北海道・九州に今こそ動労総連合を 北海道 外注化加速・安全崩壊・在来線廃止 来春新幹線開業で一層破綻へ
週刊『前進』08頁(2674号03面01)(2015/03/23)
北海道・九州に今こそ動労総連合を
北海道
外注化加速・安全崩壊・在来線廃止
来春新幹線開業で一層破綻へ
北海道新幹線の新函館北斗―新青森間が来年3月に開通する。また、2035年の予定だった新函館北斗―札幌間の開業が、突然、5年前倒しされた。これはアベノミクスの破綻を取り繕うためだ。それにより地域住民もJR労働者も犠牲にされる。JR北海道の安全崩壊と、すでに極限化している業務の外注化をさらに促進し、ローカル線の徹底した切り捨てに道を開くものだ。
島田新体制で空前の運休
昨年4月、JR北海道の旧経営陣を一掃して島田修社長体制が発足してから1年がたつ。この1年、重大事故こそ起きていないが、車両や設備の不具合は増えた。この冬の運休は、1〜2月だけで実に3千本近くに達し、空前の規模になった。重大事故が起きていないのはまったくの偶然に過ぎない。今やJR北海道は、安全崩壊を克服できないまま、運行体制そのものが崩壊するところまで来た。昨年11月、宗谷線で強風のため本来は運行を停止すべきなのに、特急列車を走らせるミスがあった。これは脱線・転覆事故につながってもおかしくなかった事態だ。
昨年12月には、ATS(自動列車停止装置)が作動しても非常ブレーキがかからない状態で、特急列車が最大1カ月間走行していたことが発覚した。これは外注化が原因だが、JRは「ATSが作動すれば警報音で運転士が気付くはず」というコメントを出した。恐るべきことだ。ATSが何のためにあるかさえ分かっていない。運転士がブレーキ操作をできない状態にあっても、列車を止められるのがATSではないのか。
北海道新幹線の開業はJR北海道に何をもたらすのか。
この間の開業準備の過程で、保線部門を始め全部門で人材や資材が新幹線関係に取られ、在来線の体制維持が弱体化した。それが車両や設備の老朽化と相まって、レール異常の放置や不具合の頻発などを引き起こしてきた。新幹線の開業準備を最優先し、在来線は保守や除雪の手が回りそうもなければ運休にする、徐行運転にするというのが、新経営陣の発想だ。実際にそれは、この冬の大量運休で実証された。
在来線犠牲に新幹線優先
こうした事態が、新幹線開業後に収束することもありえない。新幹線の営業収益を最優先し、不採算路線や不採算部門の切り捨てが急浮上することは明らかだ。島田社長は昨年4月の着任時点で、早くもローカル線の切り捨てを示唆していた。今年3月のダイヤ改定では、客室乗務員が削減された。JR北海道の不採算路線は全体の87%を占める。高波による土砂の流出で復旧のめどが立たない日高線は、消波ブロックの設置だけで10億円を要する。国や自治体が金を出さなければ廃線・バス転換するしかない。
来年3月の北海道新幹線開業に際しては、江差線の木古内―五稜郭間が第三セクターの「道南いさりび鉄道」に移管される。昨年5月には江差線の江差―木古内間が早々に廃止されバスに転換された。「道南いさりび鉄道」は、10年間で23億円もの大赤字が見込まれ、道や沿線自治体の財政支援を受けることになっている。JRから購入する線路などの鉄道施設は老朽化している。JRが経営している現在でも事故が多発しているため、安全対策費と要員を当初予測を超えて増やさなければならなくなったのだ。しかも開業時の輸送密度(1日1㌔あたりの乗客数)632人が、10年後には487人まで落ち込むと予想されている。
加えて、昨年8月の第三セクター準備会社の発足からわずか3週間余りで、すでに廃止が決まっていた寝台特急「トワイライトエクスプレス」(JR西日本所有、札幌―大阪間)に続き、寝台特急「北斗星」と「カシオペア」(JR東日本所有、札幌―上野間)、寝台急行「はまなす」(JR北海道所有、札幌―青森間)の廃止が決まった。この3列車の線路利用料として見込まれていた年間1億円の収入がなくなってしまったのだ。
道や沿線自治体の財政に、その分を穴埋めできる余裕はない。見込まれる赤字の拡大で、バス転換が浮上してくることは避けられない。バスは移動時間が長く、運賃も高い。それは過疎化をさらに促進する。
道内では、バス路線が急速に縮小している。4年間で約1000㌔の営業区間が廃止された。鉄道はおろか路線バスもタクシーもない自治体がすでに出ている。バスに転換してもバス会社が撤退したら、いわゆる「交通弱者」の足は何もなくなる。そうした自治体は自らタクシー事業を始めて住民サービスに当たっているが、これは自治体財政をさらに圧迫する。
地元の経済と生活に大打撃
北海道新幹線の開業で北海道経済が活性化し、地域住民の生活が向上するというのは幻想だ。経済界は「鉄道で北海道に来る人の数が3倍強になる」と言う。だが、どうしても鉄道を利用したいという人は一部に過ぎず、観光客が爆発的に増えるとは考えられない。そもそも、地域住民を差し置いて観光客を中心に交通を考えること自体が本末転倒だ。函館市と青森市は隣町のような関係にある。にもかかわらず、すでに青函トンネルは普通列車が運行しなくなり、津軽海峡線は生活路線ではなくなった。新幹線開業後は特急の「スーパー白鳥」「白鳥」(函館―新青森間)も廃止される。観光客の利便性が向上しても、住民にとってはますます不便になるだけだ。
さらに貨物列車の減便も浮上している。本州行きの3本が減らされると、道産品を本州に出荷できなくなり、道内経済に単年度で1500億円の損失をもたらすという試算も出された(昨年7月の北海商科大学の阿部秀明・相浦宣徳両教授の研究結果)。昨年10月、日本政策投資銀行は北海道新幹線の道内経済への波及効果は年間136億円と打ち出したが、それは帳消しになるということだ。しかも、日本政策投資銀行が言う経済波及効果は、観光客の飲食・宿泊、土産購入と、それらを生産・提供する関連産業を中心とするものでしかない。
第2の分割・民営化粉砕を
政府・与党は1月、北海道新幹線の札幌延伸の5年前倒しと北陸新幹線の敦賀延伸の3年前倒しを決めた。昨年8月段階では、建設財源の問題が決着せず、国土交通省は2015年度予算の概算要求では整備新幹線建設費用については金額を明示しない「事項要求」にせざるを得なかった。ところがその後、政府のワーキンググループは、〝今後、人口が減少するから新幹線開業が遅れれば遅れるほど乗客は減り、運賃収入は少なくなる〟などという口実で、強引に整備新幹線の前倒し開業を決定し、破滅的な公共事業へ乗り出した。
だが政府・与党が決定してもけっしてその通りにいくわけではない。新函館北斗―札幌間の76%はトンネルが占める。その掘削工事から出る1600万立方㍍もの大量の土砂の処分先は、その8分の1しか見通しが立っていない。用地買収も進まず、延伸区間の工事の進捗(しんちょく)率は、今年度は2%にも満たない。何より、JRから経営分離される函館本線の函館―小樽間(約250㌔)の今後については、何も決まっていない。犠牲にされるのは地域住民とJR労働者だ。
動労千葉はローカル線切り捨てに対する地域の怒りをも束ねて、3・14ダイヤ改定阻止のストに立った。北海道においても第2の分割・民営化攻撃との対決は待ったなしだ。今こそ動労総連合を北海道に建設しよう。
(北海道・前島信夫)