安保国会を斬る 59年「砂川判決」で集団的自衛権など認められない

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週刊『前進』06頁(2686号04面03)(2015/06/22)


安保国会を斬る
 59年「砂川判決」で集団的自衛権など認められない

自民党が今や「存立危機」

 6月7日、東京・日比谷公会堂で国鉄闘争全国集会がかちとられた、その同じ日、自民党は「安保法制への理解を広める」と称して全国約100カ所で街頭宣伝を行った。だが、自民党は行く先々で民衆の抗議行動に包囲され、集まった人びとから「戦争やめろ!」「帰れ!」と怒号を浴びせられ、ほうほうの体で逃げ帰る羽目に陥った。
 自民党が急きょ全国一斉街宣を行ったのは、4日の衆院憲法審査会で3人の憲法学者がそろって「集団的自衛権行使は憲法違反」と明言し、与党の国会戦略に深刻な打撃を与えたからだ。その影響は安保法制を審議する衆院特別委員会に直ちに波及し、自民党議員からは「委員会の存立危機事態だ」と悲鳴が上がった。安倍は当初予定した6月衆院通過を断念せざるを得なくなった。
 もとより集団的自衛権が完全な憲法違反であり、これを「憲法9条のもとでも許容される」などと強弁した昨年の7・1閣議決定に何の正当性も適法性もないことは、憲法学者らの指摘を待つまでもない。労働者階級人民はこんなものを一瞬たりとも認めていないのだ。その怒りと決意は、昨年の8・9長崎平和祈念式典において、安倍を目の前にして「集団的自衛権行使は日本国憲法を踏みにじる暴挙」と真正面から弾劾した被爆者・城臺美彌子(じょうだいみやこ)さんの決起に、最も鮮烈に示された。そして今や、安倍のウソとペテンに満ちた戦争政治への怒りが連日国会を包囲し、安倍を追い詰めている。

砂川事件元被告らも抗議

 こうした中で、安保法制をあくまで「合憲」と言い張る根拠として、自民党は「砂川事件の最高裁判決」を持ち出してきた。同判決の「(わが国が)存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然」という文言を根拠に、集団的自衛権の行使を最高裁が認めたと強弁する。もともとは昨年の7・1閣議決定に先立つ公明党との協議の際、自民党副総裁・高村正彦が言い出したものだ。
 だが砂川判決は、あくまで「米軍の日本駐留」を「自衛のための措置」として合憲だと認めたに過ぎず、集団的自衛権どころか個別的自衛権の合憲性すら具体的には言及していない。高村の主張はおよそ法学的にも問題外の暴論である。これには公明党も到底納得できず、結局、7・1閣議決定では根拠として用いないことにしたものだ。
 この破綻しきった論理を安倍・高村らがまた持ち出したことに、多くの人びとから怒りの声が上がっている。砂川事件の再審を請求して闘う元被告らは「自分の判決がこのように利用されるのは我慢ならない」(土屋源太郎さん)と訴える。元弁護団も12日、記者会見で「安保関連法は戦争法制だ」「国民を惑わす強弁をやめろ」と訴え、安保法案撤回を求める抗議声明を発表した。

7・5集会―デモに立とう

 この間、安保法案の廃案を求める憲法学者の声明に228人もの賛同が集まった(16日時点)。他方、「合憲と言う学者もたくさんいる」と強弁していた官房長官・菅義偉は、結局たった3人しか「合憲派学者」の名前を挙げられなかった。しかも菅が挙げた長尾一紘、西修、百地章の3人は、桜井よしこや葛西敬之らの呼びかける「美しい日本の憲法をつくる1000万人賛同者」運動の中枢に名を連ねる(長尾と西は代表発起人、百地は幹事長)札付きの右翼学者だ。安倍はこんな連中にすがりつく以外に「安保法制合憲論」を主張できないのだ。
 起きている事態の核心は、まさに政府と支配階級の「支配の論理が崩壊している」(6・7集会での動労千葉・田中康宏委員長の発言)ということだ。安保国会粉砕・安倍打倒の決戦はいよいよ正念場だ。7・5大集会・デモに怒りの声を総結集しよう。
(水樹豊)

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砂川事件 1957年、東京都砂川町にあった米軍立川基地の拡張阻止闘争(砂川闘争)で学生や労働者が基地内に突入し、23人が逮捕・7人が起訴された事件。東京地裁・伊達秋雄裁判長は59年3月、「米軍の日本駐留は憲法9条違反」として被告全員を無罪とする画期的判決(伊達判決)を下した。これに対し、最高裁・田中耕太郎裁判長は駐日米大使と密会・謀議を重ねた末、同年12月に一審破棄・差し戻しの反動判決を下した。現在、元被告らが再審を請求している。

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