新やぐら裁判 〝土地取得は無効〟 NAAの農地法違反を追及
新やぐら裁判 〝土地取得は無効〟
NAAの農地法違反を追及
10月19日、新やぐら裁判の第3回弁論が千葉地裁民事第2部(岸日出夫裁判長)で開かれ、三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、労働者・学生は、〝農地死守〟の決意も固く闘った。
開廷を前に原告NAA(成田空港会社)の代理人が、被告席に反対同盟の萩原富夫さんが座っていることに難くせをつけてきた。言うまでもなく萩原さんは現在、反対同盟事務局の中心を担っており、北原鉱治事務局長が不参加のこの日は反対同盟代表として被告席にいるのは当然だ! 弁護団は猛然と抗議した。裁判長はNAAの肩を持ち「反対同盟の組織構成などは事前に伝えてほしかった」などと言うが、そのくらいは当然知っておくべきことだ。萩原さんが堂々と被告席に座り続ける中で開廷した。
弁護団は準備書面を陳述し、NAAが地主の顔をして、農地ややぐらの明け渡しを迫る資格はみじんもないことを突きつけた。
NAA=空港公団は、1988年に市東東市さん(孝雄さんの父・故人)の耕作地の底地を旧地主から「空港施設に転用する目的で買った」と言い張るが、東市さんが反対同盟の一員として「空港絶対反対」を貫いて畑を耕している以上、転用のめどはまったく立っていなかった。公団は市東家に秘密で買収し、その後十数年間賃借地として市東家の耕作を認めてきた。こんな「買収」は違法・無効だ。
主観的には「転用目的」と言いながら放っておくというのは、農地法第5条違反である。
実際には、農地を農地として売買しており、耕作者である市東さんに無断で第三者が地主から農地を買い取るのは、農地法第3条違反だ。
また、空港公団本社が1996年まで東京にあった事実は、不在地主の農地所有を禁じている農地法第6条に違反している。つまり、耕作者の権利を守る農地法の根本精神にことごとく反する違法を重ねたのだ。
そして、空港公団の用地事務取扱規定第38条には、「取得しようとする土地に賃借権=耕作権などがあるなら、所有者、関係者にこれら権利を消滅させること」と書いてある。〝同意を得て損失補償しろ〟ということだ。ところがNAAは、「これはうちの内規。違反してもかまわない」と恥知らずにも居直った。憲法第29条違反だ!
陳述を終えると弁護団はすかさず追撃を行った。NAAが、農地法裁判ではやぐらの所有者を市東孝雄さん個人とし、この裁判では所有者を反対同盟としている矛盾を指摘し、「どう説明するのだ!」と追及した。
上野至を筆頭とするNAA代理人は、「訂正したんじゃないですかね」(何を?どう?)「本件と別件は関係ない」などと弁解する。「いい加減なことを言うな!」と怒号が傍聴席から浴びせられた。上野はかつて千葉地裁裁判官としていくつかの三里塚裁判で反動判決を下し、退官後にNAAの雇われ弁護士に成り下がった最低の人物だ。岸裁判長はこの「先輩」の窮地を見かねてか「書面で提出を」とNAA側に促し、廷内の怒りを抑えることに腐心した。
次回期日を1月25日として閉廷した。
近くの会場で、伊藤信晴さんが司会を務めて報告集会が開かれた。最初に萩原富夫さんがあいさつし、10・11全国集会の成功を確認し、農地法裁判上告審闘争での奮闘を訴えた。さらに葉山岳夫弁護士を始め弁護団が、法廷での追及内容をていねいに解説し、裁判勝利への決意を明らかにした。最後に各支援団体が連帯発言を行った。全学連三里塚現地行動隊長は、市東さんの農地を死守する決戦に勝利する若々しい決意を述べた。
集会後、反対同盟と支援連は千葉市繁華街で、緊急5万人署名の情宣活動に立ち、軍事空港粉砕、農地死守を訴えた。
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▼新やぐら裁判 市東さんの天神峰耕作地の一角に建つ反対同盟所有のやぐら、看板など四つの工作物の収去と土地の明け渡しを求めて、NAAが反対同盟を訴えた裁判。農地法裁判(上告中)の一審・二審判決ではこれらの物件を「市東さんの所有物」としたが、その誤りを確認訴訟(旧やぐら裁判)で追及され、NAAは一転して反対同盟所有を認め、昨年10月に提訴に及んだ。