マイナンバー制粉砕を 治安強化と国家総動員狙う 利権にまみれ破綻も不可避
マイナンバー制粉砕を
治安強化と国家総動員狙う
利権にまみれ破綻も不可避
マイナンバー(社会保障・税番号)制で12桁の個人番号が記載された「通知カード」の郵送が始まった。非営利団体を含む全法人には13桁の番号が届く。勤務先では全労働者の個人番号の収集も始まりつつある。しかし「義務」だとされる個人番号の提供や役所の申請用紙への記載も強制することはできない。誰でも拒否できる。まして労働組合が番号提供を拒否して闘うなら制度自体を粉砕することも可能だ。
全住民・法人を丸裸にして掌握
マイナンバー制は、国家権力が全住民と法人に番号を付けて、コンピューターで住所と勤務先、収入と資産、健康状態と思想傾向、経歴と犯歴、家族構成などを丸裸にして掌握しようとする、戦争に向けた治安国家化と国家総動員を狙う大攻撃だ。政府がタレントを使って大宣伝する「利便性の向上」など大うそだ。
「公益上の必要」を口実に、警察や公安機関、税務署などが一元化された個人情報を収集することを認めている。裁判所の令状も必要としない。
通知カードには番号と氏名、住所、生年月日、性別が記載されている。それを税と社会保障の情報、口座や戸籍、運転免許証、図書館カード、パスポートなどにどんどん関連付けることが想定されている。(表参照)
16年1月から顔写真入り「個人番号カード」の発行が始まり、国家公務員は身分証として所持することが強制される。なぜそんなことが許されるのか。政府は番号カードが住民の8割を超えたら義務化することを狙う。21年以降に預金口座の登録を義務付けるとし、個人資産を完全掌握して税や社会保険料の取り立て、社会保障費の削減に役立てるとしている。
市区町村はマイナンバー制を機に、介護保険や児童手当、子育て支援、生活保護など生活全般にわたって役所を抜本的に変えようとしている。東京都世田谷区は「地域行政制度の見直し」「業務の集約化を目的として......総合窓口(申請窓口の総合化)を創設」し「番号制度の活用拡大等を踏まえ......取扱事務の充実を図る」とした。全面的な人員削減と外注化・総非正規職化の攻撃だ。
マイナンバー特需の一方で、中小企業、非営利団体から悲鳴が上がっている。重罰で脅しつけられて膨大な個人情報管理を強制され、そのための外部委託料負担が初期費用、運営費とともに法人を締め上げているのだ。
本当に許しがたい!
すでに導入の前からボロボロに
マイナンバー制は導入前からボロボロだ。贈収賄事件が発覚し、利権と汚職まみれの実態が暴かれた。現場で矛盾が爆発的に拡大している。
マイナンバー制のシステム契約に絡んで10月13日、IT関連企業に便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、厚生労働省官僚が収賄で逮捕された。年金や健康保険の情報連携の推進事業に2億1千万円が支払われた。マイナンバー制の準備段階で官僚と資本が食いものにしていたのだ。
マイナンバー制は初期費用だけで約3千億円、運用経費で毎年数百億円の税金が使われる。国と自治体、法人などの経費を合わせて1~3兆円規模の市場に膨れ上がる。この巨大利権に政・財・官が群がる新自由主義の腐り切った姿が明るみに出たのである。
さらに、5月の年金個人情報125万件の流出に続いて、二つの役所で個人番号の住民票への誤記載が出た。茨城県取手市では家族を含め100人分の番号が記載された住民票が金融機関やUR(都市再生機構)、法務局、警察などに提出され、第三者に渡ってしまった。札幌市厚別区でも個人番号記載の住民票を誤って交付していた。
市区町村や税務署、ハローワークなどは、通常業務も困難なほど人員削減と外注化・非正規職化が進んでおり、マイナンバー制の対応マニュアルも含め準備も体制も整っていない。今後、問い合わせや申請手続きが殺到する中で、混乱や情報流出が爆発的に起こることは避けがたい。損害保険各社は企業での情報漏洩(ろうえい)の多発を見越して「個人情報漏洩保険」の契約で稼ごうとまでしている。
そもそも、11月中に通知カードを全国5600万世帯に簡易書留で届けるとするが、それ自体が破綻的だ。配達に回る郵便労働者は年賀状の販売時期と重なり、すさまじい過重労働となる。簡易書留は転送不要のため、自治体に返却される量は1割とも2割ともいわれる。役所では最低3カ月で廃棄され、その後は発行料が発生する。受付業務が始まる1月以降は、住民の転出入や確定申告の繁忙期に重なり、大混乱は必至だ。
逆に郵便や自治体職場で、労働組合が超過勤務や過重労働を拒否して闘うなら、マイナンバー制を大破綻に追い込むことも可能だということだ。
労組の力で番号提供ぶっ飛ばせ
マイナンバー制には一片の正当性もない。自公民が野合し連合や自治労本部が協力することで法案は成立した。矛盾はこれから爆発していく。
政府は闘いに心底恐怖している。だから国税庁などは「実務対応」マニュアルで、「申告書等に個人番号・法人番号を記載していない」「従業員や金融機関の顧客などが個人番号の提供を拒んだ場合」には「書類を受理しないということはありません」「法律で定められた義務であることを伝え......経過等を記録、保存」せよとするだけだ。
09年から始まった裁判員制度はあまりの不正義性ゆえに裁判員候補者の75%が不出頭となってすでに命脈が尽きている。
1%の支配階級の利益のために朝鮮侵略戦争に突進し、総動員体制をつくろうとする安倍の攻撃を1千万人の怒りで打ち砕こう。外注化・総非正規職化と闘う労働組合の絶対反対の団結が決定的だ。11・1日比谷に大結集しマイナンバー制を粉砕しよう。
(大迫達志)
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マイナンバー制の工程表
◆16年1月~ 番号利用開始
・雇用保険や扶養控除の書類/介護保険、児童手当、子育て支援、生活保護など
・個人番号カード交付→国家公務員身分証に使用/住民票などコンビニ交付
◆17年1月~
・源泉徴収票、健康保険・厚生年金に拡大
・個人ごとのサイト運用開始
◆17年7月~ データ連携
◆18年~
・任意で銀行口座と関連付け
⇒制度の見直し(範囲拡大)