杉並の児童館をなくすな! 民営化阻止し非正規職撤廃を 分断持ち込み誇り奪う攻撃

週刊『前進』06頁(2691号03面02)(2015/07/27)


杉並の児童館をなくすな!
 民営化阻止し非正規職撤廃を
 分断持ち込み誇り奪う攻撃


 児童館を守ってきたのはそこで働く労働者だ。労働者は「丁寧に工夫されている仕事のやり方、遊びや玩具、ルールさえも子どもたちと一緒に先輩職員がつくり出してきたもの」だと言っている。児童館廃止は仲間同士をバラバラにし、労働者の誇りを奪うものだ。児童館が廃止され民営化されてできるのは、まったく別の施設だ。「機能は残るから大丈夫だ」などと主張する者たちは絶対に許せない。
 いま杉並の41の児童館で働く約500人の労働者のうち半数が非正規職だ。非正規職労働者はさらに嘱託、パート、アルバイトと分けられる。嘱託は月給制。週4日勤務で1年ごとの契約、最長6年まで(契約更新は5回)となっている。パートは時給1130円で週5日勤務。1日6時間労働だ。1カ月の手取りは12万円程度で、連休など休日が多い月には10万円ほどになる。契約は1年ごとで最長3年までとされている。アルバイトは登録制で、正規職員が夏休みを取る時などに呼ばれる。
 現場では非正規職で働く労働者が「即戦力」とされている。児童館の側は経験者が欲しい。パートは最長3年までだが、再度試験を受けて繰り返し雇用される労働者も多い。「自分より仕事ができないのになぜ給料が高いのか」。ひとたび民営化が始まれば、正規だ、非常勤だ、派遣だと、労働者の間にこれまで以上の分断が持ち込まれ、労働者同士の対立を生み出す。職場全体でひとつのことを成し遂げるのではなく、すべてが「個人の能力」にされ、バラバラにされていく。
 だから民営化との闘いに妥協はない。労働組合が「民営化阻止・非正規職撤廃」で闘うことが労働者の団結をつくり、児童館全廃を止める道だ。

労働者の力に依拠して闘う

 これまで、「会社と非和解で闘っても勝てない」ということが労働運動の「常識」とされてきた。しかし、国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)の国鉄分割・民営化との30年にわたる絶対反対の闘いは、幾度も繰り返されトラウマのようになってきた「闘えば分裂する」という歴史はのりこえられることを示した。
 動労千葉は、「労働組合というのは、いざという時に力を発揮する存在でなければならない」と闘ってきた。動労千葉がこれまでの労働運動の指導部と違うのは、労働者に徹底的に依拠し、労働者を絶対に信用してきたことだ。それは、常に一人ひとりの労働者の持っているエネルギー、労働者性に基礎をおいて闘ってきたということだ。
 動労千葉は、これを「反合理化・運転保安闘争路線」として確立し、職場の労働運動を実現してきた。
 鉄道職場においては長年、「事故は労働運動の課題にならない」とされ、事故は労働者の責任とされ、労働者同士の対立が生み出されてきた。これに対して動労千葉は、組合員が起こした事故を契機に、「事故は当局の合理化の結果だ。運転士に責任を転嫁するな」と反合理化闘争に立ち上がったのだ。これが「明日は我が身」と感じていた組合員の強力な誇りと団結をつくる闘いとなって、合理化のたびに妥協を重ね団結が弱まってきた労働組合のあり方を根本から変えたのだ。
 動労千葉は「労働組合は労働者階級が団結する手段であるとともに、労働組合運動の中で、自分たちが権力を握った時の能力を身につける」と闘ってきた。動労千葉で言えば列車を動かす能力を身につけるということだ。「『これだけの列車を動かすのに何人の運転士が必要か』『修繕する人が何人必要か』、すべてを労働組合が十分わかっている。だからJR当局がいなくても、千葉の電車はすべて動労千葉が動かせる。動労千葉の乗務員の方が、会社側よりよほどうまい」(動労千葉・中野洋前委員長)。
 ここには、どんな労働者にも世界をひとつに団結させ、人間の共同性を奪還する力があるという真実がある。人間社会の生産は、自分と他者の協同の労働なしには一切成り立たない。しかし資本主義社会は、この社会的にしか成立しない生産において資本家が剰余労働を私的に取得している。この搾取のシステムを維持するために、職場では労働者は限りなく分断され、個人の資質や能力ばかり問われる。
 この資本による分断を打ち破って階級的団結を形成するために、労働組合は人間と労働の本質的共同性を取り戻すための資本との非和解的な闘いを展開しなければならない。動労千葉の反合理化・運転保安闘争は、職場の団結を土台にした労働者階級としての人間の共同性をかけた資本との根本的激突なのだ。
 それは労働者の誇りをかけた闘いだ。非正規職労働者も誇りを持って仕事をしている。動労千葉は15年間、検修・構内業務の外注化に対して反合理化・運転保安闘争路線を貫いて闘い、外注先の11人のCTS(千葉鉄道サービス)労働者が動労千葉に加入した。動労千葉の苦闘は、「民営化・外注化阻止、非正規職撤廃」の闘いで団結する中にこそ児童館を守り抜くことができる展望を示している。
(鷹村大介)
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