職場復帰まで解雇撤回闘う 有機合成薬品工業解雇撤回裁判/冒頭意見陳述 人間らしく生きられる社会を目指す

週刊『前進』08頁(2705号06面03)(2015/11/09)


職場復帰まで解雇撤回闘う
 有機合成薬品工業解雇撤回裁判/冒頭意見陳述
 人間らしく生きられる社会を目指す

(写真 昨年の10・31工場門前抗議行動)

 10月29日、化学メーカー・有機合成薬品工業株式会社によるいわき合同ユニオンのK君に対する不当解雇撤回を求める裁判が福島地裁いわき支部で行われました。不当解雇から1年間の闘いを経て、青年労働者の怒りを体現するリーダーとして成長と飛躍を重ねたK君の冒頭意見陳述(抜粋)を紹介します。(いわき合同ユニオン・N)

 有機合成薬品工業に対する解雇撤回を求めて、本日の陳述に臨みます。

7カ月で解雇に

 私は大学を新卒で入社し、7カ月で会社から能力不足を理由とされて解雇になりました。しかし、会社側は解雇を正式に言い渡した時でも具体的に何をもって能力不足なのかを答えることができませんでした。
 私は、毎朝30分早く出社し、実験の練習を重ね、正確な試薬や液体の量り取りの技術を身につけてきました。しかし、その技術を実戦で活(い)かす機会は与えられませんでした。
 正確な分析には、熟練の技術を必要とします。大学を出たからといって、すぐにできるようなものではありません。多くの労働者の話を聞くと「学校を出たらまた1年生から始まる」、それくらい仕事の世界は厳しいということと、裏を返せばそれだけ多くのことを会社は指導する必要性も示しています。
 しかし、会社側は業務の簡単さばかりを強調し、それができなかったから「能力不足だ。だから解雇だ」としています。私や労働者の先輩方は自らの仕事に誇りを持っています。しかし、この間の会社側の姿勢は、それを愚弄(ぐろう)するもので怒りを覚えます。
 また、仮に能力の不足があったとしても、再教育によりこれを改善することや、配置転換によって労働者がより能力を発揮(はっき)できる場を見つけることは十分に可能です。しかし、会社側はそれを拒否しどんな仕事をさせても改善されないだろうと決めつけて解雇を強行しました。文書一枚で社長も含む取締役全員が解雇を承認しました。雇用の終了が労働者やその家族にもたらす影響を軽視したものだと言わざるを得ません。

連日の退職強要

 実際のところ、入社1カ月半で指導役による実技指導がほとんどなくなり、1人での実験か自習のような課題がほとんどになりました。1日8時間のうち3時間ほどしか仕事がない日が続きました。そして9月に入ってからは、1日1時間以上の面談が何日もあり、解雇が決定してからは一日中パソコン作業を命じられました。これは、本来の業務とは関係のないものが多く、自主退職を促す手段であると感じられました。連日のパソコン作業や面談によって、私は精神的、肉体的に追い詰められました。
 解雇や雇い止めによって青年が社会に居場所をなくし、引きこもりや自殺が社会問題になっています。一方で、こういった現状に責任を負うべき経営者は、労働者の命や人生を奪っておきながら、処罰はおろか実名も公表されません。
 現在、青年労働者の3分の1が3年以内に離職し、2人に1人が非正規だと言われています。私も含む多くの青年労働者が何百万円の奨学金を背負って、大学での研究も十分にできずに1年近くを就職活動に費やしています。

使い捨て許さぬ

 「ブラック企業」が社会問題になっているように、労働者を酷使し不必要になれば使い捨てにする企業のあり方は、絶対に許されるべきではありません。
 技術を持ったベテランの大量退職や少子化で労働力不足が深刻な中で、次世代を担う青年は本来貴重な存在であるはずです。地球規模での環境破壊や戦争、身近な地域での相次ぐ災害や、原発事故の収束など社会には解決すべき問題が山のようにあります。だからこそ、安定した雇用のもとで青年に熟練の技術を伝え、世界中の知見に触れさせて新たなものを生み出していく必要があると考えます。
 私は、世界や将来の子どもたちのために仕事がしたいと考えて入社しました。私を採用してくれた会社で定年まで勤め上げたかったです。
 しかし、社宅や保険、奨学金といった生活のすべてが、解雇によって奪われました。今の私にできることは、解雇撤回闘争を職場復帰の日まで闘い抜くことです。そして、社内組合を職場で団結して闘う組合に変えたいと考えております。

仲間と団結して

 28年前の国鉄分割・民営化によって解雇された労働者が、不屈に解雇撤回を目指して闘争を続けています。その闘いを金銭よりも解雇撤回と職場復帰にこだわって闘い続けることで、時代や職場や国境を超えて団結を生み出しています。
 私も、いわき合同ユニオンの仲間とともにこの1年間に2回の団体交渉や工場門前、本社前での抗議行動をしてきました。最近は休日に解雇撤回署名の街頭宣伝を行っています。いつも、通りかかる皆さんから「こんな解雇は聞いたことがない。許せない」「頑張って」と声をかけていただき、多数の解雇撤回署名や裁判支援カンパを寄せてくださいます。全国で行われる労働組合の集会でも開催されるたびに、多くの署名やカンパを皆さんからいただきました。解雇撤回署名は714筆に達しました。
 私がこうして裁判ができるのも、街頭で出会った皆さん、継続的に支援してくださる「いわき合同ユニオン支援共闘会議」の皆さん、そして解雇撤回に取り組む陣形をつくってくれたいわき合同ユニオンの仲間のおかげです。
 今日から、この世の中で解雇をはじめ労働者への不当な扱いに立ち上がる人びととともに勇気をもって闘い、労働運動を通して誰もが人間らしく生きられる社会を目指して裁判に臨みます。
(見出しは編集局)
このエントリーをはてなブックマークに追加