天津爆発事故の核心 新自由主義政策の大破産 民営化・非正規職化で犠牲拡大
週刊『前進』06頁(2694号04面03)(2015/08/24)
天津爆発事故の核心
新自由主義政策の大破産
民営化・非正規職化で犠牲拡大
(写真 天津爆発事故第4回記者会見の会場に入れず、「息子は非正規だった。死んだ時は正規と同じように扱ってほしい」と訴える非正規職消防士の父親【8月15日】)
経済大国化が生み出した矛盾
8月12日午後10時50分から11時30分ころにかけて、天津市天津浜海新区にある端海国際物流有限公司の倉庫で火災から大爆発が起きた。大きな爆発が2回はあったとされ、1回目の爆発がTNT火薬3㌧分、2回目の爆発が24㌧分に相当するという大爆発であった。現場には直径100㍍の大きな穴があき、周辺の建物は爆破され、輸出用の6500台の車が破壊された。空前の爆発事故が起こったのである。8月19日段階の政府の発表によれば、死者は114人、行方不明者が65人とされている。しかしこの数字には「少なすぎるのでは」との疑問の声も多い。この事故は、中国スターリン主義の「改革・開放」政策、その新自由主義的な政策の展開が生み出したものでありその破産を意味する。
中国スターリン主義はその歴史的な破産の中で、延命策として「改革・開放」政策に転換した。それはスターリン主義体制下での新自由主義政策の展開であった。ほとんど無権利状態の労働者を、日米欧や韓国、台湾などの資本と国有資本・民間資本の前に投げ出し、奴隷労働を強制することで、わずか30年余りで中国は世界第2の経済大国となった。
しかしその急激な経済成長は、労働者住民の命と安全を踏みにじり、乱開発とすさまじい環境破壊を引き起こして進められた。今回事故を起こした企業のように大量の毒物や爆発物を扱う企業が、住宅地の近くに建てられ営業していたのである。資本の自由が最優先される新自由主義的政策を背景に、この大事故は起きたのだ。
犠牲者の多くは非正規の消防隊
死者114人のうち50人、行方不明者65人のうち52人が消防士だとされている。実はこれらの消防士はほとんど非正規雇用の消防士である。中国では正規の消防隊のほかに非正規職労働者による消防隊がある。大企業や事業体、港湾、空港などで組織される特別の消防隊で、企業や事業体が自分の企業の労働者や地域の住民から人員を雇い、それらの企業や事業体に配置され、賃金もこれらの企業や事業体が支払い、指揮権は警察が持つという半ば民営化された消防隊である。人員は警備会社や派遣会社から派遣されることもある。訓練はきつく、賃金は低く、待遇も悪い。短期間で辞める人も多く、人の入れ替わりも激しい。組織として安定しない、専門的になりきらない消防隊である。
今回、午後10時50分にコンテナ2箱が燃えるという火災が発見されたが、ここに最初に駆けつけたのは、実はこの非正規職労働者の消防隊であり、そのほとんどが犠牲となった。炭化カルシウムや金属ナトリウムが消火活動時の放水で水と化合して大爆発が起きたとも言われている。こうした非正規職の消防隊の制度と存在が大爆発を引き起こし、多数の消防労働者を死亡させた可能性がある。
事故現場を訪れた李克強首相は、マスコミから「多くの非正規職労働者が死亡したことをどう思うか?」と聞かれて「彼らは英雄だ。英雄に正規も非正規もない」という驚くべき暴言をはいて開き直った。新自由主義的政策の展開の中での消防の民営化、非正規職化が、事故と犠牲者の拡大につながったのである。
この企業には、シアン化ナトリウム700㌧を始めとする四十数種類の危険化学品3千㌧が存在していたとされている。規定の量を超えた異常な量であり、さらにこの企業は、こうした危険化学品の密輸を行っていた疑いも浮上している。
違法行為がまかり通った背景には、会社とスターリン主義官僚の腐敗した癒着(ゆちゃく)関係がある。この腐敗した関係が違法な量の危険化学品の貯蔵を可能にし、さらには密輸まで黙認していた可能性がある。
それは一方で、労働者が自分の周りに膨大な危険物があることを正確には知らされず、場合によっては自分が危険物を扱っている自覚も持たされず、安全対策もないままに仕事をしていたということも意味する。
金もうけのために、労働者の安全や命を切り捨てる企業の姿勢が膨大な危険物の貯蔵と野放図な管理につながり、さらには今回の事故につながっていったのである。それは新自由主義の本質であり、また新自由主義の中で生まれた資本とスターリン主義官僚の癒着と腐敗の産物である。
スターリン主義体制の危機加速
このように今回の爆発事故は、中国スターリン主義の新自由主義的政策が生み出したものであり、その行き着いた先であり、その破産を示すものだ。同時に、中国スターリン主義の政治と経済を根底から揺るがすものとなっている。爆発でばらまかれたシアン化ナトリウムは住民の命をむしばみ、政府への抗議が始まっている。家を失い、家族を失った労働者住民が、補償を求めて座り込みやデモに立っている。毒物が流れてくる可能性のある風下の工場での操業を中止するよう闘いに立ち上がっている。政府の情報統制は逆に人びとの怒りに火をつけている。この事件をきっかけにして、中国各地で危険な工場の建設に反対する運動が次々と巻き起こっている。
また天津は今や世界第4の貿易港であり、事故でその機能が崩壊している。中国バブル経済の崩壊が開始された中で、この爆発事故は、中国経済の崩壊を促進している。
天津爆発事故は、中国スターリン主義の崩壊を一挙に促進する。中国の鉄道労働者を始め闘う労働者と団結して、日帝打倒、中国スターリン主義打倒へと突き進もう!
(河原善之)