安保関連法の成立阻止へ 無制限の武力行使を合法化 5―8月安保国会決戦に総力を
週刊『前進』08頁(2682号04面01)(2015/05/25)
安保関連法の成立阻止へ
無制限の武力行使を合法化 5―8月安保国会決戦に総力を
安倍政権は5月14日、安保関連法制(平和安全法制整備法案と国際平和支援法案)を閣議決定し、15日に国会に提出した。安倍は14日夜に緊急記者会見を行い、「戦争法案というのはレッテル張りだ」などと強弁した。このデマとペテンを許さず、今国会成立を絶対に阻止しよう。
「平和」の名をかたる戦争法
安倍政権が閣議決定し国会に提出した安保関連法案は計11法案で構成され、そのうち10本の現行法改悪案を一つにまとめた一括法案と、新たに制定を狙う海外派兵恒久法との2本立てで審議されることになる(表参照)。安倍は、前者の一括法案に「平和安全法制整備法案」、後者に「国際平和支援法案」というきわめてペテン的な名称をつけた。その上で、これが「戦争法案」と呼ばれることに激しく反発している。4月1日の参院予算委で社民党・福島瑞穂議員が「戦争法案」と指摘したことに対して、自民党が「議事録から削除しろ」と異例の要求を行ったが、結局は取り下げた。
そして14日の記者会見では、冒頭で「日本人は70年前、二度と戦争の惨禍をくり返してはならないと誓いを立てた。この不戦の誓いを守り続け、国民の命と平和な暮らしを守り抜く決意のもと、平和安全法制を閣議決定した」と述べ、「戦争法案などという無責任なレッテル張りは誤りだ」と重ねて強弁した。
だが、本紙春季特別号10面論文などで明らかにしたように、この安保関連法制の実態は憲法9条を完全に抹殺し、集団的自衛権を含む自衛隊のあらゆる武力行使=戦争を可能とするものであり、まったくもって戦争法と呼ぶ以外にない代物だ。「平和安全法」「平和支援法」などという名称は、その実態を180度転倒させた悪質で卑劣なデマゴギーである。かつて日本帝国主義がアジア太平洋戦争を「東洋平和の実現」「東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設」などのスローガンを掲げて行ったことを彷彿(ほうふつ)とさせる。
安倍がこうした厚顔無恥なペテンを弄(ろう)する背景には、戦後70年間、戦争に反対し闘い続けてきた日本の労働者階級の怒りが、安倍打倒の大ゼネストとなって爆発することへの恐怖がある。今こそこの怒りを全面的に解き放つ時だ。
「国民守る」口実に戦争突入
さらに、安倍は記者会見で「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にありえない」と主張し、その後に続けて「日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだ」とあえて強調した。これこそ安倍が記者会見で一番言いたかったことである。米軍の戦争に巻き込まれるのではなく、「国民を守る」という口実で、あくまで日帝独自の判断で武力行使に踏み切ると明言したのだ。
これに対し、日本共産党のような「米軍に巻き込まれるのは反対だが、自衛のための武力行使は仕方がない」「個別的自衛権で対応すればいい」といった主張では、安倍が「国民の命と平和を守るためだ」と言って戦争に突き進むことにまったく立ち向かえない。労働者階級は、帝国主義政府が「自衛の措置」や「国民を守る」といった口実で戦争をやろうとすることそのものを、絶対に許してはならないのだ。
また、安倍は「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争に参加するようなことはけっしてない」と述べた。これ自体がまったくのデタラメだが、実はここに重大なペテンが隠されている。安倍は「イラク戦争」「湾岸戦争」の二つを例に挙げながら、あえて米帝のアフガニスタン侵略戦争には触れなかった。
2001年のアフガニスタン侵略戦争の際、日帝はテロ対策特措法を成立させ、海上自衛隊による米軍艦船への給油活動をインド洋上で行った。これは「人道復興支援」「平和維持活動」といった名目ではなく、「対テロ戦争」の一環として米軍が行う攻撃作戦を後方支援するものであると、当時の政府も公然と認めていた。
すなわち議論の余地のない「戦争支援」である。今回の海外派兵恒久法案が想定している活動はこれと同様の後方支援を、それも給油活動だけでなく武器・弾薬の直接提供を「非戦闘地域」に限らずに行うというものだ。しかも後方支援活動中に攻撃を受ければ、その場で交戦が不可避となるのだ。
「平和支援法」と名乗ろうが、やることは戦争支援であり、戦争への参加以外の何ものでもない。そのことを押し隠すため、安倍はアフガニスタン侵略戦争をあえて例示から除外したのだ。
自衛隊員を戦死させるな!
さらに、「今回の安保法制によって自衛隊員が死亡するリスクが高まるのではないか」という記者の質問に、安倍は「自衛隊発足以来、(災害救助など)さまざまな任務で1800名が殉職している」「災害においても危険な任務が伴うんだということは、もっと理解をしていただきたい」などと答えた。災害救助などの任務中に命を落とすことと、戦争で他国の人びとと殺し殺される関係になることを意図的に混同し、議論をすりかえた上で、安倍は〝自衛隊はすでに1800人も死んでいる。この上戦争で死んだからといって、今さら驚くことではない〟と言っているのだ。この発言に続けて「自衛隊員は自ら志願し、危険を顧みず職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナルだ」と強調したことからも、安倍が自衛隊員に「戦死」を要求していることは明らかだ。何より安保関連法制が恐るべき戦争法であることは、その最大の柱をなす武力攻撃事態法改悪案を見れば明白である。
現行の武力攻撃事態法に新たに「存立危機事態」という新概念を導入し、国家安全保障会議(NSC)の5人の閣僚が「国の存立が脅かされる明白な危険がある」と断定しただけで、自衛隊による無制限の武力行使が可能となる。しかも政府が存立危機事態の「終結」を宣言するまで、自衛隊は際限なく「敵」を追撃することになり、他国の領土の制圧や軍事占領まで任務となるのだ。ここにはもはや何の「歯止め」もない。
これが「不戦の誓い」「国民の命を守る」と言って安倍がやろうとしている戦争の正体だ。5〜8月安保国会決戦の巨大な爆発で、安保関連法=戦争法の成立を絶対に阻止しよう。
(水樹豊)