杉並の児童館をなくすな! 科学館が廃止の最初の標的に
杉並の児童館をなくすな!
科学館が廃止の最初の標的に
教員、保護者と生徒の運動で生まれた施設
杉並区北部の閑静な住宅街(清水3丁目)に、杉並区立科学館はある。1966年に科学教育センターとして開設され、03年に生涯学習機能を加えて科学館に改称された。以来200万人に利用され、150万人が小中学生である。区内すべての小中学生は、年1回バスで科学館を訪れて3時間の科学実験授業を受け、土曜日にはより専門的な実験教室が開催されてきた。杉並の区立小中学校に通った子どもたちは、大規模な流水実験に目を見張ったり、プラネタリウムで星空に吸い込まれるような経験をみんながしているはずだ。
この科学館が、区立施設再編整備計画の第一の標的(対象)にされており、今年度末での廃館が狙われている。指導員はすでに区立済美教育センターに異動させられ、現在の科学館には管理員として1人の職員が在籍するだけで、科学実験授業やプラネタリウム上映は行われなくなった。区は廃館の理由として、施設・設備の老朽化やバリアフリーの欠如を挙げている。しかし元指導員の方は、「設備の更新には苦労したが、しっかりした実験内容を保証するものはそろえていたし、障害者・高齢者の入退館には複数の指導員を配置して介助を行っていた」と訴えている。科学館廃館は、杉並まるごと民営化の巨大な突破口をなす攻撃だ。
科学館の発祥は、理科の教員たちが興味のある生徒を集めて科学実験を行っていた土曜特別学級「科学センター活動」にある。教員・保護者と児童・生徒が一緒になって、科学センター活動の専用施設を求めて運動を起こし、その成果として66年に杉並区立科学教育センターの開館となった。アジア随一と言われた径15㍍のプラネタリウム、さまざまな理科実験が可能な三つの実験室、木工・金工ができる工作室、蝶(ちょう)や昆虫の飼育設備、当時としては大型の15㌢望遠鏡を備えた天体観測室。都内に存在する唯一の区立の科学教育専用施設だ。
科学館には、2人の常勤職員(区の正規労働者)と気鋭の大学院生や理科教育のエキスパートとされた退職教員が1年契約の嘱託員・パートとして雇用されていた。非正規労働者として満足な労働条件に恵まれていたわけではないが、「科学教育に携わることのできる誇りに満ちていた」とは、元指導員の方たちの共通した想いである。若き研究者としてこの科学館で働きながら研究を積み、国立天文台や海外の研究施設に進んだ人材も多数輩出している。
資本の利益のため首切りと民営化を狙う
科学館廃止に込められた田中区政―区議会の狙いはどこにあるのか?
科学教育の場の存続か否かが問われているのではない。区当局は、区立施設再編整備計画を強行実施するための突破口として、科学館廃止を位置づけている。区内に1カ所しかない専用施設であることに狙いをつけ、労働者住民の反対の声は小さいだろうと見くびって、廃止攻撃をしかけてきたのだ。41カ所の児童館全廃や複合施設である「あんさんぶる荻窪」廃止には、すでに強力な反対の声と行動が生み出されている。科学館廃止を一気に実施することで、絶望感・無力感を強制しようというのだ。
労働者の首切りと、子どもたちの夢を踏みにじって大資本へ利益を提供する、新自由主義による民営化の許しがたい本質は明らかである。
科学館廃止をめぐる区議会答弁を見てみよう。
①「跡地活用は、今後の行政需要等も踏まえて、有効な活用策を検討している」(施設整備・再編担当部長)
跡地には特別養護老人ホームが建設されるというのが地域住民・議員たちの認識だが、担当部長は言明していない。労働条件の劣悪さによって介護労働者が確保できないことから、空きがあっても利用者を受け入れられない施設が全国で続出している。特別養護老人ホームを受託する事業者がない事態も考えられる。その結果、高額な入居一時金と月額費用が必要な介護付き有料老人ホーム建設のために、土地を民間会社に売却することさえ当局は射程に入れているのだろう。
②「ICT(情報通信技術)やデジタル技術の発展等を踏まえ、従来の来館型から身近な地域や学校に出向いて授業を行う出前型・ネットワーク型へ発展させる。豊富な経験と技術を有する事業者に委託」(生涯学習スポーツ担当部長)
出前型実験授業の貧弱さを補うとして、児童・生徒全員にタブレットパソコンを配布し画面上で〝大規模〟実験を見せる授業を想定しているようだ。そのハードとソフトウェアの購入で、どれだけ膨大な金が業者に流れることになるだろうか。
田中区長は70年以来となる区立施設大再編について、施設の改築・改修費と社会保障関係の経費の増大を口実に、住民生活に深くかかわる施設の縮減と民営化を緊急の課題として打ち出している。「経費削減」を掲げて資本に利権を投げ与える安倍と一体の新自由主義そのものである。
解雇を許さず職場と誇り守る組合を!
4月1日時点で科学館に在籍していた15人の嘱託・パート労働者のうち、7人は区立済美教育センターに異動することを拒否して職場を去った。実質的な解雇だ! 出前型科学実験のための人員を満たせなくなった区当局は、新たに3人の嘱託員を雇用せざるをえなくなった(現時点でも追加募集をしている)。指導員の怒り、授業自体の矛盾の噴出は不可避である。新自由主義の民営化・全員解雇攻撃との闘いに総決起しよう。
国鉄闘争破壊のための「4・9政治和解」を機に屈服を深めた体制内労組幹部や民営化推進の日本共産党を職場から打ち破り、闘う労働組合を建設しよう。職場を守るのも、労働者の誇りを守るのも、労働組合の闘いがあってこそだ。動労総連合建設を進め、戦争法・改憲と児童館全廃・杉並まるごと民営化に絶対反対の闘いを繰り広げて、杉並に階級的労働運動の拠点を建設しよう!
済美教育センターに強制配転された労働者のみなさん! 元指導員のみなさん! 東京西部ユニオンに加入しともに闘おう! 6・25集会に集まろう!
(東京西部ユニオン副委員長・北島邦彦)
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41カ所の児童館をなくすな!
杉並区立施設再編整備計画=丸ごと民営化の白紙撤回を!
6・25杉並集会
6月25日(木)午後6時30分~
杉並産業商工会館(JR阿佐ケ谷駅下車)
主催・東京西部ユニオン