するものではないが、その中からくみ上げるもの、語り継ぐべきものを正攻法でまっすぐに伝えている。一言で言えば、外注化・非正規職化と闘う世界中の労働者への応援メッセージだ。
決起する女性労働者たちの側に立ち、ストレートに共感を押し出している映画作りは、今日のパククネ政権打倒の全人民的な闘い、ゼネスト情勢とつながっていると言えるだろう。多くの人に見てもらいたいと思う。
(新谷洋介)
〔2014年制作。プジヨン監督。104分。東京・TOHOシネマズ新宿などで公開中〕