ダイ改はJR体制崩壊の始まり 全面外注化と労組絶滅の攻撃=第2の分割・民営化粉砕しよう 東京が攻防の焦点だ 「出発指示合図」を全廃 全業務が委託の対象に
週刊『前進』08頁(2674号02面02)(2015/03/23)
ダイ改はJR体制崩壊の始まり
全面外注化と労組絶滅の攻撃=第2の分割・民営化粉砕しよう
東京が攻防の焦点だ
「出発指示合図」を全廃
全業務が委託の対象に
国鉄分割・民営化から28年、民営化は完全に破産した。だが3月14日のダイヤ改定を期して、JRは第2の分割・民営化攻撃に踏み込み、大量退職を逆手にとった業務の全面外注化・非正規職化を狙っている。
ローカル線の切り捨て公言
JR東日本会長の清野智は、社内報『JRひがし』2015年1月号の新春インタビューで、「(2014年は)人口減少や超高齢化に対して……何とかしなければならない、という国民的議論が初めてできるようになった画期的な年だった」と安倍を持ち上げた。そして、「消えてしまう自治体も出てくる、と言われると、将来を悲観的にとらえてしまいがちですが、危機感を共有し変革を行えば、未来は選択できる」「不断のイノベーション(革新)」を行うと述べている。清野の発言はさらに、「仕事の仕組みを変える、異なる分野を組み合わせるなど、新しい発想を引き出すこともイノベーション」「分割民営化を果たした国鉄改革も……イノベーション」と続く。これは、1987年の分割・民営化を上回る第2の分割・民営化の攻撃に打って出るという宣言だ。同時に、政府が自治体消滅を容認した以上、JRもローカル線の徹底的な切り捨てに踏み出すということだ。その核心にあるのは業務の全面外注化だ。
これを受けて社長の冨田哲郎は、「上野東京ライン」で「首都圏の鉄道ネットワークを大きく変える」と言っている。
JRはダイ改で全面的にローカル線を切り捨てるとともに、東京・首都圏を中心に雇用・賃金・労組破壊の大攻撃に突入してきたのだ。
ターミナル駅が全面外注化
第2の分割・民営化攻撃との攻防の焦点は東京だ。東京では大規模ターミナル駅の全面外注化が狙われている。3・14ダイ改で、駅で行われていた列車への出発指示合図が全面廃止された。出発指示合図とは、駅が列車に「発車しなさい」という指示を行うものであり、列車を安全に運行させるための重要な業務だ。
列車の運行における駅の権限は運転士や指令よりも強い。駅の出発指示がなければ列車は駅から出発できないし、安全のためには駅の判断で列車を停止させることもできる。出発指示は安全にかかわる厳格な合図であるため、JRが責任を持ち、駅長か駅長から権限を与えられた者(主に輸送主任)でないと出せないものだった。
出発指示合図の廃止は、これまでの鉄道運行業務の大転換であり、列車の安全運行の放棄だ。東京で問題になるのは上野、東京、品川、新宿などの大規模ターミナル駅。現場労働者は「これが廃止されれば文字通り際限のない駅の丸投げ外注化・非正規化が行われる」と訴えている。
これと併せて、「業務委託駅における業務の委託範囲拡大」が提案された。その内容は、人身事故などが発生し輸送障害が起こった場合、現行では最終的な安全確認は管理駅社員(JR社員)が行っているものを、業務委託駅社員が現地責任業務と最終的な安全確認を行うことに改悪するというものだ。また、列車非常停止警報装置の復帰扱い業務についても、すべての委託業務駅で、業務委託駅社員が自らの判断で復帰扱いを行い、管理駅に事後報告を行うとする改悪が狙われている。
例えば、業務委託駅となっているJR大久保駅で人身事故などが起これば、管理駅である新宿駅の助役が大久保駅に行って最終的な安全確認を行うことになっている。しかし、今回提案された「委託範囲の拡大」が行われれば、JRは安全にまったく責任をとらなくなる。そうなれば、出札・改札業務に限定されていた外注化は、駅業務のすべてにおいて「解禁」される。JRは「教育・訓練を行えば外注会社のプロパー社員でも対応は可能」としているが、冗談ではない。
本来、事故の場合であれ、線路に落ちた落とし物を拾う作業であれ、駅が指令に伝え、指令が列車抑止手配を行い、列車が駅に入らないことが確認されてから線路に下りて作業が行われる。駅も指令もJRが統一した責任をもっていて初めて安全な作業ができる。しかし、駅が本線と分断され、本来の共同作業が外注会社とJRとに分断されれば、安全の基盤そのものが崩壊する。
東京や新宿、品川などの大規模駅で全面外注化が行われれば、14年2月の川崎駅構内での脱線転覆事故以上の大事故は必ず起こる。運転士、車掌、外注会社の労働者の命を危険にさらす業務の委託範囲拡大は絶対に許してはならない。
さらに3・14ダイ改で強行された上野東京ラインの開通と駅業務の全面外注化があわされば、事態はもっと深刻になる。上野東京ラインの開通で宇都宮線、常磐線、高崎線の上下線で6本の列車が上野―東京間に集中することになった。
青年の怒りが爆発している
しかし、上野―東京間には線路は2本しかなく、東京駅には列車を止められる線路は四つしかない。しかも上野―東京間に停車駅はない。どこかで事故や車両故障が起これば、線路上に列車が数珠つなぎに停車する。駅のない線路上に列車を止めなければならない運転士の負担は計り知れない。平成採の運転士は「輸送障害が出たらやってられない」と怒りをもって訴えている。しかし、すべてJRの描いたとおりに進むと思ったら大間違いだ。青年たちの怒りは深い。都内のある駅では、出札・改札を担う契約社員の青年の多くが5年の満期を待たずに会社を辞め、出札業務が回らない事態となった。制度そのものが破綻している。一生懸命働いても正社員になれるのは2割。青年たちの相次ぐ退職の背後には、「使い捨てにされ、命まで奪われてたまるか」という怒りがある。
だからこそ問われているのは労働組合だ。3・14ダイヤ改定で最後的なJR体制の崩壊が始まった。JR本体、外注会社、青年、エルダー(定年後の再雇用社員)、すべての労働者が分断を打ち破り団結して闘えば勝てる。決意も新たに、動労総連合を全国につくり出そう。
(鷹村大介)