株暴落で年金は破綻の危機 積立金を株運用する犯罪性 受給者の生存奪う安倍を倒せ

週刊『前進』06頁(2696号03面03)(2015/09/07)


株暴落で年金は破綻の危機
 積立金を株運用する犯罪性
 受給者の生存奪う安倍を倒せ


 中国を震源とする世界同時株価暴落で、年金積立金を惜しげもなく投入した安倍政権の株高演出はついに破綻した。この事態に誰よりも怒っているのは年金受給者と、毎月の賃金や収入から年金保険料を支払っている労働者人民だ。この怒りで戦争法案を葬り、安倍政権を打倒しよう。

株高演出のアベノミクスが元凶

 安倍政権は昨年10月、公的年金のうち国民年金と厚生年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人、資産総額130兆円超)が、その資産を従来の2倍の比率にあたる25%まで国内株に投入できるようにした。比率を1%上げれば1兆円超の資金が株式市場に流れ込む。
 今年3月に公務員などの3共済年金も株への運用比率をGPIFと同じにした。両者の資産を合わせると約190兆円になる。しかし、6月末にはGPIFの国内株の割合が23・39%となり、買い増す余地はわずかになった。手詰まりになったところへの株価暴落だ。国会情勢と相まって安倍は窮地に追い込まれた。
 日本では3人に1人となる年金受給者にとっては死活問題だ。なぜなら04年に導入されこの4月から初めて発動されたマクロ経済スライド制は、積立金の運用も含めて公的年金財政の収入の範囲内で給付を行うことが前提になっているからだ。しかも基礎年金部分まで株に投入している。元本すら戻らない可能性もある。株の暴落でそれが現実のものとなったのだ。
 マクロ経済スライド制は無慈悲に実質給付額を切り下げることから「年金自動切り下げ装置」と呼ばれることもある。しかし、起きていることは公的年金そのものの破綻だ。「削減反対」だけでは太刀打ちできない。
 3年前、AIJ投資顧問が中小零細事業所の労働者の積み立てた厚生年金基金約2千億円の大半を消失させていたことが発覚した。これと同じことが障害年金や遺族年金の受給者を含むすべての年金受給者(将来の受給者)に襲いかかろうとしている。しかしそうなっても国は責任をとらないつもりだ。断じて認められない。

低年金・無年金では生きられない

 年金の破綻は国家への幻想を粉みじんに打ち砕く。国家は資本家階級のためにあることが隠しようもなくなった。資本家階級にとって代わり、労働者階級の国家を樹立するときが来ている。
 11年の年金の平均受給額は国民年金のみが4万9632円。厚生年金は男性が17万265円、女性は10万3989円だ。国民年金の満額受給額は15年度で月6万5千円。国民年金のみ受給している人は1千万人で、大半が年金しか収入がない。3万円未満も1割いる。
 また、独り暮らしの高齢者の半数近くの約300万人が生活保護水準以下の年金で暮らしている。厚労省は11年の無年金見込み者を含めた無年金者を最大118万人としているが、これは推計でしかない。
 さらに、「このままだと高齢者の9割が貧困化する」(朝日新書『下流老人』)との指摘もある。アベノミクスが発動された13年に、万引きで逮捕された高齢者は3万4060人。94年の4・5倍だ。「とことんまで窮乏し、やむにやまれず〝100円総菜〟を万引きする高齢者が多い。財布には数十円しか入っていない」とあるスーパーの店長は語る。低年金、無年金を強いられた高齢者がここまで追い込まれている。まだある。
 6月、失業中だった東京・杉並区の71歳の男性が、「この年金では生きられない」と新幹線の中で国と行政に対して抗議の焼身自殺をした。
 7月には、同居家族の死亡届を出さずにその年金を受給し続け「詐欺罪」に問われた無職の男性が、東京・江東区では逮捕され、青森・八戸市では起訴された。
 生きるためにやむにやまれず手にした食料や生活費。その行為が「犯罪」とされ罰せられる。しかし、そうでもしなければ命を奪われる。人間がつくった社会の中で人間が生きていくことができない。破綻した新自由主義をなおも絶望的に推し進めた結果だ。こんな転倒した社会は根本からつくりかえなければならない。

プラハ協議会の「決議」を原則に

 1917年、ロシアで資本主義を倒し労働者国家を樹立した革命党のボルシェビキは年金制度を含む社会保障制度について、1912年に開催されたロシア社会民主労働党第6回全国協議会(プラハ協議会)で採択された決議の一つ「国営労働者保険にかんする国会法案にたいする態度について」で、その原則的立場を提起している。
 「労働者が労働能力を失うすべての場合(傷害、疾病、老齢、重度障害、婦人労働者はその上に妊娠と出産。稼ぎ手が死んだ後の寡婦と孤児への扶助)、また失業のために賃金を失うばあいに、労働者自身とその家族全部を保障しなくてはならない」「賃金全額補償が原則」「保険金の全額は企業主と国家が負担しなくてはならない」「被保険者の完全な自治にもとづく統一的な保険組織が保険を管掌しなければならない」。なぜなら、「賃金労働者が生み出した富のうち、彼らが賃金として受け取る部分はほんのわずかだから、労働能力を失ったり、失業に備えて蓄えをするあらゆる可能性を奪われている」からだ。
 この保険には、現在の年金、生活保護、失業保険、休業補償がすべて含まれている。労働者は一切負担せず、補償は賃金の全額だ。管理運営も労働者の自治にもとづく組織が行うとしている。
 労働者は、資本主義のもとでは剰余労働を剰余価値として無償で資本家に捧げるためにのみ労働し、そしてそのために必要な限りで生かされている。しかし、労働者はその労働で自分自身を養うだけでなくすべての人びとを養っているのだ。この「決議」の内容を1ミリも譲らず闘うことで社会保障解体の攻撃と立ち向かえる。
 無年金・低年金状態を強いられながら生きるために苦闘しているすべての労働者人民とともに、国鉄闘争を軸にゼネストを実現し資本主義を打ち倒そう。そのために戦争と民営化、外注化・非正規職化、社会保障制度解体に怒る1千万人の労働者人民と結びつこう。
(今井一実)
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