マイナンバー制導入許すな 総背番号制で徴税を徹底し全面民営化と徴兵制も狙う
週刊『前進』06頁(2686号03面02)(2015/06/22)
マイナンバー制導入許すな
総背番号制で徴税を徹底し全面民営化と徴兵制も狙う
日本年金機構の個人情報125万件の流出が表面化して問い合わせや抗議が殺到し、個人情報悪用への不安と怒りが噴き出すとともに、来年1月実施のマイナンバー(税と社会保障の共通番号)制度への危機感が広がっている。マイナンバー制とは総背番号制であり、戦争法と一体となった徴税の徹底と徴兵制、全自治体業務民営化の大攻撃だ。絶対反対で闘おう。
年金個人情報の流失で危機感と怒りが広がる
年金削減の中での膨大な個人情報流失に怒りが噴出し、安倍政権を揺るがす重大事態となっている。菅義偉官房長官は職員の「認識の甘さやモラル」の問題にすり替える一方、マイナンバー制の「安全性」を強弁して利用開始をあくまで強行しようとしている。しかし事態は、2010年の社会保険庁解体、職員全員解雇と年金機構への選別採用、非正規職化と外注化、IT(情報技術)化の結果だ。
情報流出を起こした記録突合(とつごう)センターでは機構職員21人に加え、467人もの外注企業労働者が年金記録の照合を行っている(10年10月時点)。機構の正規職は約1万1千人、有期雇用は約1万5千人(13年10月)であり、毎年2千人規模で雇い止めと新規採用が繰り返されている。それ以外に外注企業の数万人の非正規職員が勤務しているのだ。
「今回の情報流出は起こるべくして起こった。サイバー攻撃自体、防ぎようもないし、マイナンバーなんてむちゃな政策です。『労働者に責任あり』みたいにされ窓口も大変なことに。ここで組合が立ち上がらないと存在意義がない」。年金事務所の現場から怒りの声が上がっている。マイナンバー制は、これを国と自治体の業務全般に広げる破滅的な攻撃だ。
戦争・改憲・治安弾圧と一体の許しがたい攻撃
マイナンバー制は、あらゆる個人情報を一元管理する総背番号制として狙われている。全労働者人民の住所、生年月日、家族と勤務先、収入・財産、健康状態、資格と経歴、図書館貸出履歴による思想傾向などすべてを丸裸にして掌握する。階級支配と徴税の徹底、治安弾圧と戦争動員、徴兵制の道具となる戦争法・改憲と一体の大攻撃だ。14年10月6日付東京新聞は、防衛省が自衛官募集のために、住民基本台帳に記載されている適齢者の氏名、生年月日、性別、住所の提供を求めたのに対し、全国の自治体の約71%が応じていたと報じた。残りの約29%は住民基本台帳全部の閲覧を認め、これを防衛省職員が適齢者を選んで書き写した。提供も閲覧もされていない自治体はわずか12だ。マイナンバー制でそうした必要な全情報が容易に手に入るのだ。
その本質ゆえに総背番号制は、政府が導入をもくろむたびに激しい反対運動が起こり、何度も葬られてきた。ところが大恐慌と戦争下、自民・公明・民主党の合意によってマイナンバー法が13年5月に可決・成立した。
マイナンバー制は、今年10月から自治体が全住民に12桁の個人番号を通知し、16年1月から税、社会保障、災害対策の3分野で利用を始める。国や自治体に分散する個人情報を共通の番号で結びつけて同一人物のものと確認できるようにし、効率化するという。住民は年金や雇用保険、医療保険、生活保護や児童手当、税などの手続きでマイナンバーの記載を求められる。17年1月からはオンラインで結び、年金保険料の納付状況や年金の給付記録を確認できるようになるとされる。
安倍政権は法の改定で18年度から病院カルテなどの医療情報や戸籍やパスポートなどに広げ、さらに21年以降、銀行口座の登録を義務付け課税する方向まで打ち出している。まさに戦争法・改憲と一体の総背番号制だ。
民間開放と外注化推進利権に群がるIT業界
住民税や保険料などの納入に続いて、住民票の写しなど証明書をコンビニエンスストアで交付する動きが広がっている。自治体が負担するシステム変更費は平均約2870万円と重く、追随する自治体は増えてこなかった。マイナンバー制への対応で自治体はシステム改修を強要され、これに合わせてコンビニ交付が拡大。16年度中に300自治体を超え、18年度には800自治体、全人口の8割、1億人余が対象となる見通しだ。マイナンバー制導入に向けて担当の職員は極限的な過重労働に追い込まれている。さらに制度は戸籍、税、医療・介護などほとんどの業務に拡大する。現業職の一掃・民営化とともに窓口職員も大幅に削減されて公務員全員解雇・総非正規職化、労組破壊が一気に進むこととなる。
経済破滅に突進する安倍政権は、6月末にまとめる「成長戦略」の数少ない目玉に、「税と社会保障の共通番号(マイナンバー)を含むIT活用の加速」「医療分野への番号制度の導入」を掲げた。「骨太方針」骨子案も「公的サービスの産業化」を柱に、社会保障解体と「社会全体ICT(情報通信技術)化パッケージ」、「行政手続きの電子申請化」を掲げて、民間開放・外注化推進を前面に押し出した。
実質成長率のマイナス化とバブル崩壊が切迫する中で、3兆円との試算もあるマイナンバー利権にすがり群がる動きがIT業界を中心に広がっている。しかしそれは、戦争への突進、JR全面外注化とともに、社会全体の崩壊、地方切り捨てと破滅への道だ。
自治労本部が推進の旗振り
「税と社会保障の一体改革」を主張しマイナンバー制の旗を振ってきたのは、自治労本部だ。帝国主義労働運動への転落そのものである。しかし彼らに未来はない。「絶対反対では闘えない」「市長との労使協調」を唱えて現場の怒りを圧殺し民営化の先導役を果たす利権まみれの体制内労組幹部との激突が動労総連合建設とひとつの闘いとして全国の単組で繰り広げられている。階級的労組建設を進め、戦争・改憲絶対反対の1000万署名と一体でマイナンバー制絶対反対に立とう。
(大迫達志)