労働者と農民の根底的怒りでTPPを絶対に粉砕しよう!

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週刊『前進』06頁(2706号05面03)(2015/11/16)


労働者と農民の根底的怒りでTPPを絶対に粉砕しよう!

米日帝の延命かけた対中国のブロック化

 10月に「大筋合意」が発表されたTPP(環太平洋経済連携協定)の協定案文が11月5日、全文公表された。
 協定案は英文で本文が30章600㌻、付属文書まで含めると1500㌻の膨大なものだが、TPPの反人民的な内容を赤裸々に示している。
 TPPとは第一に、大恐慌下で没落を深める米帝と日帝が、自らの延命と起死回生をかけて展開するアジア・太平洋地域への巨大なブロック化政策であり、その狙いは何よりも中国と対抗してこの地域の市場と資源を独占することにある。
 この間、南中国海の南沙(英語名スプラトリー)諸島をめぐる米中の軍事対立が一線を越えて激化している。9月の米中首脳会談で習近平を屈服させることに失敗した米帝オバマは、10月27日から「航行の自由作戦」と称する南中国海へのイージス駆逐艦派遣に踏み切った。中国の軍事的・経済的台頭に危機感を募らせる米帝内強硬派は、「南シナ海の諸島のために中国と戦争をする決断をしない限り、中国の動きは止められない」(11月5日付日本経済新聞)とまで主張し始めた。
 こうした中でTPPは、中国のAIIB(アジアインフラ投資銀行)や「一帯一路(シルクロード経済圏)」構想に対抗するための、安保・軍事政策と一体の争闘戦戦略であり、それゆえ米中間の対立と戦争危機を一層激化させるものだ。
 第二に、TPPは日帝・安倍にとっても帝国主義としての死活をかけた国家戦略であり、そこでは日米間の激しい対立と矛盾をはらんだ争闘戦が展開されている。
 TPPの全体交渉と並行して行われた日米交渉では、農業、自動車、投資などの分野で対立が続き、日帝はぎりぎりまで妥協を拒んだ。しかも今回発表された協定案では、アメリカやオーストラリアなど5カ国との間で協定発行から7年後に再協議ができるよう取り決められており、日米の対立はむしろこれから拡大していくことが不可避だ。
 第三に、TPPは究極の新自由主義攻撃であり、加盟12カ国の支配階級、とりわけ米、日、カナダ、オーストラリアなど主要国の巨大資本を牛耳る「1%」の支配階級が、国境という障壁をも越えて「99%」の労働者人民から極限的に搾取・収奪する強盗同盟だ。それは農業・漁業の破壊や社会丸ごとの民営化、労働法制の改悪、医療や社会保障の崩壊を伴う激しい階級戦争である。それゆえ膨大な数の労働者人民の怒りの爆発と「生きさせろ!」の決起は不可避だ。

農業も医療も労働法制も破壊する攻撃

 TPP粉砕に向けて、以下、発表された協定案のポイントを見ていきたい。(農業分野については本紙2704号農民闘争組織委員会論文参照)
 第一に、「毒素条項」と呼ばれるISDS条項(投資家国家間紛争処理条項)が協定案の「第9章 投資」に盛り込まれた。多国籍企業や投資ファンドが投資先の政府を訴えることで、自らの利益を阻害する法律や制度を撤廃させたり、巨額の補償金を支払わせたりすることが可能となる。
 「反原発政策で損害を受けた」とスウェーデンの原発企業がドイツ政府を訴えた例、「禁煙政策で損害を受けた」としてアメリカのたばこ会社がオーストラリア政府を訴えた例などが知られるが、この訴訟制度を最も積極的に使っているのはアメリカの企業だ。NAFTA(北米自由貿易協定)のもとで米系企業による46件もの訴訟が起こされ、カナダやメキシコが多額の賠償金を払わされている。企業側が負けた事例は一つもない。資本の利益のために一国の法律や制度さえねじ曲げるという、暴力的な新自由主義攻撃だ。

 そして日帝・安倍もまた、この条項を積極的に使って日帝資本の新たなアジア侵略へ道を開こうと狙っているのだ。それは同時に国内で労働法制改悪と外注化・非正規職化を一気に推進するテコにもなる。
 第二に、「第7章 衛生植物検疫」「第8章 貿易の技術的障害」に関係する食品の安全基準の緩和、すなわち「食の安全」の崩壊である。
 日米の交換文書では、日本が食品添加物の認可点数を増やすことを約束している。また現在、手続き中の認可されていない着色料の添加物も、TPPによって認可されることになる。遺伝子組み換え食品の表示も廃止されようとしている。
 第三に、「第10章 国境を越えるサービスの貿易」にかかわる医療・保険分野だ。
 協定案では、「サービス貿易」や「金融サービス」の市場は開放するが、「社会事業サービス(保健、社会保障、社会保険等)」や「社会保障に係る法律上の制度の一部を形成する活動・サービス(公的医療保険を含む)」などは除外しているとして、「国民皆保険、公的薬価制度の仕組みの改悪」への懸念はないと強調している。
 しかし、これについても日米間の「医薬品及び医療機器に関する手続きに関する附属書」で、公的保険への医薬品・医療機器の収載やその場合の公定価格について、審議会などを通じて外国企業の意見を反映する制度や、決定事項への異議申し立て制度の設置をアメリカ側が要求している。
 附属書は一部マスコミ以外には公開されていないため最終案文はいまだ不明だが、アメリカのこの提案が採用されたと見て間違いない。TPP協定本体で何を言っていようと、実質的に公的薬価制度の仕組みの改悪に道が開かれ、それは国民皆保険制度の崩壊をもたらす。附属書という形で批判の声が上がるのを避けようとしているのだ。
 また先述のISDS条項で日本の健康保険制度や薬価決定のあり方が大手製薬会社から提訴されれば、これらの制度が撤廃される動きになる。むしろ安倍はこれをテコに医療制度改悪を推進しようと狙っているのだ。
 国民健康保険対象者が激増し、健康保険制度はすでに危機に陥っている。医療・保険制度の破壊を許してはならない。

三里塚と全国農民会議を先頭に闘おう

 また「第18章 知的財産」では、新薬のデータの保護期間は8年となった。当初は米帝が大手製薬会社などの強い意向を背景に12年のデータ保護期間を要求したが、新興国側は5年を要求し、最終的に8年で決着した。
 いずれにせよ、薬価の大幅な高騰は不可避となる。特許切れの安価な「ジェネリック医薬品(後発薬)」で薬価を抑えたいという人民の生命にかかわる要求が、製薬会社の利益のために踏みにじられたのだ。
 だが、こうしたTPPに対して、すでに膨大な数の人民が反対の闘いに立ちあがっている。10月11日には「欧州版TPP」と言われるTTIP(環大西洋貿易投資協定)反対のデモに25万人が決起した。また帝国主義内部の矛盾も深刻だ。TPPは粉砕できる。
 そのために必要なのは、改良ではなく革命の立場だ。日帝と全面対決する闘い以外にTPPを粉砕する道はない。三里塚と全国農民会議を先頭に、階級的労働運動と国際連帯の力でTPPを粉砕し、安倍政権を打倒しよう。
(斉田猛)

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TPP協定案の骨子
・日本はTPP発効7年後から農産物関税について5カ国との間で再協議に応じる。
・相手国の要請で関税撤廃時期の前倒しを検討。
・ISDS条項を明記。
・食品安全基準はWTOに準拠(但し日米の交換文書で食品添加物の認可点数を増やすことを明記)
・医薬品の保険適用や公定価格について外国企業の意見を反映させる制度を検討する。

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