大事故続発のJR体制打倒へ 山手線で支柱が線路に倒壊 あわや〝電車直撃〟の大惨事に

週刊『前進』06頁(2678号02面01)(2015/04/20)


大事故続発のJR体制打倒へ
 山手線で支柱が線路に倒壊
 あわや〝電車直撃〟の大惨事に



(写真 倒壊した支柱の撤去作業)

(写真 神田駅方向に大きく傾いた支柱)


 4月12日、山手線の秋葉原―神田駅間で架線を支える支柱が倒壊した。倒壊する時間が少し違っていたら、あわや第2の尼崎事故になりかねなかった大事故だ。3・14ダイヤ改定後、3月30日の首都圏鉄道の大混乱、4月3日の青函トンネル内での特急列車の発火事故、そして今回の山手線事故と、JRは1週間に1件の頻度で大事故を起こしている。国鉄分割・民営化と外注化がもたらした安全の破壊は、ついに行き着くところまで行き着いた。首都・東京に動労総連合の旗を立て、韓国民主労総のゼネストと連帯し、全島ゼネスト情勢といえる沖縄の怒りと結び、JR体制打倒の火の手を上げよう。

傾斜に気づきながら放置

 4月12日午前6時10分、京浜東北線・磯子発大宮行き電車の運転士が、並行する山手線の神田―秋葉原駅間で、架線を支える支柱が倒れているのを発見し、防護無線を発報した。これにより周囲1㌔内を走行中の全列車が緊急停止した。
 支柱は山手線内回りの線路をふさぐような形で倒れていた。京浜東北線の運転士が支柱の倒壊を発見する直前の6時8分には、現場を山手線内回りの電車が通過していた。また、緊急停止していなければ、次の京浜東北線北行きの電車が6時13分ころに事故現場を通過する予定だった。
 もし、電車の通過中に支柱が倒れていれば、それは電車を直撃し、大惨事になっていた。また、京浜東北線電車の運転士が倒壊を見つけて緊急停止の手配をしなければ、線路をふさいだ支柱に山手線の電車は激突していたはずだ。休日朝6時台の山手線内回りは約10分に1本の割合で運行されている。尼崎事故に匹敵するような事態に至らなかったのは、偶然が重なった結果に過ぎない。
 倒壊・傾斜した支柱は重さ約3㌧のコンクリートの土台の上に直径20㌢、長さ7㍍の鋼鉄製の柱を2本直立させる構造で、山手線の内回りと外回りの線路の間に設置されていた。秋葉原方向の1本は土台ごと完全に倒壊し、それと支線で結ばれていた神田方向の1本は大きく傾いた。
 現場付近では今年1月から、支柱を新しいものに順次、取り替える工事が行われており、倒壊・傾斜した支柱もいずれは撤去される予定だった。3月15日夜には傾斜した支柱に対して線路をはさんで向き合う形で立っていた支柱と、その支柱との間の梁(はり)が撤去され、25日夜には倒壊した支柱についても同様の工事が行われた。これにより支柱は不安定な状態になったが、2本の支柱を結ぶ支線には、たるみを防ぐため5㌧の張力がかけられていた。(図参照)
 4月10日の夜間作業で、工事を発注したJR東日本東京電気システム工事区の社員と、工事を請け負った日本電設の社員が、支柱の傾斜を見つけていた。だが、JRは「大地震を除けば過去に支柱が倒れた事例はない。当面大丈夫。改修工事は13日に行えばいい」と決定し、危険な箇所を放置した
 11日午後8時30分には、支柱の傾きを見つけた山手線の運転士の報告が、運輸区助役を介して東京総合司令室に伝えられた。だが、その情報が電力指令に伝わったのは、翌12日午前2時9分になってからだ。
 12日朝の山手線内回りの始発電車に東京電車線技術センターの助役と日本電設の社員が乗って現場を目視し、午前4時52分ころに支柱の傾きを確認した。
 だが、この段階でもJRはなお運行可能と判断した。そして6時過ぎに支柱は倒壊した。

運休715本ダイヤ大混乱

 山手線は全線で、京浜東北線は東十条―蒲田間で運行を停止した。東海道線や宇都宮線、高崎線、上野東京ラインも一時運転を見合わせた。全線での運行再開後もダイヤは終日乱れ、12日は計715本が運休し、41万人に影響が出た。
 ダイヤは連日、混乱し、乗客の怒りは爆発寸前だ。駅などの労働者も、JR資本への怒りを募らせている。
 この事故が大惨事寸前の事態だったことはJR東日本の幹部も認めている。常務の福田泰司は、「仮に夜間に支柱が倒れていた場合、始発電車が停車できていたかどうかは何ともいえない」「衝突して脱線する危険性もあったと思う」と述べた。そう言いながら責任逃れに躍起となっているのがJR資本だ。

外注化とダイ改が元凶だ

 国土交通省の運輸安全委員会も14日、JR東日本東京支社への立ち入り調査に入った。だが、この事故の根本的な原因は、国鉄分割・民営化とそのもとで強行された全面的な外注化にある。特に、10日に支柱の傾きを発見していながら何の対策もとらなかったことに、外注化の大破綻が示されている。JRは「当面大丈夫」と判断して工事を13日まで引き延ばした。完全にJRの責任だ。また、いつ倒れてもおかしくない支柱の傾きの確認を、乗客を乗せた始発電車で行ったことも、安全への感覚が失われているとしか言いようがない。こうしたJRの無責任な姿勢は、業務の丸投げ外注化によってつくり出されたのだ。
 JR東日本が99年2月21日に引き起こした山手貨物線事故(目黒―五反田駅間)では、信号関連工事を請け負った下請け会社の5人の労働者が、臨時回送列車にひき殺された。14年2月23日の川崎駅構内での京浜東北線回送列車と保守作業車の衝突・脱線事故は、業務が6社に分割発注され、指示命令系統がばらばらにされたことにより引き起こされた。そして、今回の山手線事故も外注化が原因だ。倒壊・傾斜した支柱が設置されていた場所は、上野東京ラインの二層高架のすぐ横だ。また、この直近では14年6月14日、電力関係の作業を請け負った外注会社の青年労働者が高架から転落死する労災事故が起きている。
 3・14ダイヤ改定でJRが北陸新幹線と上野東京ラインの開業を最優先し、無理に無理を重ねたことが、この事故の背後にはある。

首都東京に動労総連合を

 だが最大の問題は、2日前に支柱の傾斜が見つかり、誰もが危険と思っていながら、それを指摘し、工事の先送りに抗議する労働者がいなかったことだ。東労組も国労も事態を押し隠す側に回ったのだ。すべては労働組合の問題だ。この事故への労働者階級の回答は、東京に動労総連合を建設し、職場から反合理化・運転保安確立の闘いを巻き起こすことにある。
 韓国民主労総はこの4月からゼネストに立つ。辺野古新基地建設を強行する安倍に対し、沖縄では全島ゼネスト情勢といえる巨大な怒りが燃え上がっている。安倍と資本への怒りは全国を覆っている。これをゼネストに転化する核心的な力は、JR体制内部からJRを撃つ国鉄労働者の決起を軸に、階級的労働運動の拠点をつくり出すことだ。杉並区議選での北島邦彦氏の圧勝をかちとろう。4・25尼崎事故弾劾闘争を突破口に、安全を崩壊させた国鉄分割・民営化への怒りをたぎらせて、JR体制打倒へ突き進もう。

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支柱倒壊までの経過

3月15日夜 傾斜した支柱のはりなどを撤去
3月25日夜 倒壊した支柱のはりなどを撤去
4月10日夜 JRと日本電設の社員が支柱の傾斜を確認。JRは「当面大丈夫」と判断し13日に工事を行うことに
4月11日午後8時30分ころ 支柱の傾斜に関する山手線運転士の報告が東京総合司令室に伝えられる
4月12日午前2時09分ころ 支柱の傾斜が電力指令に伝えられる
同午前4時52分ころ 山手線内回り始発電車でJR東京電車線技術センター助役と日本電設社員が支柱の傾斜を確認し、運転に支障なしと判断
同午前6時08分ころ 山手線内回りの電車が通過
同午前6時10分 京浜東北線の運転士が支柱の倒壊を発見。防護無線で緊急停止手配

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