〝社会保障費削減が人を殺す〟 自治体の変質と解体を許さずストで闘う労働組合を全国に
週刊『前進』08頁(2697号03面03)(2015/09/14)
〝社会保障費削減が人を殺す〟
自治体の変質と解体を許さずストで闘う労働組合を全国に
安倍への怒りがあふれている。「階級の記憶」がよみがえり、街頭と職場が一変した。現場労働者が動労千葉を先頭に組合旗を林立させて国会闘争の中軸に登場している。それは新自由主義の「地方消滅」・丸ごと民営化、社会保障解体への怒りとひとつだ。人びとの生活を支えるはずの自治体業務の変質、社会保障費の削減が人を殺している。絶対反対のストで闘う労働組合を全国につくり出そう。
熱中症死の4割エアコン持たず
今夏、東京23区で室内で熱中症で死亡した高齢者など93人のうち、35人は部屋にエアコンがなく49人はエアコンはあったが使っていなかったと、東京都監察医務院が発表した。ひとり暮らしの生活保護受給者や生活苦の高齢者がエアコンを持っていなかったり、電気代を気にして使わなかったりした結果がほとんどだ。福祉事務所職員の受け持ちは、1人あたり80件とされる基準すらはるかに上回る百数十件に達し、頻繁に見回りのできる限度を超えている。熱中症死はけっして高齢者だけの問題ではない。全労働者の問題だ。
88年『「福祉」が人を殺す』(あけび書房)というルポルタージュが社会に衝撃を与えた。87年1月、国鉄分割・民営化とともに進められた福祉削減で、札幌市で生活保護が受けられずに3人の子を持つ母親が餓死したという事件だ。しかし、同様の事件は全国で何度も繰り返された。12年1月には同じ札幌市で40代の姉妹が遺体で発見された。病死と凍死だった。3度にわたる生活保護申請が役所の「水際作戦」で認められず、電気・ガスも止められ、冷蔵庫の中は空っぽだった。新自由主義によって、次々と「殺されている」のだ。
3月、生活保護受給者は217万人を超えて過去最多を更新した。それ以外に低所得ゆえに住民税(均等割)が非課税の世帯は約2400万人、人口の2割に達している(14年1月)。東京23区では給与収入のある単身者で年収100万円以下、65歳以上で年金収入のある単身者で155万円以下、夫婦で211万円以下などの人たちだ。
新自由主義が超低賃金の非正規職を大量につくり出した。さらに大恐慌が大失業と貧困を強制し、大増税が労働者階級を直撃している。「不正受給」キャンペーンまでやって福祉を切り捨て、人びとを死に追いやっている。帝国主義の強盗戦争と同じく、1%の資本家階級の利益のために、労働者階級から命をも奪う階級戦争の現実だ。妥協や政策変更の余地などない。労働者の闘いで新自由主義を倒し、すべてを奪い返す時だ。
北海道10年後に病床削減1万超
北海道は7月、医療費削減のために、10年後の道内の病院ベッド(病床)数を1万以上削減し7万前後となる推計を示した。ベッドが約46%減となる地域もある。自宅や介護施設での治療に転換するというが、在宅医や訪問看護師、施設整備のめども立っていない。ローカル線廃止に加え病院もなくなるなら誰も生きていけなくなるということだ。北海道だけではない。労働条件悪化による医師や看護師不足で病床閉鎖が拡大し、消費増税による赤字が追い打ちとなって、廃院の危機が自治体病院を始め全国で急速に進行している。
安倍の攻撃は、医療・介護を最大の標的としている。厚生労働省は、10年後には医療費は1・5倍の54兆円、介護費は2・3倍の19兆8千億円に達するとする。「だから削る」というのだ。新自由主義が引き起こした「896自治体消滅の危機」を逆手にとって命まで奪う。「カネ」のために、巨大駅前再開発とローカル線廃止・地方切り捨てを進めるJR資本がその最大の先兵だ。
多くの人びとが生活苦に陥り、住民税や国民健康保険(国保)料、介護保険料を払えなくなっている。これに対して無慈悲な差し押さえを職員の主要な職務とする、自治体の新自由主義的変質が急速に進行している。
滞納差し押さえが主要な職務に
横浜市は13年度、税金の滞納に対し、約3万7千件の差し押さえを実施した。市税や国保料などを「債権」と位置づけ、暴力的に「回収」を図るというのだ。国保の訪問徴収(=相談・合意に基づく自主的納付)を担う地区担当員制度(1961年発足)は「時代に合わなくなった」として廃止し、非常勤職員65人全員の解雇を強行した。戦後地方自治がうたった「住民福祉」などは建前からも排除する、自治体のあり方の根本的な転換だ。現場では体制内労組幹部の制動をはねのけて大激突となった。今年7月、税の滞納処理担当の職員のうち、徴収額などの成績上位者ら約20人が表彰された。階級意識を解体し団結を破壊する攻撃だ。それは全員解雇・総非正規職化、労組破壊と一体だ。
社会保障の解体、自治体業務の変質は、破滅のふちに立つ安倍の朝鮮侵略戦争と改憲、被曝労働の強制、戦争動員の攻撃とひとつだ。労働組合の絶対反対の闘いにかかっている。
戦争動員許さず絶対反対貫こう
かつて市町村役場の職員は、徴兵検査や召集令状(赤紙)の交付、出征兵士の見送り、戦死の告知などを担わされるとともに、自ら戦場に駆り出された。すでに日米共同演習の一環として、自治体労働者の「住民避難」訓練動員が始まり、戦争が現実のものとして迫っている。社会の崩壊と職場・業務の許しがたい現実に直面して、「自分たちの労働は何のため、誰のためにあるのか」を問う根底からのとらえ返しと階級意識の覚醒(かくせい)が、国会闘争への歴史的決起と結合して、当局・資本との激突の中で急速に進んでいる。米軍相模補給廠(しょう)爆発火災事故に対する9・3抗議デモには全学連や婦人民主クラブ全国協とともに、地元の病院や学校、自治体の労働者が先頭に立った。被曝労働拒否を闘う動労水戸に続いて、高浜・伊方原発再稼働阻止の闘いの中軸を自治体の労働組合が担っている。8月自治労金沢大会では、戦争法阻止の国会闘争全国動員を求める声とともに、病院を始め激化する民営化・首切り、労組破壊への怒りと闘いが訴えられた。
一歩も引かぬ職場の闘いが戦争を阻む。自治労本部・自治労連本部の制動を打ち破り、全国で闘いが巻き起こっている。動労総連合建設を進め、正規・非正規の分断をのりこえて、ストで闘う階級的労組拠点をつくり出そう。
(大迫達志)