JR体制 破産と崩壊⑯ 春闘回答遅らせたJR東日本 東労組カクマルの使い捨てへ 賃金問題でも揺さぶりかける 外注化粉砕しJR総連解体を

週刊『前進』08頁(2676号02面03)(2015/04/06)


JR体制 破産と崩壊⑯
 春闘回答遅らせたJR東日本
 東労組カクマルの使い捨てへ 賃金問題でも揺さぶりかける
 外注化粉砕しJR総連解体を


 JR東日本は4月1日にようやく春闘回答を提示した。大手企業の大部分は3月18日に春闘回答を示している。JR他社も、遅くとも3月20日までには回答を出した。新年度が始まる4月1日から、改定された賃金が適用される。その4月1日まで春闘回答をずれ込ませたJR東日本の対応はきわめて異例だ。
 今やJR東日本は、JR総連・東労組を含むあらゆる労働組合を解体しようと狙っている。3月14日のダイヤ改定を突破口に、JR資本は第2の分割・民営化と言うべき労組絶滅の攻撃に踏み込んできた。それは、春闘(賃金闘争)においても露骨に貫かれた。

賃金抜本改悪認め大裏切り

 春闘回答が4月まで遅れた背後には、東労組カクマルすら使い捨てようとするJR東日本の労働組合破壊攻撃があった。
 東労組は3月19日、「格差賃金を許さず、年功賃金を維持した公平な賃金引き上げを求め全職場から全組合員でたたかおう」と題する中央執行委員会声明を出した。そこには、「回答指定日を迎える中で未(いま)だ妥結に至らない異常事態となっています」「昨年のように定期昇給である『所定昇給額』をベースアップの算出基礎にすることは、本来のベースアップの趣旨を破壊することになると同時に、社員間の格差がさらに拡大することになり認めるわけにはいきません」と書かれている。以降、東労組は「格差賃金を許さない」だの「能力給の導入に反対」だのと、けたたましく騒ぎ立てた。
 だが、東労組カクマルに今さらこんなことを言う資格はない。資本の「人事・賃金制度の見直し」提案を認め、12年1月に妥結して、格差賃金と能力給に道を開いたのは、彼ら自身だ。
 この裏切りにより12年4月から新人事・賃金制度が実施に移された。それまで等級・号俸という形で定められていた基本給表は廃止され、労働者一人ひとりの賃金額は資本が個別に発令することになった。昇給に際し「勤務成績が特に優秀な社員」には「特別加給」を行う制度も導入された。また、係職1級から主幹職Aまでの9区分の職階が定められた。職階が上がれば上がるほど役割手当も多く、毎年4月の昇給幅も大きい。
 この賃金体系の抜本改悪で、労働者の賃金は個別に決められることになり、ベースアップという概念は根本から破壊された。労働者が団結し、賃上げを要求して資本と闘う賃金闘争と、労組そのものを解体して、全面外注化に突き進むことが資本の狙いだった。

昨年の即妥結が攻撃を促進

 昨春闘でJR東日本は「社員の基本給に対し所定昇給額の4分の1を加える」という回答を出し、東労組は直ちに妥結した。所定昇給額とは、職階などに応じて定められた定期昇給額のことだ。一人ひとりの定期昇給額の25%分だけ基本給を引き上げるというのが、昨年の回答だった。新人事・賃金制度のもとでは、職階が高いほど基本給も定期昇給額も高い。だから賃金格差はますます拡大する。資本は、これにより業務の全面外注化を狙った。そして東労組は、昨年はこの回答を文句ひとつ言わずに受け入れた。
 だが、今年になって東労組は「格差賃金を許さない」などと騒ぎ出した。ならば、昨春闘での〝即妥結〟は何だったのか。それこそが、賃金を使った資本の分断攻撃を激化させた根本原因だ。
 今春闘でJR東日本が出した回答は、「所定昇給額の6分の1の額+定額1100円」というものだ。定額部分があるとはいえ、職階で賃上げ幅に差をつけるという資本の意図は貫かれている。東労組は4月1日、回答と同時にこれを受け入れ妥結した。

全面外注化の先兵へと純化

 今春闘で東労組は、「全組合員一律に基本給増額」という要求をことさらに掲げてみせた。
 今年の「官製春闘」で、自動車や電機での「ベア」が報じられているが、賃上げはごく一部の大企業に限られている。しかも、その賃上げすら、全労働者の賃金を一律に引き上げるという、本来の意味でのベースアップとはかけ離れたものだ。その実情を知り抜いた東労組幹部にとって、「全組合員一律に基本給増額」という要求を資本が認めないことは、初めからわかりきっていた。もちろん彼らには、要求を貫徹するためにとことん闘う気などまったくなかった。それは、いつでも売り渡せる取引材料にすぎなかった。他方で彼らは、この要求を建前として掲げることで、青年労働者のJRへの怒りを抑え込もうとした。
 しかしJR東日本は、そんな東労組幹部の思惑など無視してかかった。JRの基本的態度は、賃金は労組との交渉によってではなく、資本が専制的・一方的に決めるものだということにあった。それは「官製春闘」の極限的な姿だ。こうした資本の強硬姿勢に震え上がった東労組幹部は、組合員から隠された水面下での交渉で、〝自分たちを切り捨てないでくれ〟と資本に泣きついた。その屈服の度合いをめぐるやり取りで、回答提示が半月も遅れたのだ。
 東労組幹部には、資本の手先へと一層純化する以外に延命の道はない。彼らが今後、全面外注化の最先兵として登場してくることは明らかだ。だがそれは、東労組への青年労働者の反乱を必ず引き起こすものになる。
 昨年来、「京浜東北・根岸線および横浜線の乗務員基地再編成」問題で資本と対立していた東労組は、今年3月とされていた下十条運転区の廃止を1年延期させたとして、昨年11月、基地再編に合意を与えた。1年延期といっても、今年の3・14ダイ改で下十条運転区の運転士の7割はすでに転出させられている。これに続き、賃金問題でも資本は東労組を徹底的に揺さぶったのだ。
 資本とカクマルの結託体制の崩壊は、さらに決定的な局面に入った。今こそJR総連を解体しよう。動労神奈川の結成に続き、全国で動労総連合を建設しよう。
(長沢典久)
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