ロンドンで地下鉄が２４時間スト
　今秋からの週末終日運転に反撃
　７月８〜９日　ＲＭＴなど４労組

１台の列車も動かず全駅閉鎖

　７月８日午後６時30分、ロンドン地下鉄の労働者は全線でストライキに突入、一切のスト破りを許さず、完全に24時間ストを打ち抜いた。翌９日午後９時30分まですべての駅は閉鎖され、１台の列車も動かなかった。地下鉄労働者を組織する四つの組合が、ＲＭＴ（鉄道海運運輸労組）を先頭に、スト権投票での圧倒的な支持に押されて統一してストに入り、首都ロンドンの交通は「バスと自転車、徒歩」だけになり、主要道路は職場に向かう労働者の波で埋め尽くされた。
　地下鉄当局、ロンドン市長、運輸大臣は顔面蒼白（そうはく）となり、「これは悪しき意図を持った政治ストだ」「組合員はこの恥ずべきストをやめて、ただちに職場に帰れ」とわめきたてた。
　ストの争点は、①賃上げ、②今年９月に予定される地下鉄の週末夜間営業（土日の終日運転）導入をめぐる労働条件。その背景には駅の無人化、要員の削減、業務の外注化、地下鉄当局から派遣された無資格の管理者による新規採用者（多くが非正規職）の訓練など、外注化・非正規職化から生じる地下鉄の安全の崩壊という問題がある。
　スト前々日、６日の労資交渉で、地下鉄当局は「賃上げは２％、夜間営業導入に際しては運転士に２千ポンド（約24万円）の一時手当支給」という最終回答を出した。組合側は「労働者を侮辱する低額回答」「終日運転導入による運転士を始めとする地下鉄労働者全体の労働と生活のあり方の全面的破壊（８時間労働制の解体）」として拒否。とりわけＲＭＴは〝当局は運転士だけの手当支給で、２万人地下鉄労働者と１千人の運転士の分断を図り、労働者の団結を破壊することを狙っている〟と弾劾した。
　この24時間ストを闘いぬいた直後にＲＭＴは全組合員に、超過勤務拒否と安全チェックの終わっていない列車の運行阻止を指令した。
　地下鉄労働者を組織しているほかの組合、ＡＳＬＥＦ（鉄道運転士労働組合）とＵＮＩＴＥ（全産業的な巨大組合で、地下鉄では主に検修・保線・電気・信号などの労働者を組織）は、８月５日に再度の24時間ストを行う方針を出している。ＲＭＴはもちろん、もう一つの労組ＡＳＳＡ（鉄道労働者協会）を含めてストライキ体制を解いておらず、８月に闘争が続くことは間違いない。

民営化・外注化・安全破壊と対決

　イギリス帝国主義は、新自由主義攻撃の破綻の中で極限的に激化する争闘戦に生き残るため、鉄道の民営化・外注化を強行し、列車の安全な運行を脅かしている。
　鉄道労働者は人員不足からくる過重な労働、強制的配置転換、外注化による作業体制の一体性の破壊、技能の継承性の断絶などの現実に直面している。しかも「利潤至上主義」（ＲＭＴミック・キャッシュ書記長）の結果、鉄道事業に関する経験が何もない経営者が責任ある位置を占め、安全を掘り崩している。
　こうした現実から、週末夜間営業によって「首都ロンドンの週末は、夜中まで生活をエンジョイできる」「ロンドンの繁栄に大きく貢献できる」という当局の宣伝に真っ向から反対していない組合を含めて、ロンドン地下鉄の四つの労組が、今回の当局の「最終提案」を拒否して一致してストを闘っているのだ。
　注目すべきは７月８日の地下鉄ストと同時に、ロンドンとイングランド西部とウェールズの間を結ぶ高速交通（ファースト・グレート・ウェストン）の労働者が、ＲＭＴのもとで48時間ストを行ったことだ。予定されている新型車両（日立製作所のインター・シティー・エクスプレス）の導入によって一人乗務となり、今まで車掌がやっていた車両ドアの開閉を運転士が行うことを中止することが組合の要求だ。
　イギリス鉄道労働者の新自由主義攻撃との闘いは激突の様相を深めている。
（川武信夫）