映画 「パレードへようこそ」 サッチャーの労組破壊と闘う英炭鉱労働者の団結への賛歌
週刊『前進』06頁(2679号06面03)(2015/04/27)
映画 「パレードへようこそ」
サッチャーの労組破壊と闘う英炭鉱労働者の団結への賛歌
(写真 「パレード」のワンシーン)
上映が始まるとすぐに次のような労働組合賛歌が高らかに歌われます。
「組合の精神が労働者の血となれば/世界で最強のパワーとなる/一人では小さな力しかなくとも/組合がわれらを強くする/団結よ永遠なれ!」
おおっ、と期待が高まります。セリフの中に「ソリダリティー」(団結、連帯)という言葉が、これほど数多く出てくる劇映画はめったにありません。イギリス映画「パレードへようこそ」です。
実話を基に制作
1984年から1年にわたって闘われたイギリスの炭鉱労働者のストライキを描いています。ただ、やや意表を突かれますが、そのストライキに連帯した同性愛者の団体との共闘がストーリーの柱をなしています。実話を基にしているということです。80年代の世界における新自由主義攻撃の三つの頂点は、中曽根による国鉄分割・民営化、レーガンによる航空管制官の首切り、そしてサッチャーによる炭鉱労働者への閉山・解雇の攻撃でした。
サッチャー政権は、労働運動をつぶすために、国営企業の民営化、組合活動への規制と弾圧を暴力的に進めます。最大の目標となったのが、当時最も戦闘的であったNUM(炭鉱労働者組合)です。84年3月に、政権は「採算のとれない」20の炭鉱を閉鎖し、約2万人を解雇する合理化案を公表します。
これに対して、NUMは1年にわたるストライキで対決します。炭鉱労働者とその家族は、警官隊の容赦ない襲撃と、食糧にもこと欠く窮乏に耐えて、屈することなく闘い続けます。
同性愛者が支援
映画では、警官隊に殴られる組合員たちのテレビ映像を見たゲイの青年が、「炭鉱労働者は俺たちと同じじゃないか。警官に殴られ、タブロイド紙にいじめられ、政府に虐待されている」と気付きます。そこから直ちに「LGSM」(炭鉱労働者を支援するレズビアンとゲイの会)を組織し始める青年の、熱意に満ちた一直線の行動は見事という外ありません。LGSMは、労働者の闘いを支援する街頭カンパ活動を開始します。しかし、そのカンパを受け入れる側の労働組合には戸惑いが消えません。当時、同性愛者は、ほとんど犯罪者扱いされ、サッチャーも厳しい弾圧の対象としていました。そのような同性愛の青年たちと、ウェールズの炭鉱労働者たちが、どのように団結を育てていくのか。映画は、その痛快な、時に苦みに満ちた経緯を、笑いを交え生き生きと描き出しています。炭鉱労働者家族の老若の女性たちの筋の通し方と朗らかさは、とりわけ魅力的です。
後半4分の1ほどの展開では「もう少し組合自体の闘いを追ってほしい」ともどかしくなりますが、最後の「パレード」への労働者たちの登場に胸が熱くなります。
団結こそ力だ!
新自由主義攻撃の核心は、団結の破壊です。労働者、人間同士の結びつきをバラバラにほどいて、国家と資本に対する抵抗力を解体することです。映画の登場人物たちは、まさに「ソリダリティー」によって、その攻撃を打ち破ろうとするのです。とはいえ、もちろん実際の階級闘争はスクリーンの外にあります。
映画を見終えて、同じ80年代中期のすさまじい新自由主義攻撃=国鉄分割・民営化攻撃を、30年にわたって粉砕し続け、新たに闘いを広げている、動労千葉を先頭とする国鉄労働者の不屈の闘いのすごさが、あらためて胸に刻まれました。
(迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧裁判被告・十亀弘史)
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▼原題は「Pride(誇り)」。2014年にイギリスで制作された。監督はマシュー・ワーカス。121分。