共産党は安保条約も容認し「日米共同」で戦争するのか 国会闘争への大裏切り許すな

週刊『前進』06頁(2704号02面03)(2015/11/02)


共産党は安保条約も容認し「日米共同」で戦争するのか
 国会闘争への大裏切り許すな

「共同対処」とは安保の発動

 日本共産党の「国民連合政府」提案は、戦争法成立に怒り、安倍政権を倒す展望がどこにあるかを真剣に考えている膨大な労働者に「戦争法反対の一点で一致」を呼びかけたことで、一見「安倍よりまし」の道を示すものであるかのように装っている。だがその内実は戦争反対とは似て非なるものである。
 前号で共産党・志位の「国民連合政府では『安保廃棄は凍結』『自衛隊は有事に活用する』」という記者会見を断罪したが、重要なことなのであらためて強調したい。
 志位は10・15記者会見で、「日米安保条約にかかわる問題は、連合政府の対応としては『凍結』という対応をとるべきだと考えています。すなわち戦争法廃止を前提として、これまでの条約と法律の枠内で対応する、現状からの改悪はやらない、政権として廃棄をめざす措置はとらないということです」と言った。
 さらに「戦争法を廃止した場合、今回の改悪前の自衛隊法となります。日本に対する急迫・不正の主権侵害など、必要にせまられた場合には、この法律にもとづいて自衛隊を活用することは当然のことです」と述べた。
 そして重ねて記者から「日本有事のさいに在日米軍への出動要請についてはどうするのでしょうか。共産党は反対するということでしょうか」と質問されて、「日米安保条約では、第5条で、日本に対する武力攻撃が発生した場合には(日米が)共同対処をするということが述べられています。日本有事のさいには、連合政府としては、この条約にもとづいて対応することになります」と明言した。
 共産党は「安保廃棄の凍結」について、「安保廃棄」を捨てるのではないと弁明している。「凍結」というからあたかも安保条約そのものが凍結され、発動されないかのように響くが、とんでもない。安保条約を発動する、共産党は米軍とともに戦争をするということなのだ。共産党自身が連合政府の一員として安保条約発動=戦争、武力行使の担い手になると言っているのだ。「日米が共同対処」とは在日米軍と自衛隊が出動し、武力行使するという意味である。
 これは紛れもなく、共産党の「安保条約廃棄」とか「戦争反対」という言葉がうそだということを示している。連合政府に入ったら、戦争法成立前日までの安保条約と自衛隊法をフルに発動すると言うのだから戦争賛成ということだ。

朝鮮侵略戦争切迫にも沈黙

 共産党が「安保条約廃棄」と言っているのは、今日すでに無意味なものとなったということだ。「凍結」とか「横において」と言って済まされるものなら、今日的にも安保条約をそのまま認めても差し支えないからだ。「連合政府としては」という限定付きで言っていることは、すべて今すぐOKだということだ。
 共産党は戦争反対の党ではない。戦争に参加する党である。
 現に今、戦争法成立をもって中谷防衛相が10月20日に訪韓し、朝鮮有事をめぐって具体的な議論をしているのだ。防衛省や中谷は「韓国の有効な支配が及ぶ範囲は休戦ライン以南だ」と語り、韓国の同意なしに北朝鮮に攻め込むことができると示唆した。
 米韓軍が「作戦計画5015」を策定し、朝鮮侵略戦争がここまで切迫している時に、『赤旗』はこのことをまったく報道しないし、同時期に訪韓した志位は朝鮮有事や戦争の問題に一言も触れなかった。また、民主労総のパククネ打倒のゼネスト闘争も無視抹殺している。共産党は「朝鮮有事はリアリティーがない」(志位)という立場を貫き、韓国労働者階級の総決起にも敵対しているのだ。安保・自衛隊を認めるということは、実際の戦争切迫に沈黙し協力することであることを如実に示している。

資本家階級に「無害性」訴え

 共産党の「国民連合政府」構想は、他方で資本家階級に、自分たちの「無害性」を売り込むものとなっている。彼らは綱領と規約から「労働者階級」の概念を消し去り、「国民の党」「資本主義の枠内の改革」をめざす党として、階級協調の党、資本主義を守る党に純化してきた。そういう党として政権に入りたい、ということである。
 志位は民主党代表・岡田との会談で、「民主党内には、共産党と政権をともにすることはハードルが高い、難しいという議論がある」と聞いて、「(天皇制、自衛隊、日米安保条約の)一つひとつについて丁寧に私たちの考え方をお伝えすれば、政権協力の障害にはならないということが理解いただけると思っています」と言っている。
 日経新聞のインタビューでは「認証式は」(入閣したら皇居に行くのか?)と問われて「天皇制度とは共存していく。心配いらない」と即答している(10月3日付)。
 共産党の政策は支配階級、資本家階級に「理解していただける」ということだ。資本家階級に向かって〝共産党が入っても不都合はない、別に心配はないですよ〟と売り込む言葉である。

民主党が拒否し早くも破産

 民主党の岡田代表は、10月28日、日本共産党の「国民連合政府」提案に対し、「政権構想という前提を撤回しないと、選挙の候補者調整はできない」と語り、共産党と一緒に政権を取る考えのないことを明言した。野党第一党の民主党からこのように一蹴され、共産党の構想は早くも完全に破産した。
 共産党の提案は、〝「野党は結束して安倍を倒してほしい」という国民の声に真剣に応えて、国民連合政府を提唱した政党〟として、日本共産党を押し出し、次の選挙で議席を増やすための手段であったとも言える。
 「国民連合政府」を掲げることで、共産党は、本当は戦争絶対反対ではなく、安保・自衛隊反対でもなく、民主党などと協力して安保・自衛隊を活用して「自衛戦争」をやる党であることを内外に明らかにすることになった。共産党は完全に墓穴を掘ったのである。

労働者の団結した力に敵対

 日本共産党が「国民連合政府」に展望があるかのように語るのは、労働者階級にこそ社会を動かす力があり、労働者階級の階級的団結に依拠して帝国主義国家権力を打倒しプロレタリアートの権力を打ち立てることができるというマルクス主義の立場を完全に捨て去っているからである。
 この夏から秋の国会前の大闘争の爆発について、それがかつてのような労働組合の組織動員によるものでなかったことを異様に強調し、「一人ひとりが自分の意思で結集したこと」に意義を見出そうとする言説が流行しているが、共産党もまた、このような言説に迎合し、賛美している。
 志位は、シールズ指導部・奥田愛基(あき)の言葉「私たちは一人ひとり個人として声を上げています」を絶賛し、「国民一人ひとりが、主権者として、『今声を上げなければ』と、自覚的・自発的に立ちあがっている。これは戦後かつてない新しい国民運動です」と意義付与している(9月18日、安倍内閣不信任決議案の賛成討論)。
 これは、労働者の階級性を解体し、団結を破壊し、バラバラの個人として日本共産党への入党や投票を組織するためのものである。団結した労働者は「自覚的・自発的」ではないかのように描き出し、団結を否定する。犯罪的な言説である。
 「安保容認・自衛隊活用」のもとで「戦争法廃止」が成り立たないことは明白だ。こんな裏切りは絶対許せない。共産党の大裏切りをのりこえて、階級的労働運動の前進で、安倍を打倒し、労働者の社会をつくろう。
(高田隆志)

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