コミュニティ・スクール許すな 学校に「運営協議会」設置 教組一掃と戦争動員狙う

週刊『前進』08頁(2676号03面04)(2015/04/06)


コミュニティ・スクール許すな
 学校に「運営協議会」設置 教組一掃と戦争動員狙う

教育再生実行会議が提言

 安倍首相の私的諮問機関である教育再生実行会議が3月4日、第6次提言を発表した。道徳の教科化、教育委員会制度改悪、小中一貫校の制度化などに続き、第6次提言では、全公立学校(約4万校)を、保護者や地域住民らが運営に直接参加するコミュニティ・スクール(地域運営学校)化することを打ち出した。
 コミュニティ・スクール(以下CS)は、保護者や地域住民、校長らで構成する「学校運営協議会」を設置する公立学校のことだ。協議会では、校長が作成する授業編成などの学校の運営方針を承認したり、教職員の採用について任命権者(教育委員会)に意見を述べることができる。管轄の教委がCSを指定する。2004年に地方教育行政法改定で制度化された。昨年4月時点で全国で1919校(約5%)の指定にとどまり、今提言では「地方公共団体がすべての学校においてコミュニティ・スクール化を目指す」と明記し、「小中一貫教育と連携して進める」ことも提案した。
 CS制度は、公設民営学校設置を狙う「特区制度」と並ぶ学校の民営化・労組破壊の突破口である。絶対反対だ。

地方丸ごと民営化の突破口

 「提言」では、地方崩壊に対し、「教育がエンジンとなって『地方創生』を」「国、地方公共団体、民間の総力を結集して課題を克服」「学校はまちづくりの拠点」として、「コミュニティ・スクール化を図り、地域との連携・協同体制を構築する」と述べている。
 だが、「地方創生」とは、学校統廃合を中心とした地方丸ごとの民営化であり、地方の破壊だ。
 文科省は1月に学校統廃合の基準を見直す「手引案」を発表した。公立小中学校3万校のうち約5千校超が廃校になる(財務省)。その核心が「児童施設、社会福祉施設、役場施設等と学校施設の複合化」だ。小中一貫校設置をもテコに図書館、公民館、体育館や児童館、老人デイサービスセンターなどを学校施設に統廃合することが狙われている。3月11日の経済財政諮問会議では「民間の多様な主体との連携の促進」が提言され、公共施設の民間委託化が宣言された。労働者を解雇・総非正規職化に一挙に突き落とす大攻撃だ。
 そして、コスト削減と称して公共施設や教育が資本のえじきとされる。地方は廃校で破壊され、都市部は統廃合が市街地開発の起爆剤とされる。また、空き教室を利用する放課後子ども教室(学童クラブ)や、土曜授業などにも民間企業の参入が狙われている。下村文科大臣と違法献金で癒着する塾産業が手ぐすね引いて待っているのだ。
 その最先端に児童館全廃などを狙う「杉並区立施設再編整備計画」をめぐる攻防がある。

協議会による評価で解雇も

 CS化の最大の狙いは、教職員組合の一掃と解雇だ。安倍政権は労働組合解体なき戦争突入を強いられている。労組をめぐる攻防にすべての焦点が絞り上げられた。
 「コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議」(14年9月)の審議では、組合的団結を憎悪し、CSを「教職員の意識改革」の「有効な仕掛け」としている。
 それは一つに、学校運営協議会の機能に学校関係者評価を位置づけたことだ。すでに07年に学校の自己評価が義務化され、地域・保護者などによる「学校関係者評価」が努力義務とされているが、これを徹底化する。実際には資本の意向の反映だ。京都市教委はこれを「辛口の友人」ともてはやしている。
 二つに、協議会が教員採用の権限を実質的に持ち、校長の権限強化を狙う。教職員の人事権は教委にあるが、CSでは、教委は協議会の意見を反映させることが法制化されている。協議会は非正規職員の面接・採用や、校長の学校運営方針に基づき教員を公募する「教員公募制」や教員が自ら得意分野をアピールして転任先を募集する「教員FA(フリー・エージェント)制」を使った教員の面接・採用も行える。
 現在、条件付採用の新採教員が校長の一存で大量に解雇されているが、それを全教職員に拡大していくものだ。
 三つに、「社会総掛かりの教育」で「我が国と郷土を愛し、志の高い人材を育成する」(提言)とした。「愛国心教育」で地域崩壊の矛盾を戦争へとからめとる攻撃だ。
 教職員の誇りと団結を徹底的に奪うCSを絶対に許してはならない。

労働組合軸に地域の反乱を

 しかも、CSでは過重労働の矛盾が大爆発している。会議や事務作業の増大で、教員が過労死に追い込まれ、病気休職者が続出している。
 下村は、正規職の教職員を増員することもしないで、「多忙化解消」を口実に、事務の共同実施を始め、外注化・非正規職化を推し進め、コスト削減のために「支援」の名目で授業にまでボランティアを導入している。
 安倍の新自由主義攻撃の矛盾のすべてが教育現場に集中している。「安保法制」は「愛国心教育」へ、「中学生殺人」は「道徳の教科化」へ、「18歳選挙権」は「徴兵制」と「教育公務員の政治活動の罰則化」へとなる。CS化は教育と教育労働者を商品にし、教育労働者と地域・保護者を分断し、地方崩壊への怒りと反乱を抑え込むものだ。子どもたちの夢は今や「正規職になること」にまでなった。
 だが、こんな社会は変えなければならない! 動労千葉や動労水戸のように、労働組合が全労働者階級の未来をかけて、戦争と民営化・非正規職化に絶対反対で立ち上がるならば、地域の怒りの結集軸となることができる。教組拠点建設で階級的団結を拡大し、新自由主義・安倍を倒そう!
(道端渉)
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