JR重大事故が3件連続 安全破壊する外注化許すな

週刊『前進』08頁(2693号02面03)(2015/08/17)


JR重大事故が3件連続
 安全破壊する外注化許すな


 8月上旬、JRは立て続けに重大事故を起こした。国鉄分割・民営化と外注化・非正規職化による安全の崩壊は行き着くところまで来た。動労総連合・新潟の結成に続き、東京を始め全国に動労総連合を建設し、反合・運転保安闘争を貫いてこそ労働者と乗客の命を守ることができる。

■京浜東北線 架線が切断

 8月4日午後7時10分ころ、京浜東北・根岸線の横浜―桜木町駅間で架線が切れ、3本の列車が立ち往生した。乗客2千数百人は、停電で冷房も止まった車内に約1時間15分も閉じ込められた末、線路に下りて駅まで移動した。
 京浜東北・根岸線と同線への直通電車が走る横浜線は5日午前1時30分ころまでストップした。隣接する東海道線と横須賀線も一時運行を取りやめ、上野東京ラインは終日、上野駅で折り返しとなり、湘南新宿ラインも直通運転を中止した。ダイヤ混乱は高崎線や宇都宮線にも波及し、計150本の列車が運休、35万人に影響が出た。
 架線が切れた直接の原因は、京浜東北・根岸線の電車がエアセクションで停止したためだ。その電車の運転士は、先行電車が桜木町駅に止まっているのを見て、ATC(自動列車制御装置)が作動する前に手動でブレーキをかけ、エアセクションが存在することも認識しないまま停車した。
 JR東日本は、「ATCの制御どおりに運行すればエアセクションでは停車しないようになっていた。運転士教育を徹底する」と言い、全責任を運転士に押し付けている。だが、〝運転士はATCに従っていればいい〟という発想こそが、事故を招いたのだ。
 07年6月にさいたま市内の東北線で同様の事故が起きた後、JR東日本は、エアセクションで減速すると注意を促す音声アラームを首都圏の全車両に設置すると発表した。しかし、京浜東北・根岸線などの5路線は、ATCがあるから「対策済み」として、アラームの設置は見送られた。
 しかもJRは、どこにエアセクションがあるのかも、ATC通りに運転しなければエアセクション内に停止する危険があることも、エアセクションに止まった場合にとるべき措置についても、運転士にまったく教育していなかった。ATCがあるから教育の必要もないとしてきたのだ。エアセクションの存在を示す標識さえ設置されていなかった。他方でJRは、先行列車が停止しているのが見えたらすぐ止まれとマニュアルで運転士を厳しく締め付けている。
 ベテランの運転士なら、どこにエアセクションがあるかを熟知していて、それを避けて停車するためのブレーキ操作にも習熟している。だがJRは、そうした熟練を解体し、労働者を機器に従属させることで誇りと団結を奪い、大合理化、外注化・非正規職化を強行してきた。それが安全を根本から破壊したのだ。

■山陽新幹線 カバー脱落

 8月8日午後5時30分ころ、JR西日本・山陽新幹線の小倉―博多駅間にある四郎丸トンネルを走行中の新大阪発鹿児島中央行き「さくら561号」の2号車から、床下機器を覆うカバーが脱落した。重さ約6・5㌔のカバーは新幹線の風圧で舞い上がり、トンネルの内壁や車体との衝突を繰り返した末、架線に電力を供給する電線に近づいてショートさせた。車体には39カ所、トンネル内壁には10カ所の損傷が残っていた。カバーが車体に当たった衝撃で乗客1人が軽傷を負った。
 電線ショートで送電は止まり、当該列車を含む計3本が駅間に停止、運転再開まで約40分かかった。車体の損傷の激しい「さくら561号」は博多駅で車両を交換した。
 事故車両を調べたところ、カバーを車体に固定するボルト2本がなくなっており、別のカバーのボルトもなくなったり緩んだりしていた。JR西日本は「7月24日に車両を整備した際、ボルトの締め方が不十分だった可能性がある」と発表した。8月6に交番検査、7日に仕業検査が行われたが、ボルトの緩みは見逃された。
 JR西日本は新幹線車両の検修業務や車両改修工事を「ジェイアール西日本新幹線テクノス」に請け負わせている。極限的な外注化こそ、この事故の背後にあるものだ。

■東北新幹線 窓ひび割れ

 8月9日午後1時30分ころ、JR東日本の東北新幹線で、郡山―福島駅間の白沢トンネルを走行中の東京発新青森・秋田行き「はやぶさ・こまち19号」の窓ガラスにひびが入った。JR東日本は仙台駅で窓に外から粘着テープを張り、そのまま車両を運行した。
 走行時の振動をやわらげるためレールの下に敷かれている「鋼板付き軌道パッド」の一部が外れ、新幹線の風圧で巻き上げられて窓に衝突したと見られている。トンネル内にはステンレス製の鋼板1枚が落ちており、その300㍍手前の地点ではレールの下にあるはずの鋼板が外れていた。
 7月29日にJR社員が目視で線路を点検した時には、異常は見当たらなかったという。だが、それは事故の11日前のことだ。規制緩和で線路の検査周期が延伸されていなければ、事故は未然に防げた可能性が高い。
 反合・運転保安闘争を闘う動労総連合を全国に建設し、安全を破壊する外注化・非正規職化を粉砕しよう。

エアセクション 架線は電気を供給する変電所ごとに数㌔ずつの区間に区切られている。その区切りの部分は約50㍍にわたり2系統の架線を重ねてパンタグラフと接触する架線を徐々に移行させる仕組みになっている。この区間で電車を停めた後に運転を再開すると、不完全に接触している架線とパンタグラフとの間にスパークを生じ、架線が溶断する危険があるため、エアセクションで停止することは原則として禁止されている。

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